東急東横線沿線の中でも、特に人気の高い自由が丘駅前で再開発が始まりました。同駅周辺ではこれ以外にも商業施設やマンションの建て替え、施設の改装が進行。さらに、徒歩圏にある奥沢駅でも駅が新しくなるなどで一帯が活気づいています。どういった変化が起きているのかを見ていきましょう。
再開発以外にも変化が目白押しの自由が丘駅周辺
東急東横線沿線でも人気の街、自由が丘駅周辺で再開発、建て替え、改装などのラッシュが起きています。東急東横線、同大井町線の2線が使える利便性の高い街であることに加え、駅周辺には商業施設が集積している自由が丘は、買い物にも外食にも便利な街。
また、緑道やテラス席のある飲食店など、子どもやペットを連れて訪れてもひと休みできる場所が多く、いつもにぎわっています。
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国内最大級の商店街が立役者
そのにぎわいの大きな要因のひとつに、商店街の団結があります。ある程度の規模の駅周辺には複数の商店街があることが多いものですが、それらが連携してイベントなどの活動を行うことはあまりありません。ところが自由が丘では、1963年に地域にある12の商店街がひとつにまとまり、自由が丘商店街振興組合を結成。加盟店数1,300軒に迫るという国内最大級の商店街組織となっています。
それだけの数の店舗が集まって、イベントの開催や、街に対してなにかしらの働きかけを行えば、通常の商店街以上にインパクトがあるのは当然のこと。毎年10月に行われる自由が丘女神祭りには、なんと数十万人の人が集まるそう。それ以外にも、自由が丘の氏神様である熊野神社や九品仏川緑道、駅前広場などを舞台に、さまざまなイベントが開催されており、多くの人が街を訪れています。
イベントを開催するだけでなく、街を紹介する自由が丘オフィシャルウェブサイトの運用や、隔年(コロナで多少変則になっています)で自由が丘オフィシャルガイドブックを出版して全国の書店で発売するなど、PR活動にも熱心に取り組んでいます。最新のガイドブックは2022年9月30日の発売。それ以外にも、地元に向けて『ホイップるんの自由が丘かべ新聞』などを発行、街角に貼り出してもいます。
ウェブ、紙媒体以外にも街角にインフォメーションセンターを造り、日曜には学生ボランティアが街のガイドをすることも。インフォメーションセンターには授乳室も設けられています。
地元の人たちがまちづくりの主役
こうした活動の発展形が、都市再生推進法人株式会社ジェイ・スピリットです。国土交通省の説明によれば「都市再生推進法人とは、都市再生特別措置法に基づき、都市の再生に必要な公共公益施設の整備等を重点的に実施すべき土地の区域のまちづくりを担う法人として、市町村が指定するものをいいます」とのこと。地域のまちづくりの担い手として行政の補完的機能を担いうる団体ということでもあり、自由が丘では商店街や町内会をはじめとする地元の人々が自分たちの街のまちづくりを推進しているのです。
契機となったのは、2000年10月に自由が丘周辺の約76ヘクタールが目黒区から中心市街地活性化法に基づく中心市街地としての指定を受けたこと。街の活性化を地域と地元の住民団体が主体となって事業を推進、展開できる組織が必要と、2002年7月に株式会社ジェイ・スピリットが設立され、2016年6月には都市再生推進法人の認定を受けています。つまり、地元のことを一番良く知る人たちが地元を良くしようと取り組んでいるのが、現在動き始めた開発というわけです。
自由が丘、5つの課題とは?
開発にあたり、いくつか問題とされたことがあります。ジェイ・スピリットをはじめ、行政やまちづくりの推進団体等で構成された自由が丘駅周辺グランドデザイン策定協議会がまとめた自由が丘駅周辺地区グランドデザインによると課題は以下の5つ。
・東急大井町線・東横線の踏切が自動車、歩行者のボトルネックとなっていること
・道路整備が進んでおらず、渋滞が発生、細い道路では人と車が入り混じり危険
・用途地域と土地利用のミスマッチ。住居系地域に商業施設が進出、環境、防犯面の懸念がある一方で、それが自由が丘らしさでもあり、一概に規制を良しとはできないこと
・高齢化、住民ニーズの多様化
・まちのブランド力の低下
非常に広範なテーマでもあり、グランドデザインは100ページ近くにも及んでいます。単に駅前を再開発しようというだけではなく、目指す街の姿に向けて何をどうすれば良いかが細かく書かれているので、この街に住みたいと考える人には一読をお勧めします。
駅正面口から再開発がスタート
さて、そのグランドデザインのいくつかの目標のうち、現在進行しているのは駅正面口の広場に面した一画。2020年には自由が丘一丁目及び自由が丘二丁目各地の約3.1ヘクタールを対象に、自由が丘駅前西及び北地区地区計画の都市計画が決定しています。
そのうち、自由が丘一丁目29番地区(以下、29番地区)では組合施行の市街地再開発事業の都市計画が同年10月に決定、2022年1月には市街地再開発組合が発足しています。29番地区がいずれ行われる、駅前のかなりのエリアを占める西北地区の開発の先陣を切ることになります。
その29番地区は、東横線高架と道路を挟んで並行する約0.5ヘクタールのエリア。東横線と反対側は都市計画道路補助127号線、駅前広場と反対側は同じく補助46号線と接しているのですが、これらの道路の拡幅が開発のひとつの目的。人通りの多い道路でありながら、細く、歩道もない状態になっているのを開発によって広げ、安全な通りにしようというわけです。
