株やFXで利益が出たときに確定申告すると、ふるさと納税の上限が上がります。
なぜ投資の利益がふるさと納税に影響するのか、確定申告するとどれくらい上限が上がってお得になるのか解説します。
株やFXの利益を確定申告するメリットだけでなく注意点も併せて解説するので、確定申告すべきか迷っている人はぜひ最後までチェックしてみてください。
ふるさと納税の控除限度額の目安は?
まずは、ふるさと納税で自己負担2,000円を除いた全額が控除されるふるさと納税(年間上限)の目安はいくらくらいなのか確認しておきましょう。独身または共働きの目安金額は以下のとおりです。
上の表を見ると、収入が多ければ多いほど上限が高くなっているのがわかります。
上限は、本人の収入のほか「控除」の有無によっても変わってきます。たとえば配偶者や高校生・大学生の子どもを扶養している人は、「配偶者(特別)控除」や「扶養控除」の対象になるため、同じ収入でも上の表より上限が低くなります。
「医療費控除」「住宅ローン控除」など、その他の控除を利用している人も同様です。
株やFXの利益を確定申告するとふるさと納税の限度額が上がるって本当?
「株やFXの利益を確定申告するとふるさと納税の限度額が上がる」というのは本当です。
ふるさと納税の限度額は、所得金額が増加すれば大きくなります。
そのため株やFXで利益が出て所得が増えた場合、そのことを申告(確定申告)すれば、ふるさと納税の控除限度額が上がる可能性が高いでしょう。
株やFXの利益を確定申告すると限度額が上がる理由とは?
ふるさと納税の上限(控除限度額)を計算するときは、給与などメインの収入だけでなく、投資で得た収入なども含めます。株やFXで得た利益が多いほど所得が多くなり、所得が多くなるほどふるさと納税の上限が上がるしくみになっています。
ちなみに、株やFXの利益のほかに不動産所得や副業で得た所得がある場合なども上限が上がります。
そもそも株やFXの利益が出たら確定申告は必須?
そもそも「株やFXの利益が出た=確定申告が必要」というわけではありません。
(注) 給与の収入金額の合計額から、雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ、給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円以下の人は、申告の必要はありません。
ただし、確定申告(所得税の申告)は不要でも、住民税の申告は収入の多寡にかかわらず必要なので要注意です。
年間20万円を超える利益が出た場合でも、源泉徴収ありの特定口座やNISA口座での投資なら、確定申告なしで済ませることができます。
確定申告が必須なのは、たとえば源泉徴収なしの特定口座や一般口座、FX口座で投資して、年間20万円以上の利益が出た場合などです。
株やFXの利益を確定申告するとどのくらい限度額が上がるのか?
ふるさと納税の上限(控除限度額)は、以下のように計算します。
寄附金の上限額を「X」とすると【(X-2千円)×(90%-所得税の税率×1.021)=住民税所得割額×20%】の計算式となり、ここから上限額「X」を求める式に直すと、次の計算式により上限額を求めることができます。
X =個人住民税所得割額×20%÷(90%-所得税の税率×1.021)+ 2千円
計算式を見ると少々複雑なのですが、ざっくりいうと「株・FX等の利益を確定申告すれば、その利益の1%~2%程度ふるさと納税の上限が上がる」と考えておけばよいでしょう。
たとえば株で50万円の利益が出た人が確定申告すると、5,000円~1万円ほど上限が上がるイメージです。
株やFXの損失を確定申告すると限度額は下がるのか?
「利益を申告して上限が上がるなら、損失を申告したら下がってしまうのでは?」と思うかもしれません。
しかし、損失を確定申告しても上限は下がりません。株やFXの損失があっても、上限を計算するときのもとになる所得には影響しないからです。
株やFXの損益を確定申告するその他のメリットとは?
必須ではない人が、あえて株やFXの損益を確定申告するメリットについて見ていきましょう。
・損益通算できる
損益通算とは、株を売却して損失が出た場合などにほかの口座やほかの所得の利益と相殺して税金を計算できる制度です。損失を確定申告して損益通算すれば、しない場合より税金を安く抑えられます。口座が複数の証券会社にある場合でも損益通算できますが、NISA口座は対象外です。
・最長3年間、損失を繰り越すことができる
損益通算しても差し引ききれないほど損失が大きい場合は、差分を翌年以降の所得から差し引くこともできます。これを「繰越控除」といい、最長3年間にわたって利用できます。
・課税所得が900万円以下の人は総合課税を選んだほうが節税になる
株の利益を確定申告する際、「申告分離課税」と「総合課税」の2種類から、自分にとって有利な課税方式を選択できます。課税所得が900万円以下の人(特に扶養控除などを全額控除できていない場合)は、あえて確定申告して総合課税を選ぶことで税額を抑えられます。
株やFXの利益を確定申告する場合の注意点とは?
株やFXの利益を確定申告すると、所得が上がってふるさと納税の上限が上がります。お得になったように見えますが、実は注意しておきたい点もあります。所得が上がった結果、以下のような事態になる可能性があるのです。
・国民健康保険の保険料が上がる可能性がある
自営業やフリーランスなど国民健康保険に加入している人は、所得が上がると、それをもとに計算されている「国民健康保険料」も上がる可能性があるので要注意です。ただし、勤務先の健康保険に加入している会社員などであれば影響はありません。
・扶養から外れてしまう可能性がある
扶養の範囲内で働いている場合、所得が上がることで扶養から外れ、納付すべき税金や社会保険料の金額が増えてしまうかもしれません。
・助成金・補助金の対象外となる場合がある
国や自治体の助成金や補助金のなかには「所得○○円未満の人が対象」といった条件が付いているものもあります。所得が上がると、以前なら受け取れたはずの補助金が得られなくなるといった事態も想定されます。
上記のようなケースを想定しないまま確定申告を進めると、ふるさと納税の上限を少し上げようとがんばった結果、逆に負担が増すという結果になることも考えられます。
確定申告が必須ではない場合は、本当に確定申告したほうが得になるのか、よく検討するようにしましょう。
まとめ
ふるさと納税の上限(控除限度額)は、1年間の所得によって変わります。株やFXの利益が出たときに確定申告すると、所得が上がり、ふるさと納税の上限も上がります。
ただし、所得が上がることで国民健康保険の保険料も上がる、扶養から外れてしまう、補助金や助成金の対象から外れてしまうなど、結果的に負担が増えてしまうことも考えられます。
確定申告が必須でない人は、ふるさと納税のメリットだけでなくこうしたデメリットも見極めたうえで、すべきかどうか判断しましょう。