厚生労働省は、2022年10月26日に実施した「第181回労働政策審議会労働条件分科会」で、給与のデジタル払いを前提とし、労働基準法の一部を改正する省令案を了承しました。これにより2023年4月1日から、給料のデジタル払いが解禁となり、事業者の申請受付が開始となる見込みです。実際に給与のデジタル払いが始まるのはもう少し先になりますが、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
「給料のデジタル払い」をおさらい
「給与のデジタル払い」とは、銀行をはじめとする金融機関の口座を介すことなく、PayPayやLINE Payといったスマートフォンの決済アプリや電子マネーで給与を振り込んでもらうことができる制度のこと。キャッシュレス決済の普及に合わせて、給与の支払いもデジタル化が加速しています。
給与をデジタル払いで受け取るメリットとデメリットとは?
給与がデジタル払いになると、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
【給与がデジタル払いになるメリット】
決済アプリにチャージをする手間が省ける
通常、金融機関の口座に給与が振り込まれたら、ATMで現金をおろしたり、決済アプリに入金したりといった手順を踏む必要があります。デジタル払いになれば、決済アプリにチャージをしなくてもそのまま入金されるため、便利です。入金手数料がかかる決済アプリであれば、手数料負担を軽減することにも繋がります。
給与が受け取りやすくなる
デジタル払いであれば、銀行口座を開設しなくても給与を受け取ることができます。金融機関の口座開設が難しい外国人労働者などにとって、給与を受け取りやすくなります。
また、海外の家族へ送金したい外国人労働者にとっては、海外に送金しやすくなることもメリットでしょう。
給与振り込みの選択肢が広がる
金融機関への口座振り込みからデジタル払いに変更することで、企業側が振込手数料を削減できます。そのため、給与の支払いを月ごとに限定する必要がなくなります。週払いや、フリーランスの場合は案件が完了次第の入金など、事情に合わせたタイミングで迅速に振り込んでもらいやすくなります。
【給与がデジタル払いになるデメリット】
公共料金などの引き落としに対応していない
公共料金の支払いや家賃の引き落としなど、現時点ではデジタル払いで対応できないケースがほとんどです。銀行口座への振り込みや現金化といった手間が生じる可能性が高いでしょう。
口座残高の上限が100万円と定められている
100万円を超える取引が認められていないため、大きな金額のやり取りには適していません。金融機関への振り込みとデジタル払いを併用しなければならないケースも考えられ、その場合はデジタル払いの大きなメリットである手間やコストの削減ができなくなってしまいます。
資金移動業者が破綻した際にリスクがある
金融機関が破綻した場合、「預金保険制度」により、一定額の預金などが保護されます。しかし、デジタル払いを担う資金移動業者は、この制度の対象になりません。万が一経営が破綻した場合、給与が振り込まれなかったり、支払いが遅れたりする可能性があります。
「給与のデジタル払い」にはメリットもデメリットもありますが、デメリットに関しては今後、デジタル払いが普及することで改善される可能性があります。デジタル化の加速にともない、給与のデジタル払いがどれだけ浸透するのか、今後の動向に注目していきましょう。