埼玉県川口市はJR川口駅周辺を中心に多数の再開発により変化してきた街です。その結果、駅周辺には西口に公園、東口に図書館などといった公共施設、商業施設がコンパクトにまとまり、利便性もアップ。現在も2件の再開発が進行、さらに変わろうとしています。
再開発で駅周辺に公園、商業施設に住宅が
京浜東北線が赤羽駅を過ぎ、荒川を渡る辺りから行く手にタワーマンションが見え始めます。東京都北区赤羽と荒川を挟んで向かい合う埼玉県川口市は、1998年に竣工したエルザタワー55以降、市内にたくさんのタワーマンションが立ち並ぶようになりました。現在も再開発で2棟のタワーマンションが建設中の、川口の魅力を紹介しましょう。
急激な都市化に対応するために再開発
荒川を挟んで東京に隣接する川口は、江戸時代からその立地を活かして大消費地の江戸に向けたさまざまな産業を育んできました。現在ではかなり少なくなりましたが、有名なものとしては鍋や釜などの日常生活品を生産する鋳物産業、江戸市中の緑の多くを占めたと言われる植木、苗木などの園芸業などが挙げられます。
その後、1910年に川口駅が開業、高度経済成長期には首都圏の人口、産業の受け皿となって急速に都市化が進展します。ところが、あまりに劇的な変化に街がついていけなくなります。
細街路に住宅が密集していた時代も
現在再開発が進んでいる商店街、樹モールのホームページには1958年の近隣住宅地図が掲載されています。それを見ると細い道路の両側に小さな住宅が密集し、その中に中小の工場が点在している状態がわかります。
これでは交通は渋滞しますし、駐車場も住宅も足りません。工場跡地を利用してミニ開発、マンション開発が行われたとしても、道路、区画その他がそのままでは大きな建物は建てられず、防災上も不安でしょう。なにより、この状態では商業、業務機能も含めてさらなる発展は見込めません。
国の施設移転をきっかけに再開発スタート
そこで川口市は駅周辺の大規模な開発を考えるようになるものの、ネックとなっていたのが駅西口に1920年に開設された国の公害資源研究所。広大な敷地が地域を分断しており、それが発展の阻害要因となっていたのです。
動きが出始めたのは1975年。公害資源研究所が筑波学園都市に移転することが決まったのです。その後、跡地は市と再開発事業を施行するUR都市機構に払い下げられることになり、川口市は1983年に川口駅周辺整備構想を策定します。
その構想は、駅東口は商業・業務ゾーン、駅西口は公共公益文化ゾーンとして一体的に開発を進め、駅前の通過交通を排除し、東西をペデストリアンデッキで結ぶというもの。現在の駅前はその構想に基づいて着々と整備されてきたのです。
ただし、実際の施行までにはかなり時間がかかっています。駅周辺で最初に完成したのは川口駅前東口第三工区第一種市街地再開発事業で、これは1991年に竣工しています。それが2021年3月に閉店したそごう川口店。現在は空き店舗となっており、市はもちろん、市民もその動向が気になっているところ。言ってみれば川口変貌の第一歩目だった場所ですから、これからの街のためになる使い方がされてほしいところです。
駅西口には公園、文化センター、住宅など
その次に完成したのが西口一帯で、竣工は1992年。規模の大きな開発でだいぶ時間がかかっています。
駅から見ると駅正面にはタワーマンションやその他の住宅があり、左手には川口総合文化センター・リリア、そして住宅群の手前、駅に隣接して川口西公園が広がります。
駅前にこれだけ広大な公園、文化センターがある街はそう多くはありません。公園には多数の彫刻が配されてもおり、散歩が楽しい場所です。
また、住宅群の1階はリプレ川口一番街、同二番街と名付けられた商業エリアでスーパーや商店街、郵便局など生活に必要な施設が入っています。
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2006年には東口も大変貌
その後も川口市内では再開発が続くのですが、次に広く注目を集めたのが2005〜2006年のことです。この年、川口市内では大きな開発が3ヶ所で完成したのです。
駅前に中央図書館、商業施設も
ひとつは東口の右手にそびえる、ガラス張りのビル、キュポ・ラです。この建物には4階以上に川口市立中央図書館、川口駅前行政センター、川口駅前市民ホール、川口市立映像・情報メディアセンター、川口駅前保育園などが入っており、3階までにはスーパーや飲食店、書店などが入っています。
また、同時に隣接するタワーマンション、賃貸住宅も造られており、UR都市機構が手掛けた賃貸住宅には在宅ワーク型住宅があったことが話題になりました。今でなら当たり前と思うかもしれませんが、その当時としては時代に先駆けた物件だったのです。
