分譲マンションにしても賃貸アパート・マンションにしても、多くの人が共に暮らす集合住宅は「騒音トラブル」が問題になる可能性を常にはらんでいます。
この記事では、そんな集合住宅にはつきものの騒音トラブルについて、代表的なトラブル要因や対処法などを解説していきます。
騒音で悩む人は多い
多くの人が同じ建物で生活を送る集合住宅では、騒音トラブルが多く発生します。
「Alba Link 不動産総研」が集合住宅に住んでいる人500名を対象に実施したアンケートでは、実に78.2%もの人が、騒音に悩んだ経験があると答えました。
集合住宅では、ライフスタイルも生活リズムも異なる他人同士が同じ建物に暮らしているため、普段の生活のなかで他人の騒音が気になることはめずらしくないようです。
参照元:Alba Link 不動産総研「【アパート・マンションの騒音トラブルランキング】男女500人アンケート調査」
悩んだ騒音は
騒音トラブルと一口に言っても種類はさまざまです。騒音に悩んでいる人は、実際にどのような音に悩んでいるのか、先ほどのアンケート結果から見ていきましょう。
参照元:Alba Link 不動産総研「【アパート・マンションの騒音トラブルランキング】男女500人アンケート調査」
参考元:goo「騒音には空気音と固体音がある」
参考元:東洋経済オンライン「マンション住民を悩ませる「隣人の騒音」の正体」
足音が響く
先ほどのアンケートにおいて1位となったのは「足音が響く」で、126人が悩んでいると回答しました。
人間の足音は「固体音」と呼ばれるものです。固体音は固体伝播音とも呼ばれ、ある住戸で生じた力や振動が床・壁・天井などの建物躯体に入り、振動として固体の中を伝わったものが、離れた他住戸の空間で再び音として聞こえます。
固体音は固体の中を伝わるという性質上、木造アパートだけでなく、鉄筋コンクリート造など堅牢な造りの建物でも生じるため、騒音問題も深刻になりやすいのです。
声がうるさい
アンケートの回答で2位になったのは「声がうるさい」でした。大声での電話、赤ちゃんの泣き声や子どもの叫び声、ケンカの声など、近隣住戸の住人の発する声が気になるという人も多いようです。
先ほどの足音と異なり、人間の声は「空気音」。空気音は空気伝播音とも呼ばれ、音が空気を振動させることによって伝わっていくものです。木造アパートなど、壁がモルタルや合板といった軽い素材でできている建物で問題になりやすい一方、遮音性や吸音性の高いマンションでは比較的抑えられる音といえます。
宴会が騒がしい
3位に入ったのは「宴会が騒がしい」というもので38人が回答しました。こちらも人間の声が要因です。
1位・2位は生活上どうしても出てしまう音であるのに対し、こちらは本来の部屋の使用方法から逸脱している傾向があります。騒音の原因となっている部屋の住人が気をつけさえすれば防げる音といえるでしょう。
どれくらいの音が問題となるのか 騒音の基準
人間が日常の生活を営んでいる以上、一定の生活音はどうしても出てしまうものです。ここからは、どの程度の音が問題となるのか解説していきます。
(参考)
参考元:Home's「賃貸の騒音トラブルはなぜ起こる? 悩んだときの相談先と対処法」
参照元:生和コーポレーション「アパートにおける騒音トラブルの対処法とは?」
騒音の受忍限度
その音が騒音にあたるかという線引きの目安となるのが「受忍限度」です。この点については過去に判例が出ており、受忍限度とは「社会生活を営むうえで我慢するべき限度」を指すとされています。
受忍限度を超えない範囲の騒音は気にしている側が我慢をする必要があり、反対に受忍限度を超えるレベルの騒音に関しては、騒音の発生源となっている入居者に対して注意を促すべきということになります。
「社会生活を営むうえで我慢するべき限度」となると人によって感じ方が違う部分もあるため、この後紹介する騒音の環境基準を一つの目安として考えるのが一般的です。
騒音の環境基準
受忍限度を考えるうえでの一つの基準となるのが、環境省が定める「騒音に係る環境基準」です。
