注文住宅を建てたのはどんな人? 調査データから見る注文住宅建築の実態

注文住宅は、間取りや設備などを建築主が自分で決められるのが魅力。自分の希望やこだわりを生かすことができます。その反面、予算内に収まるように、自分で判断して間取りや設備を選んでいく必要があります。たびたび経験できることではありませんので、なかなか大変な作業になります。

では、注文住宅を建てた人はどんな人で、どんな設備を選んでいるのでしょうか? 住宅生産団体連合会が年に1回実施している「2021年度 戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果を見ていきましょう。この調査は、全国の主要都市に注文住宅を建てた人について、それを請け負った建築事業者が回答したものです。2021年度は、有効サンプル数が3,420件となっています。

注文住宅を建てたのはどんな人?どうやって家を建てた?

では、注文住宅の平均顧客像を見ていきましょう。

注文住宅の平均顧客像

注文住宅を建てたのは、平均年齢40歳で、世帯年収1,000万円程度、子どもが1人いる3人家族が典型的な家族像となります。一方、建てた家は、延べ床面積約125平方メートル。首都圏の新築分譲一戸建ての平均が、土地面積100平方メートル、2階建ての建物延べ床面積120平方メートルくらいですから、注文住宅だから特に広いというわけではなさそうです。

では、どのくらいの費用をかけたのでしょうか? ポイントは土地になります。新たに土地を購入して新築した(土地購入・新築)人が最多の54.1%、土地や建物を売却して、新たに土地を購入して新築した(買い替え)人が6.1%で、約6割が注文住宅を建てる際に合わせて土地も購入しています。この場合は、建築費と土地代を合わせた住宅取得費が高くなります。

一方、住宅が建っていた土地に古家を解体して新築した(古家解体・新築)人が28.2%、親の所有する土地や相続した土地に新築した(親の土地/相続・新築)人が10.7%。ただし、「古家解体・新築」には、一部に古家付き土地を購入して解体した事例があります。なお、新たに土地を購入していない場合は、土地代は手続きの費用などになります。

土地の取得状況による住宅取得費の平均値
※土地代は、土地代なしを含む全サンプルの平均値
ほかに、新たに借りた土地(定期借地含む)に新築した人などがいる

また、注文住宅を建てた人は、住宅取得費をねん出するために、2割程度の自己資金を充当し、年収の5倍程度の5,000万円に近い住宅ローンを借りているという構図になっているようです。

何を重視した? どんな設備や建材を採用した?

では、何を特に重視したかを見ていきましょう。半数以上が「住宅の間取り」と回答していて、注文住宅らしさが表れています。トップ5のうち2位と3位に住宅の性能に関する項目が挙がり、基本性能の高さも求めていることがわかります。

■特に重視した点(複数回答)
住宅の間取り 67.1%
住宅の断熱性や気密性 41.1%
地震時の住宅の安全性 36.7%
収納の多さ、使いやすさ 35.8%
住宅の広さ 35.4%

次に、どんな設備や建材等を採用したのかを見ましょう。最も多く採用されたのは、「太陽光発電パネル」(61.9%)でした、次いで、「HEMS(ヘムス)」(42.4%)、「メンテナンスフリー外壁」(38.3%)、「エコキュート」(34.0%)などが続きました。

採用したもの
出典:住宅生産団体連合「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査

「太陽光発電パネル」は、売電価格が下がったことで注目度が下がりましたが、災害時に停電しても自宅で発電できることや昨今の電気代の高騰などで注目度が上がっています。東京都が新築住宅に設置を義務化する条例を定めるといったことでも、話題になりました。

詳しくはこちら:東京都が太陽光発電の設置を義務化へ! すべての新築住宅に設置が必要になる?

「HEMS」は、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略。住宅で使うエネルギーを居住者が把握し、管理するためのシステムです。電気の使用量を自動で最適化したり、スマホなどの端末で遠隔操作したりもできます。

HEMSを太陽光発電と連携すれば、売電するのか、家庭で使うのか、蓄電池に充電するのかなどを自動的に行うこともできるので、セットで設置した家庭も多いことでしょう。エコキュートとも連携できるので、昼間に太陽光で発電した電気でエコキュートのお湯を沸かし、夜間は沸き上げ量を抑えることもできるようになります。

なお、「エコキュート」は「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」といい、ヒートポンプ技術によって空気の熱を利用し、お湯を沸かす家庭用給湯システムのことです。通常は電気代の安い夜間電力を使って効率よくお湯を沸かします。このように各設備機器単体でも効果がありますが、HEMSと組み合わせればより効果が高くなります。

最後に「メンテナンスフリー外壁」とは、どういったものか、説明しましょう。聞きなれないかもしれませんが、最新設備として注目を集めています。ただし、メンテナンスがフリー(不要)ということではありません。大掛かりな補修時期を伸ばすことができるという意味で、メンテナンスフリーと言っています。

外壁は、常に外気にさらされるので、10年~15年経つと大掛かりな補修が必要となるケースが多いのですが、面積が広いうえに足場を組む必要があるなど、補修費用が高額になりがちです。修繕時期を伸ばすことで、長期的なメンテナンス費用を抑えられる点が大きなメリットになります。

カーボンニュートラルでZEHは増えている?

さて、近年はハウスメーカーが「ZEH住宅」に力を入れています。できるだけ電気などのエネルギーを消費しないように、住宅の断熱性などを高めたりエネルギー効率のよい設備を採用したりすることに加え、太陽光発電などの創エネ設備を採用することで、使うエネルギーと作ったエネルギーをプラマイゼロにしようというものです。

調査結果で多く採用されていた、太陽光発電パネルやエコキュート、エコジョーズ、エネファーム、蓄電池などもZEHに貢献する設備です。HEMSなどでエネルギー使用量をコントロールする必要もあります。では、ZEH住宅が多くなっているのでしょうか?

ZEHの検討の有無に関する調査結果を見ると、「ZEHにした」人は27.9%で、3割に達していませんでした。ただしZEH採用率は、2019年度の16.4%→2020年度の21.4%→今回の27.9%と年々増加しています。

ZEH検討の有無
出典:住宅生産団体連合「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査

政府は2050年カーボンニュートラル宣言をしていますので、住宅の省エネ性能の引き上げや太陽光発電、HEMSなどの設置を推奨しています。今後も、注文住宅でZEHにする人が増えていくと考えられます。

家事効率や災害対策などへの関心も高い

ほかにも、注目したいプランがあります。「新たな日常」に対応した工事で実施したものとして、「家事負担軽減に資する工事」(50.2%)が挙がっています。家事負担軽減に資する工事としては、ビルトイン食器洗機、浴室乾燥機、宅配ボックス、キッチン・洗面所・トイレに設置する収納などが具体的な事例です。いまは共働きの夫婦が増えていますので、家事負担軽減は大きな課題でしょう。

また、新型コロナウイルスへの「新しい生活様式」への対応・関心としては、「テレワークスペースの設置」(43.3%)、「良好な遮音性・防音性・省エネ性等」(40.5%)、「玄関に近い洗面スペース」(41.8%)が上位に挙がりました。さらに、災害時の自立的継続居住性能(レジリエンス性の強化)に資するとして、「耐震性の確保(長期優良住宅等)」(64.3%)、「創エネ設備(太陽光発電・エネファーム)」(35.2%)も上位に挙がりました。

このように、注文住宅を建てる際に関心が高いもの、実際に採用したものなどには、時代の要請が反映されています。今後も、世の中の変化に応じて、注文住宅のプランや設備は変わっていくことでしょう。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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