「認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター」が2021年に行った移住に関する調査によると、移住先として地方を希望している人は推計309万人でした。移住希望者に、移住の検討とコロナ禍の因果関係を尋ねたところ、関係があると回答した人は3割にとどまり、7割は新型コロナとは関係なく移住を考えていることがわかりました。
この調査からも、地方移住は一過性のブームではなく、今後も増え続けていくことが推察されます。今回は青森県への移住にフォーカスして紹介します。
出典:認定NPO法人ふるさと回帰支援センター 首都圏の地方移住希望者は推計309万人
青森県の基本情報
東北6県の内の1県で、本州の最北端に位置する青森県の基本情報を紹介します。
人口
青森県の人口は2022年8月1日現在の推計で120万6,193人です。都道府県ランキングでは第31位になります。
県内の市町村別で最も人口が多いのは青森市で26万9,079人、次いで八戸市の21万9,107人、弘前市の16万4,527人になります。
県土
青森県の面積は、9,645.95平方キロメートルで全国第8位の広さです。岩手県と秋田県に隣接し、東は太平洋、西は日本海に面しています。また、県中央には八甲田山がそびえ立ち、日本海側には白神山地や津軽半島、太平洋側には六ヶ所村や下北半島があります。
出典:国土地理院 令和4年全国都道府県市区町村別面積調(7月1日時点)
気候
青森県は、県の中央部に位置する奥羽山脈により県内が津軽地方と南部地方に二分され、それぞれの地域によって気候は大きく異なります。冬は全市町村が豪雪地帯に指定されるほどの降雪量です。日本海側の津軽地方では冷たく湿った空気が奥羽山脈にぶつかるため大雪になる一方、太平洋側の南部地方は乾燥した晴天の日が多くなるのが特徴です。
夏は太平洋側が冷たく湿った偏東風(ヤマセ)により低温多湿の日が多くなり、日本海側では比較的夏らしい日が多くなります。
県内総生産・県民所得
青森県の県内総生産(実質)は2019年度で4兆4,476億円です。県民所得は3兆2,918億円、1人当たりの県民所得は262万8,000円になります。1人当たりの県民所得は、1人当たりの国民所得の82.6%です。
県の基幹産業は農林水産業であり、食料自給率はカロリーベースで全国第4位、生産額ベースでは第3位にランクインするなど、国内有数の食料供給県です。
青森県の地域区分
先述したように、青森県は南部地方と津軽地方の二つに大きく区分されます。さらに、南部地方は下北、上北、三八の三地域に、津軽地方は東青、中南、西北の三地域に分けられるので、合計六つの地域があることになります。
それぞれの地域の特色を紹介します。
下北地域
下北地域はむつ市、下北郡(大間町、東通村、風間浦村、佐井村)からなる地域で、四方を海に囲まれ、日本三大霊場の一つ「恐山」をはじめとする山や温泉などがあります。漁業が盛んで、なかでも「大間まぐろ」は高値で取引される最高級のブランド魚です。
上北地域
十和田市、三沢市、上北郡(横浜町、おいらせ町、七戸町、東北町、野辺地町、六ヶ所村、六戸町)が上北地域になります。県の東部に位置し、北は陸奥湾、東は太平洋に面し、西には奥羽山脈があります。農畜産業が盛んで、にんにく、ごぼうは全国1位、ながいもは全国2位の出荷量です。十和田湖と奥入瀬渓流などの観光地もあります。
三八地域
八戸市、三戸郡(階上町、五戸町、三戸町、新郷村、田子町、南部町)からなる三八地域は、太平洋側の東南端に位置し、南は岩手県、西は秋田県に接しています。夏は冷涼なヤマセが吹くものの、秋冬は小雪多照であり、起伏のある地形を活かした農畜産業が盛んです。
東青地域
県庁所在地の青森市、東津軽郡(平内町、今別町、蓬田村、外ヶ浜町)からなる東青地域は、県内最大の商業集積地です。津軽半島北東部から陸奥湾に突起した夏泊半島にかけて、すべての市町村が海に面し、夏が短く冬は降雪量が多い積雪寒冷地域になります。青森市で開催される「青森ねぶた祭」は、全国屈指の集客を誇る夏祭りです。
中南地域
中南地域は、弘前市、黒石市、平川市、中津軽郡(西目屋村)、南津軽郡(藤崎町、大鰐町、田舎館村)からなり、東の八甲田連峰、西の岩木山など山々に囲まれた盆状地形で、比較的温暖な地域です。米とりんご生産が盛んな県の主要農業地帯であり、りんごの生産量は全国1位です。
西北地域
五所川原市、つがる市、西津軽郡(鰺ヶ沢町、深浦町)、北津軽郡(板柳町、鶴田町、中泊町)からなるのが西北地域です。日本海側に位置し、夏は高温多湿で冬は多雪、年間を通じて比較的気温が高いのが特徴です。農林水産業が盛んで、世界自然遺産に登録されている「白神山地」をはじめとする自然資源にも恵まれています。
青森県へ移住する魅力
ここからは、青森県への移住を希望する人に向けて、青森の魅力について紹介します。
おいしい食べ物と豊かな食文化