同線だけでなく、この地区内を走る道路はさらに細く、路地と言っても良い状態。そこに飲食店等が集積しているため、防災面を考えると拡幅は必須ということでしょう。道路の整備のほか、地区内には2ヶ所の街角広場、地区内を貫通する道路、共同の荷捌所などが設けられる予定で、緑化も図られるとか。この一区画が変わるだけで駅周辺の道路事情は変わりそうです。
自由が丘一丁目29番地区市街地再開発組合のホームページに掲載されている完成予想図は、駅前広場と一続きになったような1階が描かれており、にぎわいの場になるものとして計画されていることが分かります。高さは約60メートル、地上14階建てになる予定です。現在の自由が丘駅周辺でもっとも高いのは9階建てということを考えると、これまでにない高さの建物が建設されることになります。
主要な用途としては低層部に商業施設、業務施設が入り、上層部には住宅が造られます。事業協力者はヒューリック、鹿島建設となっています。
今後の予定としては、2022年度には除却工事に着手、2023年度に工事に着手、竣工予定は2026年度です。おそらく、これに呼応して西北地区の他エリアでも個別建て替え、共同建て替えあるいは再開発という動きが出てくるでしょう。となると、これから数年後には自由が丘駅前の風景は大きく変わりそうです。
踏切除去へ、目黒区が予算計上
もうひとつ、自由が丘駅周辺で交通の阻害要因となっている踏切の除去についても、目黒区が2021年2月に2021年度予算に「自由が丘の鉄道立体交差化」の調査・検討費用を計上しています。再開発より時間がかかるかもしれませんが、これによって大井町線が地下化されれば、上部には広大な空間が生まれます。
下北沢では、小田急線の地下化が下北沢駅周辺に個性的な、若い人を集めるボーナストラックをはじめとする商業施設を生み出したことは記憶に新しいと思いますが、自由が丘周辺にそうした空間が生まれれば街や沿線の価値はさらにアップするはず。今後の動向が楽しみです。
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周辺で起きている変化をチェック
それ以外でも、自由が丘駅周辺ではさまざまな動きがあります。ひとつは52年間に渡り、地元で愛されてきたスーパーマーケットピーコックストア自由が丘店の建て替え。跡地には2023年に新たな商業施設「(仮称)自由が丘二丁目計画」が登場する予定で、2022年2月27日付でイオンモール株式会社が工事の着工を発表しています。
スーパーマーケットに加え、日々を豊かにするショップ、レストランなどの導入も予定されているそうで、建物のコンセプトは「小径の Green Hill (緑の丘)」だそうです。
ワークスペース登場で変化に期待
商業施設では、線路脇のトレインチ自由が丘の改装も注目したいところ。これは2006年に大井町線車庫跡地に開業した商業施設で、2022年7月から改装工事に入っており、同年11月2日にリニューアルオープンしました。
これまでは商業中心の施設でしたが、今回の改装で、新たに建物2階に(tefu)jiyugaokaという個人が仕事に使えるワークスペースが加わりました。
2022年度に100周年を迎えた東急は、主要な沿線拠点のひとつである自由が丘エリアでの「エリアブランディング」「職・住・遊の機能的配置による活性化」を通じた新しい魅力創出を考えており、その具体化のひとつがこの施設。自由が丘は個人事業主、小規模事務所が多いエリアである一方で、個人が仕事に使えるワークスペースが不足しているとみられたことから、改装を計画したのだとか。新たな機能を持った施設が生まれたことで、街に変化が起きることを期待したいところです。
緑が丘方面に向かう緑が丘二丁目商店会(通称グリーンロード)でも、次々に新しい商業施設が誕生。話題になっています。この通りには自由が丘にはめずらしい大型家電量販店があり、その手前までを中心にしたエリアに近年個性的な小規模店が次々に進出しているのです。
2ヶ所で進むマンション建て替え
商業施設だけではありません。駅から2~3分、物件同士も100メートルほどしか離れていない2ヶ所でマンションの建て替えも始まっています。一方はもともと賃貸住宅だったものを分譲住宅にする計画で、自由が丘のシンボルとも言える九品仏川緑道から見えるほどの立地。人気にならないはずはないでしょう。
もう1軒は、築46年という古いマンションを建て替えるものです。こちらの物件は販売後すぐに完売しており、自由が丘人気の高さをうかがわせます。購入のチャンスがないことは残念ですが、建物が新しくなることで、地域全体として住む人の若返りが進むことを期待しましょう。
住宅街を歩いてみると分かりますが、自由が丘周辺は昭和30年代、40年代などに建てられたマンションも多く、建物の更新がそれほど行われてきていない地域です。しかし、数十年以上が経っていればそろそろ建て替えをと考える例も出て来るはず。今後、動きがあるのではないでしょうか。
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奥沢駅も新しくなった
もうひとつ、駅は別ですが、自由が丘駅から600メートル強ほどしか離れていない東急目黒線奥沢駅が2022年2月に新しくなり、それもあってか、自由が丘から奥沢駅、さらにその先の自由通り沿いにカフェなどの飲食店が目立つようになってきています。自由が丘圏が広がっているとでもいえば良いでしょうか、住みたい人にとっては選択肢が広がっているとも言えそうです。
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以上、見てきたように自由が丘駅前の再開発は単なる始まりにすぎません。これから時間をかけて自由が丘駅周辺は少しずつ変化を続けていくはず。より住みやすく、楽しい街になる自由が丘を期待したいところです。