首都圏新築マンション価格はやっと頭打ち感、中古は上昇続く どこまで上がる? いつ下がる?

首都圏を中心に住宅価格が上がり続けています。特に首都圏の新築マンションに関しては、平均的な会社員ではなかなか手が届かないほどの価格帯になっていますが、2022年度上半期には、久々に前年同期比でダウンとなりました。その変化は中古住宅にも及ぶのでしょうか。首都圏を中心に中古住宅市場の動向を展望してみましょう。

中古マンションの平均価格は9年間で50%以上アップ

住宅価格が上がり続けています。不動産経済研究所の調査によると、2012年には平均4,540万円だった首都圏の新築マンション平均価格が、2021年には6,260万円に上がっています(図表1)。この間の上昇率は約37.9%です。

中古マンションはもっと上がっていて、東日本不動産流通機構(レインズ)によると、2012年には2,500万円だった首都圏の中古マンションの成約価格の平均が、2021年には3,869万円ですから、この間の上昇率は約54.8%に達します。何と1.5倍以上に価格が上がっているのです。

最近でこそ物価の高騰が問題となっていますが、それまでは物価もほぼ横ばいで、収入も増えない状態が続いてきました。住宅価格だけが右肩上がりで推移してきたと言っていいでしょう。

首都圏 マンション平均価格の推移
出典:新築は株式会社不動産経済研究所、中古は公益財団法人東日本不動産流通機構

4人に3人は「マンション価格が高すぎる」と回答

特に、首都圏の新築マンション価格は高くなりすぎていて、平均的な会社員ではなかなか手が届きません。2012年には、4,540万円の新築マンションを4,000万円のローンを組んで購入したとすれば、金利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は11万2,914円でした。総返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)を、より安全な範囲とされる25%とした場合、目安として542万円の年収があれば購入できました。

それが、2021年の平均価格である6,260万円の新築マンションを上の試算の自己資金比率88%に合わせて、5,509万円のローンを組んで買うとなれば、毎月返済額は15万5,511円。目安として必要な年収は746万円にアップします。しかも、金利が上がっているので、1.5%で計算すると毎月16万8,677円の返済額となり、必要な年収は810万円に高まります。全国的にも所得の高い東京都でも平均年収は500万円台とされていますから、平均的な会社員が新築マンションを購入するのは厳しい情勢であると言えるでしょう。

そのため、マンション情報サイトの「住まいサーフィン」の調査によると、10.9%の人が「購入を諦めるほど高い」とし、「購入をためらうほど高い」の62.9%と合わせると、4人に3人近くは、マンション価格が高すぎると回答しているのです。

新築マンション価格は前年同期比5.5%のダウン

マンションに限らず、市場価格は基本的に需要と供給のバランスによって決定されます。高くなりすぎて需要が減退すれば、当然、需給関係が緩んで価格低下の方向に動き始めます。首都圏の新築マンションはまさに今、その段階に差し掛かっているのかもしれません。

不動産経済研究所のデータによると、ついに首都圏の新築マンション価格が下がり始めていることがわかります(図表2)。2021年度上半期(2021年4月~9月)の平均は6,702万円だったのが、2022年度上半期は6,333万円と前年同期比で約5.5%のダウンとなりました。

近畿圏の新築マンションはほぼ横ばいですが、それでもこれまでの上昇一辺倒から様変わりしています。新築マンション市場はそろそろピークアウトする可能性が出てきました。

首都圏 新築マンション供給戸数と平均価格の推移(各年度上半期)・
出典:不動産経済研究所ホームページ

中古住宅市場はまだまだ下がる気配なし

しかし、この新築マンションの価格低下という変化は、今のところ中古マンション市場には及んでいません。中古マンション価格も上がっているとはいえ、新築マンション価格の6割強の価格水準です。「新築は無理でも中古なら購入可能」という人に支えられて、価格が上がり続けているのです。

東日本レインズの調査によると、首都圏の中古マンションの2022年10月の成約価格の平均は4,395万円で、前年同月比約13.1%の上昇でした(図表3)。東日本レインズによると、中古マンション成約価格の前年同月比での上昇は、2020年6月から29ヶ月連続になるそうです。

中古戸建ても同様で、2022年10月の成約価格の平均は3,728万円で、前年同月比約4.4%のアップです。こちらも2020年11月から24ヶ月連続で前年同月を上回りました。

中古マンション、中古戸建てともに長い間上昇が続き、下がる気配はまだまだありません。

首都圏 中古住宅の平均成約価格の推移
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構

在庫と成約の価格乖離(かいり)率はマイナス5.9%

この勢いがどこまで続くのかが気になるところですが、結論から言えば、中古住宅市場はまだまだ活気に満ちており、新築マンションのように価格が低下に向かいそうな気配はありません。

その証拠となりそうなのが図表4です。これは、首都圏の中古マンションの成約価格と在庫価格の1平方メートル当たりの単価の推移を、折れ線グラフにしたものです。2022年10月の数値を見ると、在庫価格が73.77万円で、成約価格は69.40万円。両者の乖離率は成約価格が在庫価格より約5.9%低くなっています。つまり、平均すると在庫価格、つまり市場で売りに出ている物件の平均価格より6%ほど安い価格で契約が成立していることになります。

この乖離(かいり)率は時期によって変化します。直近では2021年11月には約12.9%、2022年2月には約13.3%でした。この時期には在庫価格より13%前後安い価格で契約が成立していたことになります。

首都圏中古マンションの㎡単価の推移
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構

しばらくは価格の上昇が続きそうな情勢

それに比べると、2022年10月の価格乖離率約5.9%とかなり低い水準であり、在庫価格からの値引き率が小さくなっているのではないかとみられます。それだけ中古マンションの需要が高く、在庫物件の売出価格からさほど低くない価格で契約が成立していると考えられます。

もちろん、竣工後の経過年数が長く、維持管理が十分行われていないなどの不利な条件のある物件は1割、2割の値引きが行われているかもしれません。反対に、竣工後の年数が短く、維持管理状態の良い物件だと、売値そのままで契約が行われているケースもあるのではないでしょうか。新築物件が少ないエリアでは、その希少性から、新築の相場より高値で取引される築浅マンションの事例もあるようです。

そのような物件だと、購入希望者が値引きの交渉でもしようものなら、「ほかにも希望者がいるので、そちらと契約します」ということで買えなくなってしまうかもしれません。こうした状況を考慮すれば、中古住宅の価格はそう簡単には下がらないかもしれません。しばらくは価格上昇が続くのではないでしょうか。

ローン金利や物価高騰などの不確定要素も

とはいえ、不確定要素もあります。中古住宅を買うときには、ほとんどの人が住宅ローンを利用しますが、その金利が固定金利型を中心に上がり始めており、いずれは変動金利型の上昇もあり得る情勢です。そうなると、消費者の購入意欲を減退させることになります。しかも、世界的な政情不安のなかで物価の高騰が続いており、生活は一段と厳しくなっています。

それらの要素を考慮すると、中古住宅の価格にも意外に早く下落の波が押し寄せる可能性がないとは言えません。購入や売却を考えている人は、しっかりと先行きを見据えて判断することが重要になりそうです。

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