渋谷区の住宅購入予算はどれぐらい? 100年に一度の再開発が進む街のおすすめ駅3選

渋谷を訪れるたびに、街の変化の大きさに驚かされます。渋谷駅直結の地上47階建ての超高層複合ビル「渋谷スクランブルスクエア」や「渋谷ヒカリエ」などの高層ビル群。代々木公園を見晴らす地上39階建てのマンション「パークコート渋谷 ザ タワー」と渋谷区の新庁舎。宮下公園を屋上に移設した複合商業施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタ パーク)」。渋谷駅を中心に、100年に一度とも言われる再開発が進行中です。

さらに、渋谷区には原宿や恵比寿といったおしゃれなトレンドスポットも。都市に潤いをもたらす代々木公園や明治神宮の森など豊かな自然もあります。今回は、街が大きく進化する渋谷区の住宅事情と筆者おすすめの街を紹介します。

にぎわいある商業地と起伏ある地形が創り出す魅力的な街

武蔵野台地の東部にある渋谷区は、東京23区の西南に位置し、東側に新宿区や港区、北側に品川区、目黒区、西側に世田谷区、中野区、杉並区などの行政区に接しています。渋谷という名前が示すように渋谷川によってできた谷があり、千駄ヶ谷、代々木・幡ヶ谷、西渋谷、東渋谷などの台地がそのまわりに位置します。

明治神宮・代々木公園という大きな緑地が中心部にあり、新宿御苑の一部を加えると、区の約10分の1を緑地が占めることになります。東京23区のうち、区の面積に対し都市公園などが占める面積の割合は、江戸川区、千代田区、江東区に次ぐ高い比率です。

鍋島松濤公園
渋谷区松濤にある鍋島松濤公園(写真素材:PIXTA)

1657年の明暦の大火以降に江戸の町は拡大しましたが、この頃に渋谷の町も発展しました。江戸城下に近かったこともあり、武家屋敷も多くありました。明治初期には、屋敷跡で茶の栽培も行われたようで、渋谷区有数の邸宅街として知られる松濤(しょうとう)は、「松濤園」という茶園が地名の由来となっています。

1885年の渋谷駅開業以降、街の成長が始まります。明治後期には玉川電鉄や東京市電が通り、人の往来も拡大し市街化も進みました。その後、現在の東急東横線や京王井の頭線が開業し、さらに発展。戦後は、1950年代(昭和30年ごろ)から高層ビルが建設され、商業・ビジネスの中核都市として成長。1964年の東京五輪開催を契機に道路の新設や拡張で街並みも大きく変わり、1965年には、渋谷区総合庁舎や渋谷公会堂が完成しました。

1973年に渋谷パルコが開業、原宿の竹下通りなどもにぎわいが生まれ、1990年代にはファッションや文化の中心地として多くの若者を集めました。商業地としての発展は、渋谷駅周辺に限らず、ビール工場跡地が恵比寿ガーデンプレイスとして再開発された恵比寿や代官山、明治神宮の参道でもある表参道などでも見られます。区内の随所に個性的で魅力あふれるスポットが広がっています。

原宿駅前
原宿駅前(画像素材:PIXTA)

渋谷区の人口は、高度成長期以降から減少トレンドにありましたが、都心回帰の高まりで増加に転じ、2022年11月1日時点で22万9,634人となっています。

【渋谷区のデータ】
総面積…15.11平方キロメートル
人口…22万9,634(2022年11月1日時点)
世帯数…14万0,755(2022年11月1日時点)

95%以上が「住み続けたい」 渋谷区の魅力は多様性・文化発信

人口増加トレンドにある渋谷区は、住み続けたい街として住民から評価されています。渋谷区が実施した令和3年度区民意識調査によれば、渋谷区の定住意向について「ずっと住み続けたい」が48.7%で最も高く、「できれば住み続けたい」(46.5%)を合わせると95%超に。「転出したい」とした人は、5%未満にとどまっています。

同調査による渋谷区のイメージとして、「交通の利便性がよい」(79.0%)、「飲食店が充実」(59.6%)、「多様性を受け入れている街である」(53.3%)、「流行や文化、情報の発信地である」(51.0%)などが上位にランク。交通利便性に加え、飲食店の充実や多様性、文化・情報の発信地であることが評価されているようです。

渋谷駅前のスクランブル交差点
渋谷駅前のスクランブル交差点(画像素材:PIXTA)

