世田谷区は、東京23区で2番目の広さを誇る58.05平方キロメートルの行政区です。西側には多摩川が流れ、駒沢公園や砧公園など公園も多く、良好な住環境が形成されています。人口も多く、東京23区で最も多い91万人を超える人が住んでいます。今回は、その世田谷区の東側となる東急大井町線、東急田園都市線、東急世田谷線などが通る東急沿線を中心に紹介します。
東京23区最大の91万人超が暮らす場所 1964年の東京五輪を契機に街の整備が進む
東京23区中の西南端に位置する世田谷区は、東は目黒区と渋谷区、北は杉並区・三鷹市、西は狛江市と調布市、南は大田区に隣接。多摩川を挟んだ向こうには神奈川県川崎市が広がります。世田谷区の地形は、南西部の多摩川に沿って成城・大蔵・瀬田・野毛に至る国分寺崖線を境に、北東側は台地、南西側は低地となっています。武蔵野台地の一部である台地部には、いくつかの河川によって形成された丘や谷があり、世田谷の風景を形作っています。
世田谷区内広域に古墳や集落など数多くの遺跡が見つかっていることからわかるように、古くから人の営みがあった地です。世田谷城阯公園のある豪徳寺などの城下町を除けば農村が中心だった世田谷は、明治以降に大きく発展します。
1907年に世田谷区内で初めての鉄道となる玉川電気鉄道(玉電)が渋谷-玉川間を開通。1913年には、京王電気軌道の笹塚-調布間が開通しました。大正期には本格的な宅地開発がスタートし、深沢や新町などの街区が整備されました。
1923年に起きた関東大震災は、世田谷区内へ人口の流入を促しました。大規模な区画整理の先駆けとなった田園調布の例もあり、用賀や成城学園など区画整理による街づくりが活発化。整備された美しい街並みは、世田谷区の都市風景となっています。
終戦の年である1945年に約27万人だった世田谷の人口は、1955年には52万人を突破。高度成長期には、都心のベッドタウンとして発展しました。さらに1964年の東京五輪を契機に、環状七号線、国道246号線といった幹線道路や会場となる馬事公苑、駒沢オリンピック公園の整備も行われました。
1968年には、東名高速道路の起点となるインターチェンジが用賀の環状八号線との交差点に設けられ、後に開通した首都高速道路3号渋谷線とも結ばれました。
バブル期の地価高騰によって人口は減少に転じましたが、77万人台となった1995年を底に増加に転じ、2022年には90万を超える人が暮らす住宅地として発展を続けています。
【世田谷区のデータ】
総面積…58.05平方キロメートル
人口…91万6,138(2022年12月1日時点)
世帯数…49万1,837(2022年12月1日時点)
都心への交通アクセス良好、かつ身近に自然を感じられる街
世田谷区は、世田谷地域・北沢地域・玉川地域・砧地域・烏山地域の5つの地域に分けられています。地域や場所により街の雰囲気は異なりますが、公園や河川など身近に自然を感じられる点は共通する魅力になっています。
「世田谷区民意識調査2022」によれば、住みやすさについて「非常に住みやすい」と答えた人が42.1%。「やや住みやすい」の42.4%と合わせると84.5%が肯定的に評価しています。また、「今後も世田谷区に住みたい」と答えた人が82.7%と、定住意向も高くなっています。
世田谷区で暮らす魅力としてまず挙げられるのが、良好な都心アクセスです。世田谷区内には、小田急小田原線、京王京王線、京王井の頭線、東急田園都市線、東急大井町線、東急東横線、東急目黒線、東急世田谷線の8本の鉄道(世田谷線は軌道)が通り、区内の路線延長は約37キロメートル。その間に、二子玉川、三軒茶屋、下北沢など41もの駅があります。都心直通の鉄道も多く、二子玉川駅からは渋谷駅へ10分台でアクセス可能。大手町駅へも直通で行くことができます。
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二子玉川駅 / 三軒茶屋駅 / 下北沢駅
東急田園都市線や東急東横線で結ばれる渋谷駅と京王線、小田急線で結ばれる新宿駅では、現在大規模な再開発が進行中。商業・ビジネスが集積するターミナル駅への良好なアクセスは、世田谷区で暮らす魅力となっています。
また、環状七号線、環状八号線、国道246号線といった幹線道路や、首都高速道路3号渋谷線、東名高速道路などの高速道路も利用可能で、横浜方面に向かう第三京浜道路も通っています。世田谷区は、電車でのアクセスも車でのアクセスも良好な場所と言えるでしょう。
駒沢オリンピック公園や砧公園など憩いのスポットが豊富に
世田谷区の東側は、渋谷駅へと結ばれる東急田園都市線、東急東横線に加え、二子玉川駅から大井町駅へと結ばれる東急大井町線、三軒茶屋駅から京王線下高井戸駅へとつながる東急世田谷線が通っています。多彩なスポーツ関連施設が魅力の駒沢オリンピック公園(駒沢大学駅)、芝生の広場や春には桜を楽しめる砧公園(用賀駅)があり、緑豊かな住環境が魅力のエリアです。
