ふるさと納税をした際の寄付金控除は、年末調整では手続きができません。控除を受けるためには、ワンストップ特例制度を利用するか、確定申告が必要になります。今回は、ふるさと納税の控除手続きについて解説します。
ふるさと納税の控除は年末調整で手続きできない?
会社員などの給与所得者は、年末調整で配偶者控除や生命保険料控除などを受けられます。しかし、ふるさと納税の控除は、年末調整では申請できません。
ふるさと納税は1月1日から12月31日の間に寄附をした金額が控除の対象となる一方、年末調整は12月分の給与で処理されるのが一般的なので、年末調整が行われる時点で寄附金額は確定していません。たとえば、毎月10日締め、25日に給与が支払われる会社であれば、12月10日の締め日の時点では、ふるさと納税の金額が確定していません。これは医療費控除などとも共通しています。
そのため、ふるさと納税の寄附金控除を受けるには、翌年に自分で確定申告を行うか、もしくは後述するワンストップ特例制度を利用する必要があります。
ふるさと納税で寄附金控除を受けるには?
ふるさと納税で寄附金控除を受ける方法は、前述のとおり確定申告とワンストップ特例制度の2つです。それぞれの内容について解説します。
確定申告をする
確定申告とは、1年間の所得が確定したあとに納税額を計算し、税務署へ申告する制度です。納めすぎた税金の還付申告や精算手続きを行うという意味合いもあります。
一般的に、確定申告は事業所得や不動産所得のある人が対象となります。ただし、会社員のような給与所得者でも、年間2,000万円を超える収入があったり、医療費控除や寄附金控除を受けたりする場合は確定申告が必要です。ふるさと納税も寄附金控除の対象であるため、確定申告によって控除や還付を受けることができます。
ワンストップ特例制度を利用する
ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくても、ふるさと納税の控除を受けられる制度です。1年間(1月1日~12月31日)の寄付先が5自治体以内で、年末調整を受ける人であれば利用できます。寄附をした各自治体に対して、期間内に申請書などの書類を提出することにより、翌年の住民税からの税額控除を受けられます。
ただし、ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告をする必要がある人は、ワンストップ特例制度を利用できない点に注意しましょう。
関連記事:会社員は要注意! ふるさと納税で「ワンストップ特例制度」を利用する際の注意事項!
確定申告で控除を受ける場合の手続き
確定申告で税控除を受ける際に必要な書類や期間、流れについて解説します。ワンストップ特例制度を利用できないときは参考にしてください。
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類には以下のものがあります。
・確定申告書
・寄附金受領証明書
・源泉徴収票
・還付金受取用口座番号
・マイナンバーカード、または通知カードと本人確認書類
確定申告書は税務署や確定申告会場などのほか、国税庁のホームページからダウンロードして入手できます。寄附金受領証明書は、寄附を行った自治体から送付されるものです。源泉徴収票は勤務先の会社から支給されます。還付金受取用口座番号は、還付金の振込先となる本人の口座情報です。
また、マイナンバーカードがあれば1枚で本人確認が可能ですが、持っていない場合は通知カードと本人確認書類(運転免許証や健康保険証など)が必要になります。
確定申告の期間
確定申告には税金の過不足を精算するという意味合いがあるため、税金を納めすぎていれば還付される一方、不足分があれば追加納税をしなければなりません。還付申告は、ふるさと納税を行った翌年の1月1日から5年間申請できます。
たとえば、2022年にふるさと納税を行った際の申請期間は、2023年1月1日から2027年12月31日までです。2027年の還付申告で、2022年度のふるさと納税までさかのぼって対象になるということです。
ただし、副業などで追加納税がある場合は、通常の確定申告期間(翌年2月16日から3月15日まで)での申告が必要です。
確定申告の流れ
確定申告の流れは次のとおりです。
1.必要書類を準備する
2.確定申告書を作成する
3.確定申告書を提出する
4.所得税の還付金が振り込まれる
5.住民税から控除される
前述した必要書類(寄附金受領証明書など)を準備したのち、確定申告書を作成します。手書きでも作成できますが、国税庁ホームページ内の「確定申告書等作成コーナー」を利用するほうが簡単に作れるでしょう。
次に、作成した確定申告書を、管轄の税務署へ郵送または持参して提出します。もしくはe-Taxで電子申請する方法もあります。所得税の還付金が振り込まれるのは、確定申告をしてからおよそ1ヶ月~1ヶ月半後です。さらに、6月から翌年の5月まで、納めるべき住民税から税額控除されます。
ワンストップ特例制度で控除を受ける場合の手続き
続いて、ワンストップ特例制度で控除を受ける際の手続きとして、必要な書類や申請期限、流れについて解説します。
ワンストップ特例制度に必要な書類
ワンストップ特例制度に必要な書類は以下のとおりです。
・寄附金税額控除に係る申告特例申請書
・マイナンバーカード、または通知カードと本人確認書類、またはマイナンバーが記載された住民票の写しと本人確認書類
特例申請書は、基本的に寄附先の自治体から「寄附金受領証明書」とともに郵送されてきます。紛失したときは、インターネットからダウンロード可能です。
マイナンバーカードは表面と裏面のコピーが必要です。もしくは通知カードのコピーと本人確認書類のコピー、またはマイナンバーが記載された住民票の写しと本人確認書類のコピーでもかまいません。本人確認書類には運転免許証やパスポート、健康保険証、年金手帳などがあります。
ワンストップ特例制度の申請期限
ワンストップ特例制度の申請期限は、ふるさと納税を行った翌年の1月10日必着です。申請書の提出が間に合わなかった場合は、確定申告をする必要があるので注意しましょう。
また、寄附金の受領日が12月31日に間に合わなかった際は、翌年分のふるさと納税として扱われます。
ワンストップ特例制度の流れ
ワンストップ特例制度の流れは次のとおりです。
1.特例申請書を取り寄せ、必要事項を記入する
2.必要書類を準備する
3.特例申請書と必要書類を提出期限までに寄附をした自治体あてに郵送する
4.住民税の控除を受ける
寄附をした翌年の5月〜6月以降に通知が届き、住民税の税額控除が適用されます。
まとめ
ふるさと納税による寄附金控除は、年末調整での手続きができません。給与所得者で1年間の寄附先が5自治体以内の人は、期間内に申請書などの書類を提出することにより、ワンストップ特例制度を利用できます。
ワンストップ特例制度を利用できない人は確定申告が必要になりますが、還付申告の場合は、ふるさと納税を行った翌年の1月1日から5年間、申請が可能です。