駅別乗降人数2位の渋谷駅のほか、区内にも多数の鉄道路線

渋谷区の交通利便性の高さは、その中心となる渋谷駅の乗り入れ路線を見れば理解できます。

JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン、京王井の頭線、東急田園都市線・東横線、東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線。東京都統計年鑑(平成30年度)による駅別乗降人数は、新宿駅に次ぐ2位となっています。さらに区内には、東京メトロ千代田線・日比谷線、小田急線、京王線、京王新線、JR総武線なども通っており、高い交通利便性を誇ります。

渋谷区の地域図
渋谷区の地域図(出典:渋谷区 まちづくりマスタープラン2020

商業施設が集まるトレンドの中心地

多彩な商業施設や飲食店が利用できる商業利便性の高さも渋谷区の魅力です。渋谷駅では、渋谷ヒカリエや渋谷マークシティ、渋谷109といった商業施設に加え、渋谷スクランブルスクエア、渋谷フクラスなど建て替えによる新たな商業スポットが誕生。1973年のオープン以来、トレンド発信基地でもあった渋谷パルコは、2019年「渋谷PARCO」として19階建てのビルに建て替えられました。

また、渋谷センター街には多彩な飲食店、居酒屋、レストラン、バーなどが集積し、多くの人が集まる交流の場ともなっています。

渋谷の街並み
「渋谷PARCO」(中央)など渋谷の街並み(画像素材:PIXTA)

外国人旅行者にも人気の魅力的な街

面で街が広がっているのも渋谷の魅力。明治通りを経由して原宿や恵比寿方面に、246号線沿いは、宮益坂を抜けて表参道方面へと続きます。1駅で街の雰囲気も異なり、渋谷区は区民がイメージする「多様性を受け入れ」、「流行や文化、情報の発信」する街と言えるでしょう。なお、渋谷区では、「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を未来像として掲げています。

MIYASHITA PARK
複合商業施設MIYASHITA PARK(筆者撮影)

コロナ禍前は、多くの外国人旅行客が渋谷区を訪れました。東京都が実施した「平成30年国・地域別外国人旅行者行動特性調査報告書」によれば、旅行で渋谷を訪ねた人は、44.3%で都内4位。なかでも、欧米系の人に人気がありアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、オーストラリアなどの国で訪問先として渋谷は1位になっています。

また、渋谷を訪ねて満足した項目として、「服・服飾雑貨のショッピング」、「高層ビル、近代的な街並み・景観・建築物の探索」、「日本食を楽しむ」が上位に来ています。外国人から見ても、渋谷の文化や食は魅力的なようです。

再開発が今後も続く渋谷区 代々木公園などの豊かな自然も

渋谷区では、渋谷駅を中心にこれからも再開発で街が生まれ変わります。

現在進行中の市街地再開発事業は、渋谷駅桜丘口地区、渋谷二丁目17地区、道玄坂二丁目南地区、渋谷二丁目西地区など渋谷駅周辺の複数の街区に及びます。さらに、道玄坂にあった旧「ドン・キホーテ渋谷店」跡地には、地上28階建ての大型複合施設「道玄坂通 dogenzaka-dori」が建設中。商業店舗、オフィス、ホテルなどが入る予定です。

渋谷駅周辺エリア
開発が進む渋谷駅周辺エリア(筆者撮影)

3街区からなる桜丘口地区の開発では、商業やオフィス空間の創出に加え、マンションを併設して居住環境を充実させています。多言語対応の国際医療施設、サービスアパートメント、子育て支援施設など、グローバル対応の生活支援施設も設置されます。道路や歩行者動線が整備されることで、より回遊性の高い居心地の良い街への発展が期待できます。

渋谷駅中心地区
渋谷駅中心地区(2022年9月撮影)(出典:東急不動産ニュースリリース

渋谷の未来像の一端が感じられるのが、渋谷区立宮下公園を再生したMIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)。渋谷から神宮前に続く、全長約330メートルの複合商業施設で、渋谷と原宿方面を結ぶ動線になっています。新しくなった渋谷区立宮下公園には、スケートボードとインラインスケートを楽しめるスケート場やボルダリングウォールに加え、多目的運動施設を新設。芝生ひろばは約1,000平方メートルもあり、区民や訪れる人の憩いのスポットになっています。

宮下公園
宮下公園(筆者撮影)

また、代々木公園や明治神宮の杜など憩いの場が区内に豊富にあるのも渋谷区の魅力です。代々木公園は、23区内5番目となる54万平方メートル超の広さを持つ憩いのスポット。森林公園と陸上競技場、野外ステージのあるエリアに分かれています。1964年の東京五輪の選手村だった場所には、当時に植えられた樹木が今も訪れる人を癒やしています。

