自らの収入で家族を養っている人であれば、扶養控除や配偶者控除を受けることで税金が安くなる場合があります。これらの控除は所得控除の一種で、一般的な給与所得者なら年末調整で申請が可能です。
この記事では、扶養控除や配偶者控除とはどのようなものなのか解説するとともに、控除を受けるための条件や申請方法についても紹介していきます。
扶養控除とは?
扶養控除とは、所得税法上の扶養控除対象親族を養っている納税者について、対象親族の区分に応じた一定の所得控除が受けられるという制度です。
通常、養わなければならない家族の数が多い納税者ほど、経済的に大きな負担を強いられます。こうした納税者の税負担を軽くするために設けられているのが扶養控除です。対象となる親族の要件や申請方法については、この後の項で詳しく解説していきます。
たとえば、16歳以上18歳以下の高校生の子どもAと、19歳以上22歳以下の大学生の子どもBと同居している世帯を例に見てみましょう。
子どもAは一般の控除対象扶養親族にあたるので、所得税については38万円が所得控除額となります。子どもBは特定扶養親族にあたるため、所得税の控除額は63万円です。また、住民税にも扶養控除があり、控除額は一般扶養親族が33万円、特定扶養親族は45万円です。
つまり、夫婦の一方のみが給与所得者として働いている場合、子どもA・Bを合わせて、所得税であれば101万円(住民税は78万円)の所得控除が受けられます。
この際、所得税率が10%だと所得税の節税効果は10.1万円ですが、20%だと20.2万円となります。
つまり、税率が高い=所得の高い人ほど節税効果は高いといえます。
扶養控除の対象となる親族の条件とは?
続いて、扶養控除の対象となる親族の条件について詳しく見ていきましょう。扶養控除を受けるには、次の条件をすべて満たした親族を養っている必要があります。
配偶者以外の6親等内の血族および3親等内の姻族であること
納税者本人から見て親や子は1親等、兄弟姉妹や祖父母は2親等、曽祖父母は3親等となりますが、自身の血族であれば6親等まで扶養控除に入れることができます。配偶者の血族である姻族については、3親等までが控除対象となります。
ちなみに、夫婦共働きなど世帯に納税者が複数いる場合、少しでも所得の高い人が扶養控除を受けるほうがお得です。
16歳以上であること
15歳以下の子どもがいる場合は、児童手当の対象であるため、扶養控除対象となる親族には16歳以上という条件があります。
なお、児童手当を受け取るには申請が必要で、所得制限が設けられています。申請できていなかったり、所得制限によって児童手当を受け取れていなかったりしたとしても、扶養控除の対象には含まれないので注意が必要です。
納税者と同一生計であること
納税者と同じ生計であればよいため、必ずしも同居していなくても構いません。たとえば、仕送りを受けている学生や老人ホームに入居している高齢者なども、生計が同一であることが証明できれば扶養控除の対象になります。
年間の合計所得が48万円以下であること
扶養控除対象親族は、事業所得や給与所得などを合計した所得額が48万円以下でなければなりません。対象親族の収入が給与所得のみであれば、年間の合計所得が103万円以下である必要があります。
青色申告者の専業専従者として給与支払いを受けていないこと
個人事業主の納税者が青色申告者であり、その事業のみに従事し、納税者から専従者給与を受け取っている親族は控除対象外です。また、白色申告者の事業を専従的に手伝って事業専従者控除を利用している親族も控除対象になりません。
いずれの場合も、重複して控除を受けることはできません。
また、青色申告の青色事業専従者給与を扶養控除の金額より高く設定する、もしくは、白色申告の事業専従者控除(配偶者の場合は86万円、それ以外は50万円)を利用した方が節税効果は高くなります。
扶養控除の申請方法
扶養控除の申請は、一般的な給与所得者であれば年末調整で対応できます。ただし、給与年収が2,000万円を超えている人や副業で一定以上の収入がある人などは、確定申告で処理する必要があります。
年末調整で対応する際には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出しましょう。この書類で必要事項を申告すれば、年末調整で扶養控除を受けられます。
ただし、非居住者である親族に係る扶養控除を受ける場合には、その非居住者が親族であることを証明する書類や、当該親族に対する送金を証明できる書類の添付が求められるケースがあります。
また、勤労学生控除や障害者控除などに該当する場合には、学校に在籍していることを証明する書類や障害者手帳などの提示を求められる可能性もあるため、手元に用意しておきましょう。
配偶者控除・配偶者特別控除とは?
