初午とは? 初午の由来と日本各地の初午祭りを紹介

新型コロナウイルスの流行による行動制限がなくなり、従来のようにさまざまな行事に参加できるようになってきました。そのため、初午祭に参加しようと考えている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、初午祭がどのようなものなのか解説したうえで、有名な初午祭を紹介します。

初午(はつうま)とは

初午(はつうま)とは、2月の最初にある午(うま)の日を表しています。そのため、年によって初午の日付は変化します。

711年2月の初午の日に稲荷大神が京都の稲荷山に鎮座したといわれており、稲荷大神を祭るために初午の行事が行われるようになりました。その風習が少しずつ広がっていき、現在では全国で「初午祭」と呼ばれるお祭りが開催されています。なお、初午の行事はもともと旧暦の2月に行うのが基本でしたが、最近では新暦の2月に行っている地域もあります。

「お稲荷さん」で親しまれるキツネは稲荷神の使い

初午の言い伝えとして、稲荷大神の使いと言われているキツネの話が有名です。2匹のオスのキツネが1匹のメスのキツネを奪い合い、負けたオスのキツネが村に火をつけたとされています。よって、初午に合わせて火の用心を呼びかけている地域もあります。

初午祭は五穀豊穣を祈るお祭り

全国で行われている初午祭は、五穀豊穣を願うためのものです。ここでは、初午祭についてくわしく説明します。

稲荷神は穀物・農業の神
稲荷神は、稲の豊作にご利益があるとされています。そのため、稲荷神は穀物や農業の神様として有名です。日本神話の宇迦之御魂神(うかのみたま)と同一視され、古くから信仰を集めてきました。

稲荷神が祀られている神社は稲荷神社です。日本全国にあり、各地の五穀豊穣を司っています。稲荷神社の数は3万社とも言われています。それらの総本宮とされているのが、京都市にある伏見稲荷大社です。伏見稲荷大社の初午祭は特に有名で、例年多くの人が訪れています。

現在では、稲荷神が農業以外の分野にもご利益のある神様として信仰されています。商工業を含む産業全体の神様として捉えられるようになり、商売繁盛や芸能上達などを願う人からも信じられるようになりました。

初午は農事の始まりを祝う
すでに触れたとおり、初午は2月の最初の午の日であり、旧暦の初午は初春にあたります。農業では、ちょうど種まきや田植えなどを始める時期です。よって、初午祭りでは、農業の開始を祝うとされています。無事に農業を始められることに感謝するとともに、豊作を祈ります。農業を営む人にとって、初午祭はとても重要な行事だと言えるでしょう。

なお、稲荷神は農業以外にもご利益があるとされているため、ほかの分野についても初午のタイミングで成功を祈ります。農業を営む人のみならず、稲荷神を信仰しているすべての人にとって初午祭は大きな意味を持つ行事です。

2023年の初午は何日?

初午の日付は毎年変わります。2023年の初午は、旧暦の2月10日(新暦の3月1日(水))、新暦では2月5日(日)です。2022年の初午よりも早いため、忘れないように気をつけてください。

なお、地域によっては初午だけでなく、二の午や三の午などもお祭りを行っているところがあります。2023年の二の午は、旧暦の2月22日(新暦の3月13日(月))、新暦では2月17日(金)です。一方、2023年の三の午は、旧暦の閏2月4日(新暦の3月25日(土))です。2023年において、新暦の三の午はありません。

ちなみに、旧暦と新暦のどちらを採用しているかは、地域や神社によってそれぞれ異なります。初午祭に参加したい場合は、必ず個別に日程を確認しましょう。

有名な初午祭

ここでは、全国各地で行われている初午祭のうち、特に有名なものを三つ紹介します。

伏見稲荷大社の「初午大祭」

伏見稲荷大社の初午大祭

初午祭が発祥した伏見稲荷大社では、毎年の初午の日に「初午大祭」を実施しています。福稲詣や福参りといった別名もあります。例年、たくさんの人でにぎわう大規模なお祭りです。

伏見稲荷大社の「初午大祭」では、参拝者が「しるしの杉」を拝受します。この行事は平安時代から伝統的に行われており、「今昔物語」や「枕草子」などにも記載されています。しるしの杉は、初午の日に伏見稲荷大社を参拝した証です。しるしの杉を受け取ると、家内安全や商売繁盛のご利益があるとされています。

また、初午大祭では「達成のかぎ」も拝受できます。達成のかぎは、稲を保管する倉庫のかぎを模したものです。達成のかぎを通して稲荷大神の功徳を受け取れるとされています。

初午祭に興味があるなら、一生に一度は伏見稲荷大社の「初午大祭」に参加してみてはいかがでしょうか。

参照元:伏見稲荷大社

秋葉山大権現の「米川の水かぶり」
宮城県登米市の五日町地区では、毎年2月の初午の日に「米川の水かぶり」という行事を行っています。すでに触れたとおり、初午には火にまつわる言い伝えがあるため、火事を防ぐ目的で水かぶりの行事が行われています。

水かぶりに参加できるのは男性のみです。裸にワラでできた装束をつけて水かぶりをします。最初に行うのは、大慈寺の秋葉山大権現と諏訪森大慈寺跡への祈願です。その後、独特の声をあげながら街中の家の屋根に水をかけていきます。また、人々は装束のワラを抜き取って火事を防ぐためのお守りにします。水かぶりを行う一団のほかにおかめとひょっとこがそれぞれの家を訪問し、ご祝儀を受け取るのも大きな特徴です。

米川の水かぶりは、2018年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。秋田県男鹿市の「男鹿のナマハゲ」や沖縄県宮古島市の「宮古島のパーントゥ」などとともに、日本の伝統的な来訪神行事として知られています。

参照元:米川の水かぶり

箭弓稲荷神社の「火伏神事」

火伏神事で有名な箭弓稲荷神社の初午祭

埼玉県東松山市の箭弓稲荷神社では、初午の日に「火伏神事」と呼ばれる行事が行われています。火事を防ぐために祈りを捧げる伝統行事です。

行事には、稲荷大神の使いとされる4名の白狐が登場するのが大きな特徴です。境内に神棚や炉が設けられ、炉にくべられた炎を鎮めることで火事が起きないことを願います。宮司、地域の消防署長、参拝者などがそれぞれ消火作業をし、最後に4名の白狐による火伏が行われます。

なお、箭弓稲荷神社の社殿は埼玉県指定文化財に登録されており、豪華な装飾が魅力的です。火除けの祈りがこめられている龍をはじめとし、精巧な彫刻がいたるところに施されています。初午祭に参加しつつ、素晴らしい社殿を見学してみるとよいでしょう。

参照元:箭弓稲荷神社

まとめ

初午祭は、古くから開催されている日本の行事です。発祥地は京都ですが、全国に広がっています。今回紹介した初午祭以外にも、各地の稲荷神社で初午祭が開催されています。最寄りの稲荷神社でいつどのような初午祭が開催されているか、ぜひ調べてみてください。今年の初午の日には、初午祭に参加してみましょう。

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