確定申告のほかに、住民税申告という言葉を耳にしたことがある人は少ないかもしれません。住民税とは、一般的に都道府県民税と市区町村民税を合わせた呼称であり、住民税申告と確定申告は別物です。
確定申告は不要であっても、住民税申告は必要といったケースもあります。一方、確定申告している人であれば、住民税申告は必要ありません。
今回は、そんな住民税申告と確定申告の4つの違いを解説するとともに、住民税と所得税の違いについても紹介していきます。
住民税申告と確定申告の違いとは?
住民税申告と確定申告にはどのような違いがあるのでしょうか。両者には、申告する税金、申告が必要なケース、手続きをする場所、申告しなかった場合の罰則という4点で違いがあります。
申告する税金が違う
両者における最も大きな違いは、申告する税金が違うという点です。
確定申告で申告するのは主に所得税です。消費税や相続税、贈与税などの税金が発生した年も、確定申告が必要となります。所得税の場合、1月1日から12月31日までの1年間の所得から所得税を計算し、翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納めます。
また、確定申告を行うと、その情報に基づき自治体が住民税を計算するようになっているため、あらためて住民税申告を行う必要はありません。
対する住民税申告は、住民税のみを納めるための手続きです。種類・税率・所得控除額といった住民税と所得税の違いについては、後の章で詳しく紹介していきます。
申告が必要になるケースが違う
確定申告と住民税申告では、申告が必要になるケースも異なります。確定申告は不要でも、住民税の申告をしなければならない場合があるのです。
先ほど紹介したとおり、確定申告を行うと所得に関連する情報が自治体にも共有され、それを基に自治体が住民税を計算する流れとなるため、住民税の申告は不要となります。
確定申告は不要であるものの住民税申告が必要なケースとしては、次のような例が挙げられます。
・給与所得を受けている人で、副業収入として年間20万円以下の雑所得がある場合
・退職するなどして勤務先の年末調整を受けていない場合(※確定申告を行うことで還付が受けられる可能性あり)
・配偶者控除の対象となる人で、年間96万5,000円超103万円以下の給与収入を受けている場合
・住民税のみで医療費控除などを使う人
手続きをする場所が違う
確定申告と住民税申告では、手続きを行う場所も異なります。
確定申告は主に所得税を納めるための手続きであり、所得税は国税です。そのため、確定申告は税務署で行います。近年ではe-Tax(国税電子申告・納税システム)を用いての申告も一般化していますが、いずれにしても申告先は税務署となります。
一方の住民税申告の手続きは、住んでいる自治体(市役所・区役所・町役場など)に設けられている窓口で行うのが原則です。
申告しなかった場合の罰則が違う
確定申告、住民税申告ともに、必要でありながら行わなかった場合には罰則が科されますが、その種類が異なります。
確定申告を忘れると、罰則として延滞税・無申告加算税が課せられます。延滞税とは、納付期限までに所得税を納めなかった場合に発生するもので、延滞した期間に応じて定められた額を追加で納付しなければなりません。
無申告加算税も、期限内に所得税を納めなかった人に課せられるものです。本人が期限内に申告する意思があったと認められるなど一定の要件を満たすケースを除き、納付税額50万円までの部分について15%、50万円を超える部分については20%が追徴課税されます。
これに対し、住民税申告をしなかったときは、延滞期間の長さに応じた延滞金のみが課せられます。
住民税と所得税の違いとは?
住民税申告と確定申告における最大の違いは申告する税金の種類と紹介しました。そこで、ここからは住民税と所得税の違いについて、ポイントを解説していきましょう。
税金を納める先が違う
住民税と所得税は同じ税金であっても、納める先が異なります。
冒頭で紹介したとおり、一般的に住民税は都道府県民税と市区町村民税を合わせた総称であり地方税です。よって、納める先は住んでいる都道府県と市区町村で、都道府県税事務所や市税事務所などが管轄となります。
対して、確定申告で納付する所得税は国税で、管轄するのは税務署です。
税率が違う
住民税と所得税では税率も異なります。住民税は個人の所得額にかかわらず定額で負担する「均等割」と、所得額に応じて納める「所得割」からなり、所得割は所得額に対して一律10%が課せられます。
一方、所得税は累進課税制度が採用されており、所得額に応じた税率は次のとおりです。
なお、住民税と所得税では非課税になるラインも異なります。住民税は合計所得金額45万円以下で原則非課税となるのに対し、所得税の非課税ラインは合計所得金額48万円以下です。
合計所得金額が45万円超48万円以下の人は、所得税は非課税となる一方で住民税は納めなければならないということになります。
なお、所得とは、会社員やアルバイトなど給与所得者の場合は『収入-給与所得者控除』で計算される金額、個人事業主の場合は『収入-経費の金額』を指します。給与収入162万5,000円までの人の給与所得者控除は55万円のため、収入が55万円+48万円(基礎控除)=103万円を超えると所得税の納税義務が発生します。
所得控除額が違う
住民税と所得税を比較すると、所得控除の額にも違いがあります。数ある所得控除のうち、住民税と所得税で控除額が同一であるのは、雑損控除・医療費控除・社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除です。
そのほかの所得控除については、住民税と所得税で控除額が異なっています。主な所得控除の金額は次のとおりです。
いずれの控除においても、所得税より住民税のほうが控除額は低く設定されています。
まとめ
住民税申告と、所得税などを納付する確定申告では「申告する税金の種類」「申告が必要になるケース」「申告する場所」「申告しなかった場合の罰則」の4点に違いがあります。
確定申告をしていれば住民税申告は不要ですが、確定申告が不要であっても住民税申告は必要になるケースがあるため要注意です。自身の収入状況を確認し、納めなければならない税金は確実に納付しましょう。