先駆けたという意味では、ここのところ駅前に立地し、人が集まりやすい、コミュニティーを意識した図書館が日本全国で次々に誕生していますが、川口市立中央図書館はその点でも先駆けと言えるかもしれません。
キュポ・ラという名称は、かつて川口市が鋳物の街として最盛期には700を超す工場があったほど栄え、「キューポラのある街」と呼ばれた歴史から。キューポラは溶解炉のことで、川口市の公式マスコットは全国的にはあまり知られていませんが、キューポラをモチーフにした「きゅぽらん」です。
ちなみに「キューポラのある街」は川口市を舞台にした児童文学作品のタイトルでもあり、1962(昭和37)年には映画化されています。この映画で主役を務めたのが当時17歳だった吉永小百合さん。彼女を一躍人気女優にしたとされる作品です。
また前年の2005年には駅東口の正面にあたる川口栄町3丁目C地区第一種市街地再開発事業も竣工しています。それがかわぐちCASTYと呼ばれるショップ、レストランや銀行などが入った複合商業ビルです。
前述したようにこの地域には以前は鋳物工場が多数あり、かわぐちCASTYはそうした工場などがあった土地に建てられた建物のため、所有は川口鋳物工業協同組合。建物内にはいくつか鋳物作品が置かれているそうです。
工場跡地の複合開発も話題に
さらにもうひとつ、話題になったのがこの土地で約80年にわたって創業してきたサッポロビール埼玉工場跡地の開発です。駅からは10分ちょっと歩く場所ですが、ビアフェスティバルなどで市民に親しまれてきた約12万平方メートルにも及ぶ広大な土地を利用。分譲マンション、戸建て、賃貸住宅、大型商業施設、シネマコンプレックス、公園に川口市立アートギャラリー・アトリアのある、リボンシティと呼ばれる複合開発が行われたのです。
こうした開発の結果、川口駅の周辺は大きく変わりました。公園、文化ホール、図書館、大型商業施設、シネマコンプレックスなどが駅の周辺徒歩10分圏内に集中するようになったのです。
商店街沿いに28階建て、商業施設も入る計画
そんな川口で今、2つの再開発が進行しています。ひとつは駅東口正面、前述のかわぐちキャスティの背後にある川口銀座商店街(樹モール)と呼ばれる商店街沿いで行われている川口栄町3丁目銀座地区第一種市街地再開発事業。地上28階建ての複合用途の建物が建設されています。
2023年2月には竣工予定で、すでに1~3階のテナントも発表されています。スーパーや商業施設のほか、認可保育園、医療モールなどが予定されているとのことで、建物内でさまざまなサービス、モノがそろう住まいになりそうです。
昔懐かしい雰囲気の商店街も健在
足元の川口銀座商店街は、1959(昭和34)年に協働組合川口銀座として成立した歴史のある商店街です。さまざまなイベントを開催するなど、活発に活動してきた商店街でもあります。再開発は商店街が主体となって行われており、再開発建物には樹モールの文字が掲げられています。
商店街自体はさらに続いており、その先にはふじの市商店街(ふじのいち)という商店街もあります。こちらの商店街でもスタンプラリー、七夕市などの活動が行われており、手作り感満載の街路は歩いているだけで楽しい、昔懐かしい雰囲気です。個人的にはコロッケがひとつ90円などという物価の安さを羨ましく感じました。
駅南側では2023年着工を目指して計画進行中
もうひとつの再開発はキュポ・ラから南に約400メートルほど行った場所で行われる川口本町4丁目9番地区第一種市街地再開発事業です。こちらは2020年に都市計画決定が行われ、2021年に再開発組合が結成。建築工事着工は2023年夏の予定で、完成は2026年という計画です。
現地に行ってみると周囲に比べて明らかに低層であることに加え、古い木造住宅が密集している区画もあり、防災上の懸念があることが分かります。駅に近い利便性の高い場所ですから、高度利用、不燃化が計画されるのも自然な流れです。
計画では事業地に接する道路の拡幅や新たな都市計画広場なども造られるそうで、地域全体の安全にも寄与する計画と言えそうです。
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川口市は川口駅周辺にさまざまな都市機能が集積、生活の利便性が高いうえにJR京浜東北線利用で都心へのアクセスもダイレクト。また、街自体が平坦で徒歩はもちろん、自転車でも移動しやすいのもうれしいところ。
これから建てられる物件も含め、既存物件でも駅から2分、4分、5分などと近い物件が多いのもポイント。利便性と穏やかさを同時に考えたい人には、一度訪れてみても良い街かもしれません。
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