砧公園内には、世田谷美術館が立地。ほかにも、実業家であった五島慶太氏が収集した茶道具や中国陶磁器、国宝である「源氏物語絵巻」などの美術品を所蔵する五島美術館(上野毛駅)や、長谷川町子美術館(桜新町駅)など民間の文化施設も豊富です。
また、玉川高島屋S・Cのある二子玉川駅など、豊かなライフスタイルを実現できる商業スポットが身近にあるのも魅力です。二子玉川駅では、再開発街区である商業施設・オフィス・住宅・公園などからなる二子玉川ライズが2015年に完成。二子玉川公園内には、カフェなどもオープンし、地域ににぎわいと憩いの場を提供しています。蔦屋家電なども入る二子玉川ライズS.C.は、新たなお出かけスポットとして人気を集めています。
世田谷区内には、大学のキャンパスも豊富にあります。東急沿線には、多摩美術大学、産業能率大学、駒澤大学、日本体育大学、昭和女子大学、国士舘大学などがあり、多くの大学生が住んでいます。ファミリーや学生、社会人、高齢者まで幅広い人が暮らしやすい街と言えるでしょう。
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駒沢大学駅 / 用賀駅 / 上野毛駅 / 桜新町駅 / 二子玉川駅
エリアによって異なる街の雰囲気 世田谷区内の東急沿線エリアの住宅事情
次に、世田谷区内の東急沿線の住宅事情を見てみましょう。世田谷には、駒沢、深沢、奥沢といった地名があるように、自然によってつくられた高低差のある地勢で地域ごとに住環境も異なります。
たとえば、東急大井町線沿線は多摩川に向かって段丘となっていて、国分寺崖線周辺には緑も多く残っています。上野毛、等々力、尾山台などの高台エリアは邸宅街。また、東急田園都市線は、多摩川に近い二子玉川駅を除き高台にあり、用賀、桜新町、駒沢大学などには、瀬田や新町、弦巻といった落ち着いた住宅街が広がっています。
東急世田谷線は、三軒茶屋から下高井戸を結ぶ2両編成の電車。世田谷区民の足として愛されています。
松陰神社のある松陰神社前駅は、東急田園都市線沿線のような駅前の華やかさはないものの、地域に根差したお店があり落ち着いた暮らしがかなえられそうです。
現在、建て替え・改修工事が行われている世田谷区役所は、松陰神社前駅が最寄り。区役所の旧来の建物の多くが新しく建て替えられ、区民会館も改修中です。
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最低敷地面積や高さ制限など住環境を守る街づくり
住居系エリアが9割超を占める世田谷区は、高層建物が建てられるエリアが限られ、住宅の供給も戸建てや低・中層マンションが中心となります。そのため住環境が維持しやすく、日当たりや通風性の高い住宅を供給しやすくなっています。
世田谷区では用途地域による絶対高さ制限(10メートルもしくは12メートル)や、用途地域による最低敷地面積制限(70平方メートルから100平方メートル)などを設けるなど、住環境を守る施策も行われています。このため、分譲戸建てなども一定の土地面積を持つゆとりある住宅が目立ちます。
分譲戸建ての供給は活発ですが、等々力や深沢、上用賀などの人気の住宅地は価格も相応で、1億円超の高価格帯のものが中心です。8,000万円台といった1億円を超えない新築住宅の分譲も見られますが、多くは世田谷線沿線です。
また、新築マンションの分譲も一定数見られますが、住居系用途地域が多くを占める行政区だけに総戸数100戸を超えるような大規模な新築マンションの分譲はあまり見られません。価格は高止まり傾向にあり、1LDKタイプで5,000万円台から。3LDKタイプは、1億円前後の価格設定のものが目立ちます。
中古マンションストックは東急田園都市線中心に豊富にあり、3LDKタイプが8,000万円台程度の予算から検討可能です。新築マンションの分譲が限られるため、立地にこだわるなら中古マンションを選択肢に加えるのもよいでしょう。
次に世田谷区東急線沿線の筆者おすすめの街を紹介します。
二つの大型ショッピングセンターがかなえる二子玉川の豊かなライフスタイル
一つ目は、二子玉川駅です。二子玉川といえば、多摩川の豊かな自然と1969年にオープンした玉川高島屋S・Cがまず思い浮かびます。玉川高島屋S・Cは、日本におけるショッピングセンターの先駆けでもあり、50周年を迎えた今も多くの人でにぎわっています。また、2015年に街区工事が完了した二子玉川ライズは、商業・オフィス・住宅が一体となった再開発地区。整備された二子玉川公園とともに、職・住・遊近接の新たなライフスタイルを実現しています。
二子玉川の魅力は急行停車駅であることに加え、東急田園都市線と東急大井町線が利用できる軽快な交通アクセス、多摩川の河川敷などが広がる豊かな自然、商業利便性や生活利便性の高さです。
約170店もの店舗が出店する二子玉川ライズS.C.と、300店を超える多彩なショップが魅力の玉川高島屋S・Cをはじめとする商業施設群は、豊かなライフスタイルをサポートするでしょう。
