年末調整とは、各種控除などを反映して、本当に納めるべき所得税額を精算する手続きです。この控除のなかの一つに「保険料控除」というものがあります。
保険料控除は支払った保険料に応じて控除を受けられるものですが、すべての保険料が該当するわけではありません。そのため、どの保険料が所得控除の対象なのかよくわからずに困ってしまうこともありますよね。そこで、この記事では年末調整における保険料控除について、どの保険料が該当するのか、それぞれの控除額など詳しく紹介します。
年末調整とは
年末調整は、給与の収入金額が2,000万円以下の給与所得者を対象とし、正しい所得税額を精算する手続きです。給与所得者はあらかじめ所得税を差し引かれた状態で給与が支払われますが、この所得税額には各種控除が反映されていません。
そこで、企業は年末に給与所得者から控除申告書を受け取って正しい所得税額を算出し、納めた所得税額との差額を計算します。ここで所得税を納めすぎていれば給料所得者に還付され、足りないときは追徴課税となります。
年末調整では保険料控除ができる
所得税から控除できるものは複数ありますが、なかには年末調整の対象ではなく確定申告が必要な控除もあります。保険料控除は年末調整で可能なので、保険料控除申告書を所属先に提出しましょう。納めた保険料の額に応じて保険料控除を受けられます。
どの保険が保険料控除に該当するのか次章で紹介します。
年末調整で保険料控除の対象となるもの
年末調整で保険料控除はできますが、すべての保険が該当するわけではありません。基本的に保険料控除の対象となるのは以下の4つです。
・生命保険料
・地震保険料
・小規模企業共済等掛金
・社会保険料
上記以外の学資保険や車両保険などは控除の対象外です。それぞれの保険料についてどのような控除を受けられるのか解説します。
生命保険料
生命保険料控除の対象となるのは以下のものです。
・生命保険契約等
・介護医療保険契約等
・個人年金保険契約等
など
生命保険料で注意が必要なのは、保険契約を締結した日にちによって取り扱いが異なるところです。2011年12月31日以前に締結したものは旧生命保険料、2012年1月1日以降は新生命保険料となります。
生命保険料控除の控除額には新契約、旧契約に分かれて以下のような上限が設けられています。
そのため、生命保険料控除はいくら支払いをしていても最高額は12万円です。
また、生命保険料控除の金額の算出方法は新契約と旧契約でことなります。
※参考:国税庁「生命保険料控除」
地震保険料
損害保険などで地震による損害部分の保険料や掛金支払い分は、地震保険料として所得控除を受けられます。
2006年の税改正により損害保険料控除が廃止となり地震保険料控除のみとなりましたが、経過措置として以下の要件を満たす損害保険料も地震保険料として控除可能です。
・2006年12月31日までに締結した契約
・満期返戻金等があり保険期間もしくは共済期間が10年以上の契約
・2007年1月1日以降も契約内容を変更していないもの
地震保険料控除の控除額は以下の通りです。
上記の通り、地震保険料控除の上限額は5万円となっています。もし5万円を超える地震保険を支払っていても、それ以上は控除できません。
※参考:国税庁「地震保険料控除」
小規模企業共済等掛金
小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金は、支払った金額全額を控除できます。生命保険料控除、地震保険料控除のような上限はありません。
対象となる掛金は以下の通りです。
・小規模企業共済法の規定によって独立行政法人中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金
・確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金
・地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金
ただし、旧第二種共済契約の掛金は生命保険料控除の対象となるため、小規模企業共済等掛金では控除できません。
社会保険料
年末調整を受ける給与所得者は、基本的に給与から社会保険料を源泉徴収されています。その金額と、配偶者や生計を一にする親族の社会保険料を支払った場合は、全額所得控除を受けられます。
社会保険料控除の対象となる控除は以下のとおりです。
・健康保険の保険料
・国民年金の保険料
・厚生年金保険の保険料
・船員保険の保険料
・国民健康保険の保険料
・高齢者の医療確保に関する保険料
・介護保険料
・労働保険料
・農業者年金の保険料
など
社会保険料控除も年末調整で行いますが、この控除額は源泉徴収により支払っているもので、所属先が金額を把握しています。そのため、雇用者が何か申告書を提出する必要はありません。
ただし、配偶者や生計を一にしている親族に対して社会保険料を負担している場合は申告が必要です。
※参考:国税庁「社会保険料控除」
年末調整における保険料控除まとめ
年末調整で行われる保険料控除をまとめると以下の表のようになります。
もし年末調整で保険料控除を忘れてしまったら
控除の対象となるものがあるにも関わらず申告を忘れてしまった場合は、年末調整で保険料控除を受けられなくなってしまいます。
こういったときは、翌年の確定申告で保険料控除の申請を行いましょう。保険料控除は5年間さかのぼって申請可能です。保険料控除に必要な証明書は、締結している保険会社で再発行できる可能性もあるため、なくしてしまった人は問い合わせてみてください。
まとめ
年末調整では、生命保険料、地震保険料、小規模企業共済等掛金、社会保険料として支払った金額の一部もしくは全額を所得から控除できます。保険料控除を受けないと、そのぶん課税所得金額が上がり、納める所得税額も上がってしまいます。
そのため、該当する保険に加入している人は年末調整のときに忘れずに申告しましょう。もし年末調整で申告できなかったときは、確定申告を行ってください。