環境基準とは「騒音に係る環境上の条件について生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準」とされ、地域の類型や時間の区分に沿って基準値が設けられています。
地域の類型は大きく三つに分けられ、一般的な住宅地における騒音基準は昼間が55デシベル以下、夜間が45デシベル以下とされています。
参照元:環境省「騒音に係る環境基準について」
40~60デシベルの音はどれくらいか
住宅地における騒音基準を紹介したところで、実際にどの程度のものなのか見ていきましょう。
40デシベルの音は、深夜の寝静まった市街地、開館時の図書館、閑静な住宅地の昼間などと同等の音といわれます。いずれも多くの人が「静か」と感じるレベルです。
少し音のレベルが上がって50デシベルの音になると、静かな事務所、家庭用クーラーの室外機、換気扇から1mの距離の所で感じる音などと同じレベルとされます。周囲もある程度音がある環境であれば気にならないものの、静穏な環境では少し気になるレベルの音といえるでしょう。
60デシベルの音となると、乗用車の車内、普通の会話、1m離れた距離から聞く洗濯機・掃除機・テレビの音、トイレの洗浄音、2m離れた距離から聞くアイドリングの音などと同等レベルとされます。ここまでくると、多少音のある環境でも騒音として感じる人が現れるレベルと考えられます。
騒音トラブルで悩んだときは
もし明らかに受忍限度を超えるような音を発する近隣住民がいて、騒音に悩まされたときにはどのように対処すればいいのでしょうか。賃貸住宅を例に対処法を解説していきます。
参照元:Home's「賃貸の騒音トラブルはなぜ起こる? 悩んだときの相談先と対処法」
まずは管理会社に相談を
賃貸住宅で騒音トラブルに悩まされている場合、まずは管理会社に事情を話し、管理会社と共に対策を考えるようにしましょう。管理会社がいないオーナーの自主管理の物件においては、オーナーに相談すればOKです。
管理会社やオーナーに相談すると、通常共用部へ騒音に対する注意を呼びかけるチラシを貼り出したり、各住戸に手紙を投函したりといった対策が取られます。騒音の原因となっている住民が自身の行為に心当たりがある場合、この時点で改善が図られるでしょう。
それでも騒音の改善が見られないときには、管理会社やオーナーから騒音源と考えられる入居者に直接連絡を入れるという流れになります。
自力救済(実力行使)はNG
騒音トラブル解決のために重要なのが、決して「自力救済」を行わないという点。自力救済とは、問題解決のために実力行使することを指す法律用語です。
騒音を感じたときに、たとえば天井や壁を「ドン!」と叩いたり蹴ったりする、騒音を発していると思われる部屋に行ってインターホンを連打するといった行為がこれに当たります。
こうした行為に走ってしまうと、互いにどんどん感情的になってしまい、むしろ問題の解決を遠のかせてしまう危険性があります。それどころか、反対に自力救済に走った人が、周囲の住民にとって「迷惑入居人」扱いされてしまうかもしれません。
騒音トラブルをいち早く解決したいのであれば、決して自力救済に走らず、管理会社やオーナーに相談することが大切です。
証拠収集をする
管理会社やオーナーに相談する際、騒音が起きているという証拠を具体的に示すと、原因を突き止めやすくなります。
そのため、実際に「いつ」「どの辺りから」「どんな音が」「どんな頻度で」騒音が聞こえてくるのか記録しておくのがおすすめです。騒音が発生したらスマートフォンなどで録音しておき、「いつ」「どんな頻度で」というのはメモに残しておくのもいいでしょう。
まとめ
集合住宅では多くの人が生活している以上、生活音が一切ないという環境はあり得ません。騒音として感じる音のレベルは人によって異なるため、「何が騒音か」と一概にいうのは難しい面があります。
集合住宅で生活するにあたっては、それぞれが「一つ屋根の下で暮らしている」という意識を持つことが重要ではないでしょうか。