代々木公園
代々木公園内(筆者撮影)

明治神宮へと続く表参道の美しいケヤキ並木も渋谷区の人気スポット。冬は、ライトアップされたケヤキ並木のイルミネーションを多くの人が楽しみます。表参道のある神宮前エリアは、地区計画によって住環境の保全に努めています。同潤会青山アパートの建て替えで誕生した表参道ヒルズは、多くの人に親しまれた姿を継承しつつケヤキ並木の景観に配慮した街並みに調和した計画になっています。

明治神宮
明治神宮の参道(画像素材:PIXTA)

神宮前、松濤、猿楽町など高級住宅街がある渋谷区

渋谷区は、千代田区や港区と並ぶ高級住宅街のある街です。令和4年都道府県地価調査では、渋谷区神宮前三丁目の地点が住宅地の基準地価格高順位表(全国)で全国9位にランクインしています。

表参道の並
表参道の並木道(画像素材:PIXTA)

住宅街として有名な場所は、表参道が最寄り駅となる神宮前に加え、広尾や恵比寿西、猿楽町、鉢山町といった代官山駅周辺も人気があります。また、代々木公園に近い代々木や富ヶ谷といったエリアも高級住宅街として知られています。旧鍋島藩の茶畑がのちに分譲地となった松濤は、渋谷区立鍋島松濤公園の周辺に広大な敷地の豪邸が立ち並び、首都圏有数の邸宅街となっています。

また、広尾は、広尾ガーデンヒルズに代表される高級マンションのある街としても知られています。広尾ガーデンヒルズは、緑豊かなゆとりあるランドスケープデザインが特徴で、意識の高い住人による徹底した住環境の整備、保全により、築35年超とは思えない美しい佇まいです。

広尾ガーデンヒルズ
広尾ガーデンヒルズの外観(画像素材:PIXTA)

高級住宅街の土地価格は、流通も少ないこともあり数億円を超えることもめずらしくありません。好立地の売り物件を探すのが難しいエリアの一つと言えるでしょう。一方、マンションは、新築・中古ともに一定数の分譲・流通があります。新築マンションは、1億円を超える住戸の販売が中心のため、購入予算を重視するなら中古マンションも並行して検討することをおすすめします。

渋谷区は商業集積地や緑地面積が広く、マンション用地は限られます。また、市街化がいち早く進んだこともあり、築年数の古いマンションの老朽化が課題になっています。区内ではマンションの建て替えの動きも見られ、いくつものマンション建替組合が認可されています。その一つが宮益坂ビルディングの建て替えプロジェクトである「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」です。

宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス
「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」の外観(プレスリリースより)

宮益坂ビルディングは、1953年に東京都が分譲した日本初の分譲マンション。建て替え事業によって、1階から4階には店舗と事務所、5階から15階は全128戸の住宅となりました。ヒカリエのデッキに接続し、駅への動線がスムーズ。ガラスファサードの外観は、宮益坂のケヤキの街路樹に面した視認性の高い立地にふさわしく、変化する渋谷の街に調和しています。

そのほか、渋谷や広尾などでマンション建替組合の設立が認可されており、今後も好立地でのマンション分譲が期待できそうです。

続いて渋谷区の筆者おすすめの街を紹介します。

ホッとくつろげる魅力的なサードプレイスが多数 おしゃれな街、代官山・恵比寿

一つ目が代官山・恵比寿エリアです。

代官山T-SITE
代官山T-SITE(画像素材:PIXTA)

代官山と恵比寿は、ともにおしゃれスポットが豊富な人気の街。代官山-恵比寿間は直線距離で約600メートルと、歩いてアクセスできる近さです。ほぼ同じ生活圏ですが、街の雰囲気は代官山が位置する東急東横線北側のエリアと恵比寿が位置する南側エリアでは雰囲気が異なります。

北側のエリアは、猿楽町や鉢山町といった邸宅が並ぶ落ち着いた住環境。同潤会代官山アパートの建て替えプロジェクトで生まれた代官山アドレスの先には、中・低層のマンションや戸建てのある住宅街が広がります。蔦屋書店を中心とした生活提案型の商業施設、代官山T-SITEや代官山ヒルサイドテラス、かつての東急東横線の線路跡地に造られたLOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)など、多彩なお店が集まるスポットが豊富にあります。

代官山アドレスと恵比寿の住宅街
代官山アドレスと恵比寿の住宅街(筆者撮影)

