GDPって何? 日本は世界3位と言われているけど本当に豊かなの?

円安やインフレ、賃金が上がらないなど、様々な課題を抱える日本経済は不景気、貧乏などと報道される機会が多くなってきました。一方で、GDPは依然として世界3位の経済大国のままです。なぜ世界有数の経済大国である日本の経済はネガティブな報道しかされないのでしょうか?そもそもGDPってどのような経済指標なのでしょうか?

今回はGDPについて学びながら、私たちが経済指標や経済政策とどのように向き合っていけばよいのかを考える機会を作っていきたいと思います。

GDPって何?

GDPは「Gross Domestic Product」の略で、日本語では「国内総生産」と言います。一般的に国の成長や、世界の経済規模などを表すときに用いる経済指標です。どのような経済指標かというと、簡単に言えば「国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計」ということになります。「国内で」という部分がポイントで、たとえば日本企業が海外で生産したモノなどは対象になりません。GDPは私たち家計の消費や企業の設備投資、政府の支出、純輸出(輸出額から輸入額を差し引いたもの)などで構成されています。

ニュースなどで「昨年の日本経済は2%成長した」という表現を耳にすることもあるかと思いますが、この場合は『GDPの総額が前の年に比べて2%増えた』ということを意味しています。また、「日本は世界第3位の経済大国」という表現がよく使われますが、これは世界各国のGDPの実額を大きい順に並べたときに、日本が米国、中国に次いで3番目に大きいということです。

GDPには、「名目」と「実質」の2種類があります。名目GDPは私たちの実感に近い数値であり、値札通りのGDPということになります。実質GDPは物価の変動を考慮して計算しなおした数値になります。たとえば、A国が1個100円のリンゴを1年間で1個作った場合、GDPは100円ということになります。翌年、A国は同じくリンゴを1年間で1個作ったとして、物価が倍になった場合、名目GDPは200円、実質GDPは100円ということになります。

GDPが増えても賃金が上がらないと厳しい

GDPが世界第3位と聞くと、なんだかとてもすごいことのように聞こえますが、多くの日本国民が普段の生活の中で、「自分たちは世界で上から3番目の経済大国なんだ!」と自覚することはないでしょう。むしろ、新興国だと思っていた東南アジアからの旅行客が円安を背景に日本に旅行に来て、高級ブランドショップで大量に買い物をしているのを見たり、逆に私たちが欧米に旅行に行くと何もかもが高く感じたり、などといった経験をすると、「日本は貧乏な国なんじゃないか」と思ってしまうこともあるかと思います。

下図はG7各国における平均賃金の推移をグラフにしたものです。日本は賃金が上がらずに低迷を続け、7ヶ国のうち最低金額だということが分かります。

G7各国における平均賃金の推移

どれだけGDPの額が大きかったとしても、その結果として人々の賃金が上昇しなければ豊かな国に住んでいるとは実感できないでしょう。日本の場合は長らくデフレ、低インフレ経済を続けてきたため、結果として賃金が上昇しなくてもそこまで生活が苦しいと実感せずに済んできました。

ところが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻を経て日本国内でも物価上昇圧力が高まっており、いよいよ賃金が上昇しないことを多くの人が問題視するようになってきたのです。

1人あたりのGDPをみてみると……

日本の賃金が上昇しないことの要因として、日本の労働生産性が低いことを挙げる有識者を多く見ますが、GDPも「1人あたりGDP」という生産性の観点から評価する指標があります。当然のことですが、人口が多ければGDPも大きくなる傾向にあります。

当然、人口は多いけれど経済は発展途上だったり、内戦が起きていたりするような国は例外になりますが、1人あたりの生産額に人口をかければ簡易的な経済規模を計算できるのですから、その理屈自体には疑う余地はありません。

そこで、GDPも同様に1人あたりで計算してみましょう。IMF(国際通貨基金)が発表している「IMF World Economic Outlook Database, October 2022」で2021年の1人あたり実質GDPを米ドル(購買力平価)ベースで並べてみると、日本は196ヶ国中37位となっています。GDP全体でみると世界第3位なのに、1人あたりGDPでみると受ける印象が変わりますね。ちなみに、上位3ヶ国はルクセンブルク、シンガポール、アイルランドとなっています。

本当の意味でのDXが必要

厚生労働省が発表した人口動態統計調査によると、2022年の1月から10月の間に生まれた赤ちゃんの数が速報値で前年同期比-4.8%となり、年間出生数の概数が初めて80万人を割り込む見通しであることが分かりました。このペースが続くと年間の出生数は77万人台になる可能性があり、これは統計開始以来最少の数値となります。

日本では想定されていた以上に少子高齢化、人口減少が進んでいます。GDPが一定であれば、1人あたりGDPは増えますが、このような状況ではGDPが一定額を維持するのは難しいでしょう。

そこで、重要になるのが1人あたりの生産性を高めるべくDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めることです。しかし、ここでいうDXは紙で処理していたものを電子化しましたという程度のものではありません。そのレベルは既に行われているべきであり、より作業の自動化や、作業を通じて蓄積されたデータの利活用などが挙げられます。

そのDX化の流れの中に、日本が強みとする技術力や、アニメ・ゲームに代表されるデザイン・コンセプトなどソフトな部分をミックスさせることで、これからの時代において再び日本の存在感を高める契機になるかもしれません。

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