住宅購入時の「仲介手数料」 手数料がかかる物件・かからない物件の違いはどこ?

広告で4,000万円と表示されている新築戸建住宅を買おうとしたら、実際には仲介手数料を含めて4,126万円かかると言われてびっくり…という人が少なくありません。実は、中古住宅だけではなく、新築住宅でも仲介会社を通して購入するときには仲介手数料がかかります。反対に、中古住宅でも売主から直接購入すれば仲介手数料はかかりません。知っているようで知らない「仲介手数料」について解説していきます。

広告の「取引態様」をチェックする

不動産の売買において仲介手数料がかかるかどうかは、取引する相手が「売主」か「仲介(媒介)」か「販売代理」などの取引態様によって決まります。

「売主」であれば、広告を出している会社から直接購入することになり、仲介手数料はかかりません。それに対して、「仲介(媒介)」は売主から販売活動を依頼された仲介会社を通して購入することになり、仲介手数料の支払いが必要になります。ちなみに媒介というのは、法律用語で仲介のことを意味します。

なお、「販売代理」は売主が不動産会社に売却を依頼しているケースです。通常は売主が販売会社に販売報酬として手数料を支払うので、買主の手数料負担は発生しません。戸建て住宅では少なく、分譲マンションにしばしば見られるケースです。

この取引態様は、広告などでは社名の近くに記載されています。仲介手数料がかかるかどうかは、資金計画への影響がとても大きいので、購入を決める前に必ず取引態様をチェックしておきましょう。

仲介手数料がかかるのはどんな物件?

では、どんな物件に仲介が多いのかといえば、最も多いのは売主が個人の中古住宅です。これは、マンション、戸建て住宅に限りません。個人ではなかなか買主を探せないので、売却を仲介会社に依頼するのが一般的です。もちろん、その場合には、仲介手数料がかかります。

しかし、新築の分譲戸建て住宅にも仲介手数料がかかる仲介物件があります。大手不動産会社や大手住宅メーカーの分譲戸建て住宅は、不動産会社や住宅メーカーが直接販売したり、関連の販売会社に販売代理を委託したりすることが多く、その場合には、仲介手数料はかかりません。

それに対して、社内に販売部門を持たない中堅のメーカー、中小の工務店の分譲戸建て住宅は、仲介会社に販売を依頼します。大量生産・大量販売によるローコスト住宅をメインとする、いわゆるパワービルダーと呼ばれるメーカーも、経費節減のために販売部門を持たずに地元の仲介会社を利用することが少なくありません。このようなケースでは当然、仲介手数料がかかります。

新築分譲戸建て住宅を購入する人は、意外に少なくありません。東日本不動産流通機構の調査によると、図表1にあるように、2016年度から2020年度までは、首都圏だけで年間5,000件以上の成約がありました。2021年度はコロナ禍の影響もあってやや減少していますが、それでも4,600件です。

首都圏新築戸建て住宅の成約件数と成約価格の推移
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」より著者作成

中古でも自社物件なら仲介手数料がかからない

仲介手数料がかかることが多い中古住宅ですが、仲介手数料がかからないケースがあります。不動産会社などが買い取った上で、不動産会社の自社物件として中古販売する場合には、仲介手数料がかからないのです。

最近は、中古住宅を買い取ってリフォームし、リノベーションマンション、リノベーション戸建て住宅として再販売するケースも多く見られます。これらは、中古住宅であっても、自社物件である場合には仲介手数料がかかりません。

仲介手数料は「売買価格の3%+6万円+消費税」

仲介会社を通して販売されている仲介物件か、自社物件を所有者が直接販売する売主物件であるかによって、さまざまな違いがあります。最大の違いは、言うまでなく売主物件には仲介手数料がかからず、仲介物件にはかかるという点です。

宅地建物取引業法では、この仲介手数料の上限が図表2のように定められています。これは、あくまでもここまで仲介手数料を取ってもいい、これ以上取ってはいけないという決まりであり、交渉によって手数料の値引きが可能なケースもあります。

ただ、いずれにしても不動産は高額の取引なので、仲介手数料も安くはありません。売買価格が400万円超の場合、速算式にあるように「売買価格の3%+6万円+消費税」になります。売買価格が3,000万円であれば、仲介手数料の上限は[3,000万円×0.03(3%)+6万円]×1.1(消費税)で、105万6,000円ということです。
これを頭に入れておかないと、資金計画に誤算が生じることになるので注意が必要です。

仲介手数料の法定限度額
※400万円超の売買価格の速算式:売買価格×3%+6万円+消費税 ※売買金額3,000万円の例: 3,000万円×3%+6万円=96万円 96万円×1.1(消費税)=105万6,000円

仲介会社なら多くの会社の物件を探せる

そんなに手数料がかかるのなら、仲介物件ではなく仲介手数料のかからない売主物件を選べばいいのではないか、という気もしますが、必ずしもそれが良いとは限りません。

仲介物件と売主物件にはそれぞれメリット・デメリットがあり、仲介手数料を負担しても仲介物件を選んだほうが得策というケースもあります。

一般的なメリット・デメリットを一覧にしたものが図表3です。

売主物件と仲介物件のメリット・デメリット

何より仲介手数料がかかるかどうかという違いがありますが、それ以外にもさまざまな差があります。

たとえば、件数。売主物件の会社だと、基本的にその会社の物件しか紹介してもらえないため、物件数やエリアなどが限られます。広い範囲で探したい人は、いくつもの会社を回らなければなりません。それに対して、仲介会社は多くの会社の物件を扱い、扱いエリアが広いことが多いので、1社でさまざまな情報を入手できます。

手数料を負担してもメリットがあるケースも

一方、売主物件であれば、自社が施工した物件なので、建物の構造・仕様などに詳しく、物件の詳細を聞くことができます。設計変更や値段の交渉なども直接やりとりできるため、レスポンスが早く、交渉しやすいというメリットがあります。

ところが仲介物件だと、構造や仕様に詳しくないケースもあり、細かな説明を求めてもすぐには適切な回答を得られず、確認のためレスポンスに時間がかかったりします。ただ、熟練の担当者であれば、買主の立場になって売主との間に立ち、親身になって交渉してくれることも少なくありません。細かな値段の交渉などは、素人ではなかなかうまくいかないものですが、そこは「餅は餅屋」で専門家に任せたほうがいいケースもあります。

場合によっては、値引き交渉を行ってくれたことで値引きが成立し、仲介手数料を負担しても、総額負担が実質的に軽くなることもあるかしれません。

仲介手数料の有無にとらわれるだけではなく、仲介会社が間に入ることのメリットやデメリットを総合的に判断して、物件選びに生かすようにしましょう。

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