また、二子玉川公園や多摩川二子橋公園など憩いのスペースも充実。二子玉川の河川敷は、世田谷区たまがわ花火大会の会場でもあり、夏の風物詩になっています。また、街なかにはインターナショナルスクールやプリスクールもあり、外国人にとっても暮らしやすい街と言えるでしょう。
二子玉川駅もほかの世田谷区と同様に新築マンションの分譲は限られ、価格も3LDKタイプは1億円を超える高価格帯のものが中心です。中古マンションも駅近の立地は人気があり、流通物件は限られます。候補物件に出合えたら、早めの判断が必要になるかもしれません。
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美しい街並みが魅力 砧公園や馬事公苑をはじめ、緑あふれる用賀
二つ目に紹介する駅は、用賀駅です。
二子玉川駅より渋谷方面に1駅の用賀駅ですが、駅周辺から落ち着いた住宅街が広がり、ショッピングセンターのある二子玉川駅とは街の雰囲気が随分と異なります。用賀の魅力は、ほぼフラットで街路が整備された上用賀、瀬田などの邸宅街が連なること。砧公園や馬事公苑などの自然豊かなスポットも生活圏です。
また、環状八号線や国道246号線が通り、東名高速道路の用賀インターチェンジが近く、車でのアクセスも良好。駅前には商店街が広がり、ニトリなどのホームセンターも立地します。商業施設がそろう二子玉川へは車でも電車でもすぐにアクセスできるので、休日の買い物も便利です。関東中央病院など医療施設も身近にあります。
新築戸建ての分譲は限られており、徒歩圏では1億円を超えるものが中心。新築マンションは、2LDKタイプで8,000万円台から。3LDKタイプは1億円を超えます。また、中古マンションの流通は世田谷区の中では多く、3LDKタイプが7,000万円台から検討可能です。
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多彩な飲食店がそろう三軒茶屋には、世田谷公園など憩いの場も
三つ目は、三軒茶屋駅です。
三軒茶屋駅は東急田園都市線の急行停車駅で、急行利用なら1駅で渋谷駅へアクセスできます。国道246号線や世田谷通りが通り、沿道には多彩なお店が立ち並びます。また、カフェやレストラン、飲み屋が多いのも三軒茶屋の特徴です。仕事帰りに気軽に立ち寄れるお店があるのは、この街に住む魅力でしょう。
三軒茶屋駅前は飲食店などのお店が多く、田園都市線の中でもにぎわいのある街ですが、世田谷公園や世田谷区立こどものひろば公園など、のんびりできるスポットも豊富にあります。国道246号線などの幹線通りから離れると太子堂、下馬など車通りの少ない落ち着いた住宅街が広がります。
三軒茶屋駅もほかのエリアと同様に、新築戸建て、新築マンションの供給は限られます。3LDKタイプであれば、1億円を超える予算は必要でしょう。一方、中古マンションの流通は活発で、3LDKタイプから単身者向けの1LDKタイプなどさまざまな部屋が検討できます。築年数にこだわらなければ、1LDKタイプが4,000万円台から検討可能です。
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渋谷の再開発で住拠点としての魅力アップ 二子玉川では築堤も進む
東急田園都市線や東急東横線で結ばれる渋谷駅では、大規模な再開発が進行中。多彩な商業施設に加え、渋谷駅周辺ではこれまで不足気味とも言われていたオフィススペースも拡充されます。渋谷駅の再開発が進めば、アクセスしやすい世田谷区東急沿線の魅力が高まるのではないでしょうか。
留意したいポイントは、多摩川沿いエリアの水害リスクと、比較的狭い道路が多く残っていること。農地がそのまま市街地へと変わった場所もあり、車の利用に不便な場所があります。また、駅から遠く坂道があり、高齢者にとっては暮らしにくいと思われる場所も。バスの便数が減っているところもあり、注意が必要です。
2019年10月の台風19号被害を受けて、野川との合流地点となる二子玉川近くの多摩川では無堤防区間のいっ水を防止するため護岸を整備し、堤防づくりが進められています。完成すれば、同規模の洪水が起こる際も安全に流下させ、氾濫を防止することが可能になります。
世田谷区の東急線沿線の街を訪ねて感じるのは、馬事公苑や駒沢オリンピック公園などの憩いのスポットが整っていること。1964年の東京五輪にあわせて整備されたものですが、環状7号線や国道246号線などの整備も進められ都市の動脈となっています。二子玉川のように、都心にアクセスが良好、かつ自然豊かで生活利便性の高い街はなかなか出合えません。この二子玉川をはじめとした世田谷区内の東急沿線の街は、シングル、DINKSに加え共働きの子育て層におすすめです。
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