扶養控除は配偶者以外の扶養対象親族を対象とするものですが、条件を満たす配偶者を扶養している納税者は配偶者控除・配偶者特別控除を受けられます。
配偶者控除とは、年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は収入103万円以下)の配偶者を扶養する納税者であれば、所得控除が受けられるという制度です。
また、配偶者の合計所得金額が48万円を超える場合でも、133万円以下であれば所得金額に応じた所得控除を受けられます。これを配偶者特別控除と呼びます。
配偶者控除・配偶者特別控除とも、控除を受ける納税者の所得金額が1,000万円以下(給与所得のみの場合は収入1,195万円以下)でなければなりません。なお、所得金額が900万円超(給与所得のみの場合は収入1,095万円超)になると、段階的に控除額が減額されるため注意が必要です。
例として、納税者の合計所得額が800万円、配偶者(70歳未満)の合計所得が30万円の場合を見ていきましょう。このケースでは配偶者控除の対象となり、納税者の所得から所得税であれば38万円(住民税は33万円)が控除されます。
所得税の配偶者控除38万円×所得税率23%=8.74万円分と、住民税の配偶者控除33万円×住民税率10%=3.3万円、合計12.04万円分の節税が可能です。
配偶者控除・配偶者特別控除の対象となる本人・配偶者の条件とは?
配偶者控除・配偶者特別控除の対象となる配偶者の条件は次のとおりです。
民法で認められた配偶者であること
配偶者控除を受けるには、婚姻届を受理された民法上の配偶者でなければなりません。内縁関係や事実婚状態の人については対象外です。
納税者と同一生計であること
扶養控除と同様、配偶者が必ずしも同居している必要はありません。たとえば、納税者が単身赴任で配偶者へ仕送りを送っている場合でも、同一生計と認められれば配偶者控除を受けられます。
合計所得が一定の範囲内であること
先述のとおり、配偶者控除を受けるには配偶者の合計所得が48万円以下(給与所得のみであれば収入103万円以下)でなければなりません。合計所得が48万円超133万円以下なら配偶者特別控除の対象となりますが、133万円を超えると控除を受けられません。
青色申告者の専業専従者として給与支払いを受けていないこと
扶養控除と同じく、青色申告者の事業に専従的に関わり、事業主から収入を得ている配偶者は控除対象外です。白色申告者の事業を専従的に手伝っている配偶者も控除の対象になりません。
納税者本人の所得制限
配偶者控除・配偶者特別控除は、納税者本人の所得制限が設けられている点も特徴です。
前述のとおり、控除を受けるには納税者の所得金額が1,000万円以下(給与所得のみでは収入1,195万円以下)でなければならず、所得金額が900万円を超えると段階的に控除額が減額されます。
配偶者控除・配偶者特別控除の申請方法
年末調整の対象となる給与所得者であれば、配偶者控除・配偶者特別控除とも年末調整で対応可能です。
年末調整の際「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」に必要事項を記入して勤務先に提出すれば、配偶者控除もしくは配偶者特別控除を受けられます。
原則、配偶者控除・配偶者特別控除とも添付書類は必要なく、配偶者の収入額を証明する書類の提出も求められません。ただ、申告書記入の際に配偶者の収入額に関する情報が必要となるため、事前に配偶者の源泉徴収票などを準備しておきましょう。
まとめ
扶養控除も配偶者控除・配偶者特別控除も、年末調整の対象となる給与所得者なら、年末調整時に勤務先へ申告書を提出するだけで控除を受けることができます。特に扶養控除は所得制限がなく、対象となる親族の範囲も広いので、実際は対象となるのに申請しそびれているという人も多いのではないでしょうか。
どちらも高い節税効果が期待できるため、条件を満たす親族や配偶者がいる場合には、漏れなく申請して控除を受けるようにしましょう。