冬の寒さが本格的になってきました。暖房にかかる費用や健康被害などが気になります。住宅関連各社では、冬を迎えるにあたって寒さに関する調査を実施しています。建材や設備機器のLIXIL、熱エネルギー機器のリンナイ、ハウスメーカーの積水ハウスの3つの調査結果を見ながら、冬の寒さとヒートショックのリスクについて考えていきましょう。
冬のわが家は寒い!? 気になる電気代、5千円以上上がった人が約4割?
「冬は自宅の中にいても寒い」当たり前のことに思えますが、どのくらいの人がそう感じているのでしょうか? LIXILの「住まいの断熱と健康に関する調査」(調査実施:2022年9月、調査対象:全国の20~50代の持ち家の既婚男女・4,700人)の結果を見ましょう。
普段生活している住まいで冬(主に11月~2月)に「寒いと感じる」または「一部の部屋では寒く感じる」と回答した人は79.4%でした。約8割の人が、自宅で寒さを感じながら冬を過ごしていることになります。
冬の寒さで、「不眠」や「肩こり」に悩まされる人も多いようです。リンナイの「全国47都道府県別『冷え・ヒートショック』に関する意識調査」(調査実施:2022年10月、調査対象:全国47都道府県別に20~60代の男女・2,350人)によると、冬の身体の不調として「冷え」を選んだ1,268人に、「冷えによりつらいと感じる具体的な症状」を選んでもらったところ、「不眠」が37%、「肩こり」が36%というトップ2になりました。
また、コロナ禍でもあり、自宅にいる時間が長くなる傾向が見られます。そこで、積水ハウス住生活研究所の「自宅における冬の寒さ対策に関する調査(2022年)」(調査実施:2022年10月、調査対象:全国の20~60代の持ち家の既婚男女・500人)の結果を見ましょう。「冬場に自宅で長い時間を過ごす上で、気になることや不安なこと」を聞いたところ、「電気代が上がる」が半数近い48.6%を占め、最多となりました。かたや「ヒートショック」はわずか8.6%でした。
電力不足による電気代の高騰が続いているので、気になるのは当然のことかもしれません。エネルギー危機によるガス代や灯油代も高騰しているので、それらの費用の上昇も35.6%の人が気にしています。では、どの程度の影響があるのでしょうか?
同じ積水ハウスの調査結果を見ると、光熱費が上がったと回答した人で上がった金額が「月に5千円以上」という割合は電気代で38.4%、ガス代(灯油代)で23.2%もいました。これだけ上がると家計への負担を重く感じることでしょう。
自宅で寒いのは、トイレ、浴室、洗面所
次に、自宅で寒い場所はどこかを確かめてみましょう。2つの調査で寒い場所をそれぞれ調べています。まず、LIXILの調査では、「トイレ」(52.2%)、「浴室」(51.8%)、「洗面所(脱衣所含む)」(48.7%)がトップ3で、次いで、「廊下」(45.9%)、「玄関」(43.5%)、「寝室」(37.7%)となりました。
一方、リンナイの調査でも似たような結果になりました。自宅で冷えが気になる場所は、「脱衣所・洗面室」(54%)、「トイレ」(45%)、「浴室」(35%)がトップ3で、「廊下」(30%)、「寝室」(20%)が続きました。
いずれも水まわりと呼ばれる場所で、寒さを感じることが多いことがわかります。さらに、廊下と寝室も寒さを感じる場所に挙がっています。暖房機器が設置されていないことや暖房機器があっても布団の中と外で温度差があることなどが、要因だと思われます。
暖かい場所から寒い場所に移動するなど、急激に温度が変化すると、血圧も上下して、心筋梗塞や脳梗塞などの発作を起こす「ヒートショック」のリスクが高まります。実は、ヒートショックによる年間死亡者数は、交通事故の死亡者数より多いと言われています。
ヒートショック対策は特にしていない? 考えたい断熱リフォーム
