リノベ済み物件の販売が増加中! 買取再販物件の魅力と購入の注意点を解説

「買取再販物件」という用語について、聞いたことはありますか? 中古住宅を不動産会社などの事業者が買い取って、リフォームをしたうえで売り物件として販売するもので、「リノベーション済み物件」などと呼ばれることもあります。この買取再販物件が、近年増加していると言います。どういった背景があるのでしょう?

2025年の中古住宅買取再販市場は、2021年の1.28倍に増加見込み

まず、矢野経済研究所のデータを紹介しましょう。同研究所では、「中古住宅買取再販市場に関する調査(2021年)」結果を2022年1月18日に発表しています。それによると、中古住宅買取再販市場(中古戸建て及び中古マンションの買取再販戸数の合計)は、成約件数ベースで、2020年は3万6,000戸だったものが、2021年には3万9,000戸にまで増えると予測しています。さらに将来的には、「2025年の中古住宅買取再販市場規模は、5万戸に向かって拡大する」と予測しています。

同研究所は、中古住宅買取再販市場が拡大する要因をいくつか挙げています。ひとつには、「新築物件と比較して割安で新築同様の住まいが手に入る買取再販物件への需要は堅調に増加する見込みである」という需要増加の側面。もうひとつは、買取再販専業事業者や中小不動産事業者といった従来のメインの供給元に加えて、「デベロッパーやハウスメーカー、ビルダーなどの大手新築系事業者の参入や、工務店・リフォーム会社などの中小建築系事業者などの参入もみられる」という供給拡大の側面。「需要と供給がいずれも拡大することにより、中古住宅買取再販市場は順調に拡大していく見通し」と見ているのです。

中古マンションの買取再販物件が3年間で2倍以上に増加!?

次に、LIFULL(ライフル)のデータを見ていきましょう。2022年10月に「リノベーション済みマンションの物件販売数が急増中」と広報しています。同社が運営する住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」の築30年超の中古マンションのうち、2019年1月~2022年9月の買取再販物件の占めるシェアを分析した結果です。

買取再販物件
出典:LIFULL HOME'S

まず、「LIFULL HOME'S」の買取再販物件数を見ると、2019年9月は824戸だったのに対し、2022年9月は1,787戸になり、3年間で約2.2倍に増加しています。次に、買取再販物件の市場シェアの推移を見ると、2019年9月から2022年9月までで約1.5倍に拡大していました。「特に2022年が顕著」だといいます。

さらに、「LIFULL HOME'S」における、買取再販物件の掲載社数も2019年9月から2022年9月まで約2.4倍に増加しているということなので、矢野経済研究所が指摘した「買取再販物件の供給の増加」が「LIFULL HOME'S」の掲載物件にも当てはまることになります。

また同社は、買取再販物件の多い駅も公表しています。TOP3を見ると、1位は新潟県の「越後湯沢」、2位は埼玉県の「川口」、3位は東京都の「三軒茶屋」でした。「越後湯沢」は、かつてスキーリゾート地として人気を集め、マンションが数多く建設されましたが、スキー人気の減退につれて需要が減少し、近年は安価にマンションが買えるといった背景があるようです。

買取再販物件の多い駅
出典:LIFULL HOME'S

2位の「川口」は、以前から新築マンションの供給が多かったので中古マンションの数が多いこと、都心へのアクセスが良く、都心より価格が安価であることなどが要因でしょう。なお、同社は「3位の『三軒茶屋』、4位の『恵比寿』、5位の『麻布十番』、10位の『目黒』など都心周辺の人気エリアが上位に登場しているのは、以前からマンション供給が盛んで駅に近かったり、都心へのアクセスが容易だったりと、主に立地面での優位性がある」と分析しています。

買取再販物件に需要が高まるのはなぜ? その理由は…

たとえば、あなたが今、住宅を購入するとして考えてみましょう。新築住宅、なかでも新築マンションは価格が高くなっているので、なかなか予算が合いません。一方、中古住宅であれば、物件の選択肢が増えます。

通常の中古住宅を購入する場合では、築年数が経つほど物件価格は低くなりますが、物件の耐震性などの性能やどの程度老朽化が進んでいるかといった品質に対する不安が強くなります。快適に住めるようにリフォームしようとすると、どこをどうリフォームすればよいのか、費用はどの程度かかるのかが、すぐにはわからない点もハードルになります。さらに、資金計画のうえでも、購入費用とリフォーム費用とそれぞれを異なるタイミングで用意する必要があります。

これが、買取再販物件であれば、すでに新築住宅と同じような間取りや仕様でリフォームされ、価格もリフォーム費用込みになり、住宅ローンを全額利用することもできます。なおかつ、引き渡し後すぐに入居できます。

