住宅内部の状態は見た目にはわからず、住み始めて欠陥に気がつくこともあるかもしれません。しかし、住宅に雨漏りや基礎の欠陥などがあると、修繕にはかなり高額な費用がかかります。こういったときに「瑕疵保険」を利用すれば、自己負担なしで住宅を修理できる可能性があります。この記事では、住宅瑕疵保険について詳しく解説します。
住宅瑕疵保険とは
住宅瑕疵保険は、建築士による住宅の検査と保証がセットになった保険です。事業者が加入し、住宅に瑕疵があったときには、保険金で修繕できます。この保険は事業者が倒産してしまった場合にも利用可能です。
瑕疵保険の種類
瑕疵保険には、新築住宅が対象である「住宅瑕疵担保責任保険」と中古住宅が対象の「既存住宅売買瑕疵保険」、そしてリフォームを対象とする「リフォーム瑕疵保険」の大きく3種類があります。
・住宅瑕疵担保責任保険
新築住宅が対象で、売り主(基本的に事業者)に加入が義務付けられています。建売住宅、注文住宅も該当します。保険期間は引き渡し後10年です。
・既存住宅売買瑕疵保険
中古住宅の売り主が加入できる保険です。ただし、新築住宅と違い加入は義務付けられてはいません。保険期間は最長5年間です。
・リフォーム瑕疵保険
リフォームを請け負う事業者が加入します。この保険に加入している事業者かどうかは、一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会ホームページで検索して確認しましょう。リフォーム後に瑕疵が判明したときに補償を希望するのであれば、リフォーム瑕疵保険に加入している事業者を選ぶようにします。
保険期間は構造耐力上主要な部分・雨水の浸入を防止する部分は5年間、それ以外は1年です。
参考元:一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「リフォームのかし保険」
住宅瑕疵担保履行法に定められている
住宅瑕疵担保責任保険は、住宅瑕疵担保履行法によって事業者の加入が義務付けられています。この法律では、住宅に瑕疵があった場合、住宅事業者は10年間の修繕責任を負うと定められています。もし倒産しても責任を取れるように、事業者は住宅瑕疵担保責任保険に加入するか、供託金を預けておかなければなりません。
中古住宅では義務化されていない
中古住宅にも最低2年の瑕疵担保責任が義務付けられています。ただし、これは宅地建物取引業者が売り主になっている場合のみで、個人が売り主だと保証がないか、あっても数ヶ月のみというケースも珍しくありません。中古住宅は新築住宅のような加入義務がないため、瑕疵があったときは自分で修繕しなければならない可能性があります。
対象となる瑕疵
住宅瑕疵担保責任保険は、住宅に起きるすべての瑕疵に対応しているわけではなく、構造耐力上主要な部分と、雨水の侵入を防止する場所に限られます。具体的には、屋根や基礎、土台、柱、開口部、外壁などです。
住宅が瑕疵保険に入っているかどうか確認する方法
注文住宅の場合は、請負契約の際に保険内容の書面記載を確認できます。分譲住宅なら売買契約時です。事業者側から保険や契約書面の記載について説明があるため、必ず確認をしましょう。
保険契約を証する書類の交付は、注文住宅・分譲住宅問わず引き渡しのときになります。
瑕疵保険の利用方法
瑕疵保険を利用するのは基本的に事業者です。そのため、もし住宅に住んでいる人が瑕疵を発見したら、事業者に「補修してほしい」ことを伝えるだけです。保険金請求のための手続きなどもする必要がありません。
しかし、住宅を購入した事業者がすでに倒産している可能性もあるでしょう。このときは、契約時に交付された書類をもとに、どの保険会社と契約したのか確認し、自分で請求しなければなりません。瑕疵の状況が調査され、必要な費用が支払われます。
瑕疵保険によって消費者が得られるメリット
瑕疵保険があることにより、消費者は次のようなメリットを得られます。
事業者が倒産しても無償で欠陥を直せる
住宅に瑕疵が起きると、雨漏りや住宅の傾きなど、そのままでは住めないような事態に陥る可能性があります。こういった欠陥を自分で直すと、何百万円という高額なリフォーム代金が必要になるかもしれません。しかし、引き渡し後10年以内であれば、保険金で修繕できます。
以前は事業者が倒産してしまうと、消費者は泣き寝入りをするしかありませんでした。ですが、瑕疵保険は事業者が倒産しても利用可能なので、消費者の安心度はかなり高くなるでしょう。
安全性の高い住宅を購入できる
瑕疵保険は、専門家による検査がセットとなっています。そのため、素人ではわからない住宅内部の問題を確認してもらえます。瑕疵保険があるとはいえ、欠陥住宅とわかっていて購入したいという人はいないでしょう。瑕疵保険に加入している住宅であれば、専門家による検査を通過していることになるため、安全性の高い住宅を購入できます。
紛争処理制度を利用できる
瑕疵保険に加入していれば、住宅紛争処理制度により住宅紛争審査会を利用できます。住宅紛争審査会とは、住宅に関する調停や仲裁を行う指定住宅紛争処理機関です。当人だけでは解決しづらいような問題も、迅速かつ適正な解決を目指せます。
住宅紛争審査会は各地の弁護士会に設置されていて、消費者・事業者どちらからでも相談可能です。通常は、依頼すると数十万円の着手金がかかることもありますが、瑕疵保険を利用すれば1万円の申請手数料だけで、弁護士や建築士による紛争処理を受けられます。
相談内容は人によってさまざまですが、購入した住宅に雨漏りや亀裂といった問題が起きた、工期や設備が約束と違ったなど、両者の主張が食い違っているときに活用されます。
まとめ
新築住宅を購入するのであれば、分譲住宅でも注文住宅でも事業者の瑕疵保険加入が義務化されています。瑕疵保険は検査もセットになっているため、加入している住宅の安全性は高いといえるでしょう。欠陥があっても保険金で修繕できるので、入居後の安心感が得られることもメリットです。
瑕疵保険は加入していた業者が倒産しても、消費者が請求すれば保険金を受け取れます。ただし、中古住宅やリフォームの保険加入は任意であるため、注意が必要です。