青森県といえば、真っ先にりんごを思い浮かべる人もいるでしょう。それもそのはずで、青森県は国内のりんごの6割以上を生産し、その生産量は日本一を誇っています。りんご以外に、にんにくやながいもなども名産です。
さらに、三方を海に囲まれているので海産物も豊かで、なかでもイカやホタテ貝は全国トップのシェアです。「大間まぐろ」で知られるクロマグロやサケも全国屈指の漁獲量を誇っています。
青森県は、地域色豊かな食文化も発達していて、ウニとアワビの潮汁「いちご煮」や、南部地方の「せんべい汁」は農林水産省の「郷土料理百選」に選定されています。このほか、沿岸地帯の「ホタテ貝焼き味噌」、津軽地方の「けの汁」、下北地方の「べこもち」など、多数の郷土料理があります。
レジャー、スポーツを満喫できる
自然豊かな青森県では、さまざまなアウトドアのレジャーやスポーツが楽しめます。夏は川や湖でのカヌーやカヤック、山ではハイキングやパラグライダー、乗馬などができますし、冬はスキーやスノーボードなどのウインタースポーツができます。
子育てしやすい環境
青森県は、全国でも屈指の子育てしやすい環境が整っている県です。少子化対策の一環として、国や各自治体では保育所などの待機児童を減らすための施策を行っています。そのため、ここ最近では減少傾向にある待機児童ですが、全国にはいまだに2,944人(2022年4月時点)もいます。
一方で、青森県の待機児童数は0です。青森県は、0~5歳の人口1万人当たりの認定こども園の認可・認定件数が49.8件で全国1位になっています(2015年度国政調査)。また、学童保育も充実していて、小学校1年生~3年生の学童保育入所割合は39.5%で全国11位です(2018年 全国学童保育連絡協議会 学童保育(放課後児童クラブ)の実施状況調査)。
子育てしやすい環境が整っている青森は、女性が活躍している県でもあります。都道府県別の女性社長比率では第3位ですし、管理職(会社役員・管理的公務員など)に占める女性の割合や、育児をしている女性の有業率も上位にランクインしています。
出典:厚生労働省 保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)
出典:帝国データバンク 特別企画:青森県「女性社長」分析調査(2021 年)
青森県の移住支援
青森県では、さまざまな移住支援制度を設けて県外からの移住を促進しています。青森県の主な移住支援策を紹介します。
移住支援金
まずは、移住支援金です。東京23区内に在住していた人、または東京圏に在住し東京23区内に通勤していた人が、青森県に移住・就業した場合、世帯で最大100万円、単身で最大60万円の移住支援金を受給できます。
居住要件や就業要件などがあるため、詳細はホームページなどで確認してください。また、すべての要件を満たしたうえで、申請書と必要書類を市町村に提出する必要があります
青森市では、支援金を拡充して、「新しい働き方移住支援金」や「リモートワーク活動支援金」も設けています。
出典:青森県 東京圏から青森への移住・就業で、最大100万円を支給します!~あおもり移住支援事業~
東京のアンテナショップでの情報発信
東京の赤坂にある青森県のアンテナショップ「AoMoLink赤坂」では、青森の特産品の販売だけでなく、地域フェアをはじめとするさまざまな青森情報を発信しています。
また、有楽町にある「青森暮らしサポートセンター(あおぐら)」では、青森への移住希望者に向けて仕事や暮らしの情報を発信し、相談窓口も設置しています。
青森県に移住するときの注意点
ここからは、青森県への移住を希望している人に、注意すべき点を紹介します。
冬への備えは万全に
青森県は、夏は涼しく快適ですが、冬は厳しい寒さが続きます。青森に限らず、北国では万全の防寒対策と降雪対策が必要です。石油ストーブやガスファンヒーターなどのしっかりとした暖房器具は必需品です。また、暖房費がかなり高額になるため、あらかじめ念頭に入れておきましょう。
豪雪地域では協力し合いながらの除雪作業も必須です。凍結防止のために水道の水抜きも忘れずに行いましょう。
車は必需品になる
青森市の中心部や青森駅周辺以外は、移動用の自家用車が必要です。冬は雪道になるため、4WDが良いでしょう。また、スタッドレスタイヤをはじめ、タイヤチェーンや冬用ワイパー、窓ガラスの曇り止め、撥水スプレーなどの冬対策も必須です。車の冬対策グッズは地元のホームセンターで入手できます。
雪道運転は慣れていないと怖いかもしれませんが、雪道運転講習を実施している地元の教習所もありますし、移住体験ツアーのプログラムに含まれることもあるので、事前に体験しておくとよいでしょう。
まとめ
青森県は、自然が豊かで子育て環境も整っているうえに、おいしい食材も豊富です。雪国ならではの大変さもありますが、ウインタースポーツが長く楽しめるなど、良い面もあります。移住ライフを成功させるためにも、事前の情報収集や体験移住をおすすめします。