こういった新築住宅のように買えることが、買取再販物件の最大のメリットでしょう。自分好みのリフォームにあまりこだわりがなければ、マイホームの有力な選択肢になります。当然価格には、買取再販事業者の利益が上乗せされますが、事業者が大量発注をすることなどで一般の人がリフォームするよりも、リフォーム費用を圧縮できます。また、建物価格に消費税がかかりますが、住宅ローン減税が新築住宅並みに利用できるといったメリットもあります。

ただし、中古住宅市場における物件数が少ないことが大きな課題でしたが、紹介した調査結果のように物件数が拡大すると見込まれています。買取再販事業は、1物件ごとに判断して対応していくので、大変手間がかかることから、これまでは買取再販専業事業者が中心に展開してきました。

ところが、中古住宅のストックが多いこと、買取再販物件の住宅取得時の税制優遇措置があること、新築住宅の用地取得が難しくなっていることなど、さまざまな理由から多くの事業者が参入して物件数が増えているのです。これからは以前よりも、探しにくさが解消されるかもしれません。

買取再販物件を選ぶ際に注意することは?

買取再販物件の注意点としては、リフォーム後の姿しか見られない点にあります。下地がどのような状態の上にリフォームしたのかがわかりませんから、適切にリフォームされているのか、欠点を隠してとりあえずリフォームしたのか、を見極める必要があります。特に、構造部分や給排水管などの設備については、完全に隠れてしまうので注意が必要です。

信頼できる買取再販事業者は、どの部分をどのように改修したか、改修した部分についてはいつまで保証するかなどを明示しています。リフォーム工事に対して責任を持つかどうかは、信頼性をはかる大きなポイントです。

目安になるのは、(一社)リノベーション協議会の「適合リノベーション住宅」でしょう。給排水管や分電盤、下地、浴室防水などの重要な部分について検査基準を設け、基準に適合するための工事を行うことを義務付けています。さらに、2年以上の保証を義務付けるなど、購入者が安心できるルールを設けています。こうしたルールを参考にして、買取再販物件の売主に保証などについて確認するとよいでしょう。

買取再販物件の選択肢が増える動向も

最近は、買取再販物件の動向にも変化が見られます。もともと、マンションに比べて戸建ては、土地や住宅の形状、建て方などの個別性が高く、買取再販が難しいとされていました。特に「浴槽を取り外したらシロアリの食害で損傷していた」というような事例も多く、隠れた部分の損傷具合が表から見て分かりづらいという側面もあるからです。今では、戸建てを専門に買取再販する事業者が登場するなどで、郊外や地方を中心に戸建ての買取再販物件が増加しています。

Before
Before
After
After
戸建ての買取再販専業事業者カチタスの物件例(画像提供:カチタス)

一方、主要都市部はマンションの買取再販物件が多いのですが、築年数の古い低額の中古マンションを買取再販するのが一般的でした。大掛かりなリフォームが必要で、専門事業者のノウハウが活かされ、新築マンションと比べて割安感が出やすいからです。そこに近年、新しいトレンドが登場しています。

都心部で専有面積の広い高額の中古マンションの買取再販が、注目されているのです。たとえば、東京都心部で専有面積の広いマンションを探すとなると、新築マンションであれば数が少ないうえに手が届かない価格になりがちです。買取再販の中古マンションであれば、もう少し手ごろな価格で手に入るといったことから、今後需要の増加が期待できる分野なのです。

買取再販物件を数多く手掛けるリビタでは、2013年11月から『R100 tokyo』を展開しています。東京23区内で専有面積100平方メートルを超える新築マンションがわずかしかないことから、中古マンションを厳選してカスタマイズやオーダーメイドのリノベーションを行って販売してきました。近年の富裕層の増加やニーズの変化などを受けて、2022年にブランドリニューアルをして、高額の物件を強化しています。

リビタ
リノベーション事例(三田サロン)(画像提供:リビタ)

今後は、こうした高額の中古マンションの買取再販を強化する事業者も増えると思います。先行するリビタに聞くと、「ヴィンテージマンションと呼ばれるものをはじめ、過去の経済的にゆとりのあった時代につくられた物件は、現在つくられるものと仕様の乖離があり、その点を見極めどのようにリノベーションするかは、事業者の知識経験・ノウハウが求められるところ」だと、事業者の提案力の重要性を指摘しました。

このように、買取再販物件は物件数が増加することに加え、マンションも戸建ても、価格が低額な物から高額のものまで、バリエーションも増えています。こうして、住まいを探している人たちにとって選択肢が多くなることは、望ましいことです。今後も拡大が期待できる分野と言えるでしょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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