港区のほぼ中央部、麻布十番商店街から古川を挟んで向かい合う地区で三田小山町西地区第一種市街地再開発事業が始まりました。3棟の住宅棟にオフィス、公園などが整備される計画です。都心の利便性の高い立地での住宅中心の開発ということで、今後注目を集めそうです。
麻布十番の向かい、三田小山町西地区で再開発開始
三田小山町西地区はすでに市街地再開発事業が完了した三田小山町東地区、三田小山町地区に隣接する一画。古川を挟んで麻布十番と向かい合っている場所といえばイメージしやすいでしょうか。地域としてはそれほど知られているわけではありませんが、都心のど真ん中でもあり、交通、生活の利便性に恵まれた場所です。
再開発事業名は三田小山町西地区ですが、実際の住所は三田一丁目。三田といえば慶應義塾大学やイタリア大使館、綱町三井倶楽部のある三田二丁目が知られています。三田一丁目はその北側にあたり、再開発エリアはそのうちの西側にあたります。
港区のホームページ内にある芝地区の1921年(大正10年)の地図を見ると、再開発エリアの旧町名は三田小山町。慶應義塾大学などのある辺りは三田となっており、もともとは違う町だったのです。
また、今、同じ三田一丁目となっている地域でも、再開発エリアの東側は以前は赤羽町となっています。再開発エリアの最寄り駅のひとつに都営大江戸線に赤羽橋という駅がありますが、この駅名は旧町名にちなんだものです。
隣接2地域はすでに開発済み
さて、三田二丁目(かつての三田、三田綱町をまとめた区画)と再開発エリア・三田小山町の大きな違いは土地の標高。三田二丁目は周囲からは高台となっており、再開発エリアから向かうと坂を上ることになります。今回の再開発エリアは古川を挟んで対岸の麻布十番同様の低地になっているのです。
同じ旧三田小山町内の2地区はそれぞれ2010年、2011年に再開発組合が解散しており、2016年から今回のエリアも再開発が予定されていたものの、だいぶ、時間が経ちました。そのため、長らく古い昭和の街並みが残されており、一部の散歩好きの人には知られた存在でした。
取材に訪れた2022年12月時点では、大正年間に建てられ、2007年に廃業した銭湯・小山湯や、和モダンで有名な建築家・大江宏の建築による宿泊施設を備えた東京讃岐会館などがまだそのまま残されていましたが、すでに退去は始まっていました。
防災上の懸念を再開発で払拭
この一画は前述したように高低差があるうえに道幅が狭く、古い木造住宅が密集しており、防災面では不安を抱えた地域のひとつ。公園も少なく、麻布十番側に向かうには小山橋という細い橋がひとつあるだけです。
再開発が行われることで住宅が高層に集約され、小山橋の橋幅も9メートルと広くなることが予定されており、安全性が高まることでしょう。
また、香川県が所有していた東京讃岐会館は再開発に参加する予定となっており、宿泊機能の継続は検討中であるものの、香川県の情報発信スペース、オフィス・ビジネススペース、県産品を使ったレストランやさぬきうどん店ができる予定とか。近隣の雰囲気とは一味違う一画のある再開発になりそうです。
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南北街区に住宅が3棟
では、具体的にはどのような建物が造られるのでしょう。港区の三田小山町西地区第一種市街地再開発事業ホームページによると、全体で約2.5ヘクタールの敷地は既存の小山橋を中心に北街区、南街区に分けられ、北街区には地上8階のオフィス棟、地上42階、高さ約165メートルの住宅棟が建てられる予定です。
反対側の南街区では高さ約124メートル、地上31階、高さ約64メートル、地上16階の2棟の建物が予定されています。
主な用途は共同住宅、事務所、店舗、保育園に駐車場など。住宅戸数は1,400戸以上と、かなりの数が計画されています。
広場や公園も整備される予定
それ以外では古川沿いには親水広場、それ以外にも区域の北端、東端などにも広場、公園が予定されています。これまで麻布十番側にしかなかった広場、公園ができることで居住環境がより良くなることでしょう。
今後の予定ですが、2024年度には建築工事に着工し、2028年度には工事が完了することとなっています。今の風景が見られるのはあとわずかということです。
医療、教育に買い物、遊びの環境も充実
さて、現状では古い商店街が一部残されていただけの場所であるため、この地域についての詳細を語るには難しいものがありますが、三田一丁目エリアは周囲の利便性が高いのが特徴。そこでここでは以下、三田一丁目の周辺エリアの特徴について説明します。
