地域活性化とは? 地方創生との違いをふまえ、なぜ必要なのかを解説

深刻な少子高齢化の影響で、2008年をピークに日本は本格的な人口減少時代を迎えています。同時に、東京や首都圏への人口の一極集中が進むことにより、地方の過疎化が進行し、ますます疲弊していく構造となっているのです。

この記事では、そんな疲弊する地方を立て直すために注目される「地域活性化」や「地方創生」について解説していきます。

地域活性化とは

はじめに、地域活性化とはどのような概念なのか確認していきましょう。

ひとことで言えば、施策や活動などを通じて、それぞれの地域の経済や社会、文化などの活動を活発化させたり、人々の意欲を向上させたりして、地域を維持発展させることを指します。

企業であれば、その存在目的は利益を上げることであり、利益を最大化するために行う営みが企業活動といえます。一方、地域は暮らす人々の生活の維持、ひいては地域自体が存続することこそが存在の目的といえるでしょう。地域の存続という目的を果たし、発展へつなげていくプロセスが地域活性化なのです。

地域を維持発展させるために行われるものとして、街おこしや村おこし、地域振興、地域づくりといった言葉も似たような意味で用いられます。

地方創生とは

官民一体となって取り組まれている地域創生

地域活性化と近い意味で使われる言葉として「地方創生」があります。2014年に、当時の第二次安倍晋三内閣が看板政策として掲げたことにより、広く取り組まれるようになりました。

地方創生とは、人口の急速な減少と加速度的に進む超高齢社会という日本が直面する大きな課題に対し、政府が一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的かつ持続的な社会を作り出そうという政策です。

地方創生は、2014年に成立した「まち・ひと・しごと創生法」を根拠法としています。少子高齢化社会への対策と東京への一極集中の解消を目的とした、地方の環境面や経済面の改善を総則に掲げるこの法律により、内閣内部に「まち・ひと・しごと創生本部」が設けられました。

地域活性化が必要とされる背景

このように、国を挙げて地域活性化の重要性が叫ばれているのはなぜなのでしょうか。地域活性化が求められる背景を解説していきます。

人口の減少
地域活性化が求められる背景として第一に挙げられるのが人口の減少です。

少子高齢化の影響で、日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、働き手となる生産年齢人口も1995年をピークとして減少傾向にあります。生産年齢人口は今後も減少し続け、2030年には6,773万人、2060年には4,418万人まで減少すると予測されています。

また、高齢化も深刻で、2025年には高齢化率が3割を超え、2050年には4割弱に達する見込みです。

出典:日本の将来推計人口(平成29年推計)

東京への一極集中

東京への一極集中がさらに問題を大きくしている

地域活性化の必要性が叫ばれる背景としてもう一つ挙げられるのが、東京への人口の一極集中です。

日本の人口は約1億2,000万人ですが、そのうち約3,600万人が東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)に集中しています。面積としては国土の約0.6%に過ぎないエリアに、人口の約30%が集中している状況です。

反対に東京圏を除く地方では、15〜29歳の若者人口が2000年〜2015年の間に約3割減少するなど、人口減少に歯止めがかかりません。

生活コストが高く出生率の低い東京圏への人口集中は、さらなる総人口の減少を招くとされ、地域活性化により地方の魅力をアップし、地方に人口を分散せるのが重要と考えられているのです。

地方の疲弊
人口減少と東京一極集中という2つの事象の必然的な結果として、地方は財政面・経済面などあらゆる面で疲弊しています。

過疎地域自立促進特別措置法において、過疎地域の指定を受けている市町村は日本全国で885あります。これは全国1,718市町村の実に51%にあたり、半分以上の市町村が過疎状態にあるというのが実情です。(2022年4月1日現在)

さらに、885ある過疎地域指定を受けた市町村のうち東京圏以外が857にも上り、東京圏とそれ以外の地方で格差が広がっている現状がわかります。

なお、過疎地域に指定された市町村は、返済の7割を国が肩代わりする過疎対策事業債を発行できるなどの財政支援を受けられます。

こうした状況が深刻化すれば、地方から消滅都市が続出することになりかねません。

地域活性化の取り組み事例

地域活性化とはどのようなものかわかったところで、具体的な取り組み事例を2つ紹介していきます。

文化芸術の積極的活用によるインバウンド観光(宮城県石巻市)
1つ目に紹介するのが、文化庁が日本の文化芸術の高度化や海外への普及を目指す目的で定めた「国際文化芸術形成事業」の一つとして実施されている、「Reborn-Art Festival」事業です。

Reborn-Art Festivalは、「ART(アート)」「MUSIC(音楽)」「FOOD(食)」をまとめて楽しめるお祭りとして、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市や牡鹿半島を会場として開催されています。

「ART」は石巻市街地など7エリアを会場に、エリアごとに異なるキュレーターが担当。合計で70組以上にもなる参加アーティストは、エリアの地域性を考慮したアート作品を展開しています。

「MUSIC」では、東北出身の音楽プロデューサーである小林武史氏が中心となって、地域の特色を活かしたコンサートやオペラなどを展開してきました。また、「FOOD」も石巻や牡鹿半島の食材および自然を活用したイベントやレストラン・食堂を展開し、参加者が食を通じて地域を感じられる仕掛けとなっています。

東日本大震災から地域を復興したいという地元の人々の強い思いと、文化芸術を通じてそれを支援したいという小林武史氏の情熱、小林氏の活動に賛同するアーティストや業界関係者の存在が重なることで、インバウンド観光を取り込む地域活性化の取り組みが実現されているといえるでしょう。

森林を活かしたローカルベンチャー支援事業(岡山県西粟倉村)

林業の復活は地域活性化に大きなインパクトを与える(写真はイメージ)

岡山県の北東端、兵庫県・鳥取県との県境に位置する西粟倉村は、面積の約95%が森林という緑豊かな村です。西粟倉村役場は地域活性化の一環として、地元のエーゼロ株式会社やNPO法人ETIC.と連携し、地域の起業家を育てる「ローカルベンチャー支援事業」を展開しています。

具体的には、西粟倉村役場が森林所有者から森林を預かり、森林の間伐や作業道整備を行う取り組みを実施。生産〜販売まで一貫した、「百年の森林」構想と呼ばれる森林管理・利用の新たな仕組みを実現しました。

合わせて、豊かな森林資源を活用した起業を支援するなど、ローカルベンチャーを担う人材を育成しています。

こうした一連の取り組みによって、地域の最大の強みである森林を活かした地域活性化のサイクルを実践しています。

まとめ

人口減少と超高齢化という日本の課題を解決するためには、地域活性化や地方創生の推進が欠かせません。しかし、多くの地方が地域活性化を望んでいるものの、なかなか進んでいないというのも現実です。

そういったなかでも、今回紹介した事例のように、地域の資源や特色を上手く活用して活性化に取り組んでいるケースは見られます。今後さらに人口減少が進むと考えられるなか、地域活性化や地方創生の重要性はますます高まっていくことでしょう。

~こんな記事も読まれています~

この記事が気に入ったらシェア