一方、恵比寿駅周辺は、恵比寿ガーデンプレイスや駅ビルのアトレ恵比寿など商業ビルや商店街が広がり、飲食店なども豊富にそろっています。両駅とも渋谷へ1駅で、渋谷駅周辺にも出かけやすいロケーションです。恵比寿駅周辺は商業地域が広がり、高層マンションの供給が中心となっています。

恵比寿ガーデンプレイス
恵比寿ガーデンプレイス(画像素材:PIXTA)

人気のエリアだけに、新築マンションの分譲は代官山、恵比寿とも限られます。分譲タイプとしては、邸宅街のある代官山エリアは3LDKタイプの広い専有面積の分譲が中心。恵比寿エリアは、1Rや1LDKなど単身向けマンションの供給も見られます。また、中古物件の流通件数は多いものの、築年数の古いマンションが中心。築浅で2LDKタイプ以上の広さを求めるなら1億円程度の予算は必要になります。

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代官山駅恵比寿駅

子育て環境も充実 閑静な邸宅街が広がる代々木上原

二つ目に紹介するのが代々木上原エリアです。小田急線と東京メトロ千代田線が利用できるターミナル駅。千代田線の始発駅でもあり、赤坂や大手町方面への通勤に便利な場所です。上原、西原などの高級住宅街としても知られ、渋谷区立代々木大山公園などの憩いのスポットも豊富。広大な代々木公園までも約1キロメートルの近さです。

代々木上原の邸宅街
代々木上原の邸宅街(筆者撮影)

代々木上原はグルメの街でもあり、イタリアンやフレンチなど多彩なレストランや和食の名店も。ベーカリーやスイーツのお店や、カフェなどくつろげる空間が豊富にあります。また、東京大学の駒場キャンパスが徒歩圏にあるなど、文教地区のイメージも。代々木インターナショナルスクールなど保育・教育施設もあり、子育て環境も充実しています。

代々木上原の邸宅街
代々木上原の邸宅街(筆者撮影)

新築マンション分譲は近年続いているものの、価格は3LDKタイプで1億円を大きく上回ります。中古マンションの流通も活発ですが、70平方メートル超の広さを求めるなら1億以上の予算が必要でしょう。

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商業・レジャースポット充実 活気あふれる渋谷

三つ目に紹介するのが渋谷駅周辺です。

渋谷駅は、すでに述べたとおり新たな商業スポットが次々に誕生している活気あふれる街。ホテルやサービスアパートメントの建設も進んでいて、外国人が多く訪れる多様性のある街としての発展が期待できます。映画館やレストラン、カフェなどオフタイムを楽しめる場がこれだけそろう街は少ないでしょう。

宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス
ヒカリエデッキとつながる「宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンス」の外観(筆者撮影)
パークコート渋谷 ザ タワー
「パークコート渋谷 ザ タワー」の外観(筆者撮影)

渋谷駅周辺に住拠点を構える魅力は、移動のしやすさ。JR各線、京王井の頭線、東急田園都市線・東横線、東京メトロ各線といった、首都圏を結ぶ鉄道を利用して都内各所へ出かけるのもスムーズです。また、渋谷駅を中心に代官山、原宿、恵比寿、表参道へ街が広がっているため、徒歩やタクシーで気軽にアクセスできます。

マンション立地としては、松濤エリアや神宮前エリアなどの住宅地のほか、商業地で供給が見られます。新築マンションの分譲は限られますが、中古マンションのストックが多く、リノベーション済みの中古マンションもあります。コンパクトマンションを探すなら中古マンションに目を向けるのもよいでしょう。

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渋谷駅では防災性強化の動きも

豊かな自然を残しつつ、再開発が活発な渋谷区ですが、留意したいポイントとして一部の地域の浸水リスクが挙げられます。台地と低地が混在している渋谷区は、浸水想定が1メートルから3メートルの地域も見られます。ハザードマップをよく確認しましょう。

渋谷駅の東口広場の再開発にあたっては、地下に約4000立方メートルの雨水を一時的に貯水できる施設を2020年に完成。こうした水害リスクへの備えを強化しています。再開発にともない街の防災力が強化されている点は、渋谷区で暮らす人にとって心強いでしょう。

渋谷区のまちづくりマスタープランには、基本構想のもとになる価値観に「成熟した国際都市」、「ダイバーシティとインクルージョン」、「共助・サステナビリティ」を掲げています。多様性をエネルギーに変えていく持続可能な渋谷区の街づくりは、もっと住み続けたい街へとさらに進化するのではないでしょうか。

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