2024年からの新しい「NISA」について、2022年末に「令和5年度税制改正の大綱」で発表されました。変更点が気になる方は多いと思いますが、「話題になっている『NISA』って、そもそも何?お得なの?」という方もいるのではないでしょうか。今回は、NISAの制度内容やメリットについて確認し、2024年からの新NISA制度についても概要を把握しておきましょう。
※新NISA制度については、令和5年度税制改正大綱に基づいて記載しています。関連法案が可決・成立してから、制度内容は確定します。
「NISA」は、利益にかかる税金が非課税になる制度
「NISA」は、金融資産への投資によって得た利益にかかる税金が非課税になる制度です。
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資し、売却益を得たり、配当を受け取ったりした場合には、利益に対して20.135%(所得税および復興特別所得税15.315%・住民税5%)の税金がかかります。
この「20.315%」がかからないのがNISA制度です。「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益(売却益や配当金等)には税金がかかりません。仮に30万円投資した場合、その売却益が10万円でも、20万円でも、いくらでも、利益は非課税になります。
たとえば、投資信託の売却で10万円の利益を得た場合、利益に対して20.315%(=20,315円)の税金がかかるので、実質的な利益は79,685円になります。しかし、NISA口座内での投資であれば、利益の10万円すべてを手にすることができるのです。
ただし、NISA口座では、売買損失はないものとされます。したがって、売買損失が発生しても、特定口座や一般口座で保有する他の株式等の配当金や売買益等との損益通算はできません。NISA口座で「お得」になるのは、利益が出て、本来なら税金がかかる場合のみです。
2023年までのNISA制度は3種類
現行のNISAは、一般NISA・つみたてNISA、未成年が利用できるジュニアNISAの3種類があります。成年なら利用できる一般NISA・つみたてNISAは、年単位の選択制で、どちらかを選んで利用することになります。
いずれも「毎年一定の非課税投資枠の範囲内で購入した金融商品から得られる利益に税金がかからない」という基本的な仕組みは共通していますが、非課税枠や非課税となる期間、対象商品などに表1のような違いがあります。
一般NISAの非課税投資枠は年間120万円。株式や投資信託、REIT等への投資も対象になります。非課税となる期間は最大5年間です。「つみたてNISA」との対比で、スポット購入用の制度だと勘違いされていることがありますが、スポット購入※1 にもつみたて購入※2 にも利用できます。
※1 スポット購入…任意の銘柄を任意のタイミング・金額で購入すること
※2 積立購入…あらかじめ決めた銘柄を一定の時期・金額で自動的に購入していくこと
つみたてNISAは、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度と位置付けられており、非課税投資枠は年間40万円と一般NISAよりも小さめです。対象商品は、長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られ、積立でのみ購入できます。非課税保有期間が20年と長いので、じっくり運用できるのも大きな特徴です。
一般NISA、つみたてNISAは、いつでも払い出し・売却ができますが、払い出し・売却をした分に対応する非課税投資枠は再利用できません。
ジュニアNISAは、未成年者向けの非課税制度で、口座開設は未成年者(2023年は0歳~満17歳)ですが、運用管理者は「口座開設者本人(未成年者)の二親等以内の親族(両親・祖父母等)」であること、18歳までは原則として払い出しができないことが大きな特徴です。対象商品や買付方法は一般NISAと同じで、スポット購入にも、積立購入にも利用できます。非課税投資枠は年間80万円で非課税保有期間は5年です。
ジュニアNISA制度は2023年末で終了します。新規口座開設は2023年まで、2024年以降は購入できないこととされています。
一般NISA・つみたてNISA、どちらを選ぶ?
一般NISA・つみたてNISAは選択制なので、どちらかを選んで利用することになります。
一般NISAは非課税投資枠が大きく、さらに対象商品の選択肢が多くスポットでも積立でも利用できるので、投資の対象やタイミングなどを自分で判断して運用したい方などの利用が考えられます。また、「投資初心者だから少しずつ」という場合でも、積立購入で少しずつ投資をはじめ、慣れてきたところでタイミングを見てスポット購入でも利用して…という利用の仕方もできるでしょう。
つみたてNISAは、投資対象が長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られ、非課税期間も20年間と長いので、「積立投資を少しずつ、長期間でじっくり資産形成を」という方に向いています。投資に慣れない方にとっては、対象金融商品がある程度絞られているので選びやすいこともメリットかもしれません。
NISAをはじめるなら、証券会社や銀行で
NISAを利用するためには、銀行や証券会社等の金融機関でNISA口座を開設する必要があります。NISA口座が開けるのは原則1人1口座。NISA口座を開設する金融機関の変更は1年単位でしか行えません(金融機関の変更をすると複数のNISA口座を持つことになるが、買付けができるのは各年につき1つのNISA口座のみ)。NISAを利用できるか、どのような金融商品を取り扱っているかは金融機関によって異なります。事前にホームページ等で確認しておきましょう。
気になる投資信託等の金融商品がある場合には、その金融商品を扱っている金融機関を探し、そこでNISAが利用できるか、そのほかにどんな金融商品を扱っているか…、と調べていくのもよいでしょう。
金融機関で口座開設を申請(申請には、申請書類のほか、本人確認書類とマイナンバー確認書類が必要)し、税務署で二重口座でないかの審査も行われます。口座開設までにかかる期間は、店頭・郵送・オンライン等の手続き方法によって異なりますが、2~3週間程度かかる場合もあります。
2024年以降の新NISA
2014年1月に一般NISAが始まって以来、ジュニアNISA(2016年)、つみたてNISA(2018年)と種類も増えたNISA制度ですが、ジュニアNISAは2023年で終了し、2024年からは、一般NISA・つみたてNISAも大幅な変更が予定されています。おもな変更内容を確認しておきましょう。
・制度の恒久化
今までのNISA制度は、期間限定の制度でした(一般NISAは2023年まで、つみたてNISAは2042年まで)。NISAは、株式や投資信託などの価格変動のある金融商品で運用するので、運用期間が制限されると、タイミングをみた投資はしづらくなります。制度が恒久化されることで、非課税期間の限度を気にせずに運用することができるようになります。
・非課税保有期間の無期限化
一般NISAは5年、つみたてNISAは20年の非課税保有期間が設定されていましたが、これが無期限になり、長期投資も可能になります。
・2つのNISAが併用可能に
一般NISAは「成長投資枠」、つみたてNISAは「つみたて投資枠」と名を変えて、同時利用が可能になります。また、非課税投資年間限度額も成長投資枠は240万円、つみたて投資枠は120万円と大きくなり、非課税投資の幅が大きく広がります。
・生涯非課税限度額の設定
新NISAでは、1人あたり1,800万円の生涯での非課税限度額が設定されます。この非課税限度額は生涯利用可能で、「簿価(=取得価額)」で非課税保有限度額(総枠)を管理します。たとえば、運用資産の一部を売却すると、売却時に「簿価」が減少するので、その分の非課税限度枠を再利用することができます。
このように、今年(2023年)までは現行のNISA制度が利用でき、2024年からは新NISA制度が稼働する予定です。制度は大きく変更されますが、「毎年一定の非課税投資枠の範囲内で購入した金融商品から得られる利益に税金がかからない」という基本的な仕組みは変わりません。
資産運用の際、利益が大きいほど非課税のメリットは大きくなります。NISA制度や投資・金融商品についての情報を集め、資産運用に非課税枠での投資を組み込んでいかれてはいかがでしょうか。