総合病院に保健所が並んで立地
まず、現地を訪れてみて驚いたのは同じ三田一丁目の東側、赤羽橋駅寄りには東京都済生会中央病院、国際医療福祉大学三田病院、そして港区みなと保健所がまとまって立地しており、医療環境が非常に良いことです。
どちらの病院も多数の診療科を持っており、もちろん、救急にも対応。高齢者、持病のある人はもちろん、これから子どもを産もうという家庭、小さな子どものいる家庭などにも安心できるエリアと言えるでしょう。
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教育環境も充実
慶應義塾大学、同中等部、同女子高を始め、東洋英和女学院中等部・高等部や麻布中学校・麻布高等学校、芝中学校・芝高等学校など特徴ある学校が多いのも特徴のひとつ。再開発エリアからであればいずれもそれほど遠くはなく、歩いて通えるほど。教育に関心のある家庭であれば通学に便利な立地と思われるかもしれません。
レトロ&インターナショナルな麻布十番
買い物、外食であれば、古川を渡って麻布十番に行けば事欠くことはありません。現在の古川からは想像できませんが、かつての古川は舟運が盛んで麻布十番界隈には市がたち、また麻布山善福寺の門前町でもあったことから江戸時代から栄えていた場所です。関東大震災後には寄席や映画館、デパートができ、東京でも有数の繁華街として栄えていたと古老の方に伺った記憶があります。
その後、鉄道交通が盛んになると今度は隠れ家的な場所として訪れる人が増え始めます。長らく駅のなかった麻布十番に駅ができたのは2000年。都営大江戸線、東京メトロ南北線麻布十番駅です。
その後、2003年には麻布十番商店街の先にある六本木6丁目に六本木ヒルズが開業。麻布十番を取り巻く環境は2000年代に大きく変わりますが、幸いなことに麻布十番商店街には老舗と呼ばれる店舗が多く残り、独特の情緒を醸し出しています。
また、以前はよくある地元の納涼祭りだった麻布十番納涼祭りには近隣の大使館などからも人が集まるようになり、今では日本でも最大規模と言われる商店街イベントのひとつとなっています(2022年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため中止)。国際色豊かな一方でレトロな雰囲気もある麻布十番商店街を日常使いできるのは、この再開発エリアの魅力のひとつとも言えるでしょう。
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六本木、広尾も「わが家の庭」になる距離
また、麻布十番商店街の先には六本木もあります。六本木ヒルズ、六本木駅、さらにその先の六本木ミッドタウンなどに向かうためには坂を上らなければなりませんが、いずれの街も麻布十番とは異なる特徴があり、買うもの、食べるものによって選び分けられるのはここに住む人の楽しみのひとつになるのではないでしょうか。
同じく坂を上ることになりますが、有栖川宮記念公園、東京都立中央図書館もそれほど遠くはありません。このエリアには港区の麻布運動場のほか、公共施設では商店街の中に麻布十番郵便局、六本木に向かう途中に区立麻布図書館もあります。
個人的には慶應義塾大学から少し先、桜田通り沿いに都心にはめずらしいホームセンターのケーヨーデイツーがあることも挙げておきたいところ。わが家に手を入れようと思ったり、ガーデニングをしようと思ったりしても都心にはそうしたものを買う場所が少なく、意外に不便なのですが、このあたりなら大丈夫です。
地下鉄、車にコミュニティバスも利用可
最後に交通について。最寄り駅は2000年に開業した都営大江戸線、東京メトロ南北線の麻布十番駅ですが、都営大江戸線の赤羽橋駅も十分に徒歩圏。また、渋谷や新橋などへは都バスも利用できます。
港区のコミュニティバス「ちぃばす」の田町ルートも利用できるので、山手線利用ならちぃばす利用もラクかもしれません。
車利用でも、周辺には首都高の飯倉(出口、入口とも)、芝公園(外回り、内回りの出入口とも)などがあり、行先に応じて選べます。近くには桜田通り、六本木通り、第一京浜などの幹線道路も多く、タクシー利用でどこかに行くのも便利。都心ならではのメリットが享受できます。
もちろん、都心だけにそれなりの販売価格にはなるでしょうが、こうした周辺環境を満喫できる立地はなかなかないと思われます。気になる人はチェックしてみてください。
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