リンナイと積水ハウスは、それぞれの調査でヒートショックの認知度を調べています。リンナイの調査結果では「ある程度知っている」(50%)、「よく知っている」(16%)という結果に。一方、積水ハウスの調査結果では、「どのような状態になるか内容に関して知っている」(44.2%)、「ヒートショック発生時の対策方法まで知っている」(7.0%)となり、ヒートショックは命に関わる危険な症状であることだと、多くの人が理解していることがわかります。
ところが、積水ハウスの調査で、ヒートショックを防ぐために行っている対策について見ると、「風呂上りには手早く着替える」(24.0%)、「浴室暖房機で浴室を温める」(21.5%)、「廊下や脱衣所にも暖房機器を置く」(19.3%)などが上位に挙がる一方で、「特に何も対策していない」という回答が32.2%で最多となりました。3人に1人は対策をしていないということになります。
ヒートショック対策で最も効果が高い方法は、「断熱リフォーム(省エネリフォーム)」です。「住宅の断熱性を上げると、どんな影響があるか」をLIXILの調査で聞いています。「冬は家の中が暖かくなる」(76.6%)、「光熱費を削減できる」(74.0%)、「エアコンの効きが良くなる」(71.9%)など、省エネ性に関する効果は認識されているようです。
一方、「心疾患(ヒートショックなど)の健康リスクを低減する」(30.6%)、「アレルギー症状を緩和する」(8.1%)などの健康に関する効果についてはあまり知られていませんが、ぜひ認識してほしいところです。
寒い場所に暖房機器を置いたり、浴室でしばらくシャワーを流したりして、温度差をできるだけ抑える方法もありますが、電気代などが高騰している折、節約のために使用を控えたいという気持ちにもなるでしょう。住宅そのものの断熱性を上げ、住宅内の温度差も抑制する断熱リフォームは、手間や費用がかかりますが、長い目で見て冷暖房費や健康被害のメリットが大きいと考えられます。
断熱リフォームで、天井や床、壁に断熱材を補強したり、窓まわりを省エネ性の高いものに交換したりすることで、住宅の断熱性は高くなります。特に窓まわりのリフォームは、住みながら工事ができ、工事も数日で済みます。一定の条件を満たせば、国や自治体の補助金があったり、減税になったりするので、ぜひ検討してほしいと思います。
ヒートショックを起こしやすい入浴方法、していませんか?
さて、リンナイの調査結果のリリースには、東京都市大学・早坂信哉先生監修による「ヒートショック予備軍テスト」なども掲載されています。このテストのなかから、入浴習慣とヒートショックの有無をうらなう項目を選んでみました。自分の入浴習慣で、次のようなことをしているかどうか答えてみてください。
この入浴習慣はヒートショックに○×?
1.寒い脱衣所・浴室でも我慢している
2.湯船のふたをしてお風呂の湯を入れている
3.熱々の湯船に長く入るのが好き
4.入浴【前】に水分をとる
5.家族に声をかけてから風呂に入る
6.かけ湯をしてから湯船に入る
参考:リンナイ「早坂先生監修 ヒートショック予備軍テスト」より抜粋
それぞれの項目について、早坂先生の解説をかいつまんで紹介しましょう。
1~3は×です。1については、ヒートショックのリスクが高いとすぐにわかるでしょう。2は、ふたを外して湯をはったほうが、浴室内に湯気がたまって温度が高くなり、ヒートショック対策に。もちろん浴室暖房があれば、その必要はないかもしれません。3は、体温が上がりすぎて意識障害に陥る可能性があるので、「冬でも湯温は40℃まで」で10分程度がおススメだとか。
次に、4~6は○です。4は、脱水で血液中に血栓ができやすくなり、心筋梗塞のリスクを高めることを防げるそうです。5は、家族が浴室内の異変に気付きやすいことから、声掛けが推奨されます。6は、かけ湯で徐々に身体をならすと血圧の急激な上昇を防げるそうです。
いかがでしたか? 入浴時のヒートショックも多いので、参考にされるとよいと思います。寒さを我慢したり、いきなり熱い湯に入ったりするのは、身体への影響が大きいことを再認識して、寒さ対策・ヒートショック対策をして、寒い冬を乗り切りましょう。
執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)