公営住宅とは、公的機関が低所得者向けに提供している賃貸住宅のことです。民間の賃貸住宅よりも家賃が安いのがメリットです。しかし、誰もが入居できるわけではなく、地方公共団体が定めた条件を満たした場合にのみ申し込めます。今回は、公営住宅とは何か、入居の条件や手続きの流れなどについて解説します。
公営住宅とは
公営住宅とは、都道府県や市区町村などの地方公共団体が建築し、低所得者向けに割安な家賃で提供している公的賃貸住宅のことです。主なものに、県営住宅や市営住宅などがあります。
家賃は、建物や間取りで一定額が決められているわけではなく、入居者の収入によって、あるいは住宅の規模や立地によって異なります。公営住宅に住めるのは、原則として同居親族がいること、収入が基準以下であることなど、都道府県や市町村が独自に定める入居基準を満たした世帯です。
公的賃貸住宅の種類
公営住宅を含む公的賃貸住宅の多くは地方住宅供給公社で管理・運営されています。一般的な公営住宅以外にもさまざまな種類があるため、それぞれの概要について解説します。
・公社賃貸住宅
地方住宅供給公社が建築した賃貸住宅です。申込者の月収が地方住宅供給公社の定めた月収基準以上であることなどが条件。同居親族あるいは同居予定親族がいる方。一部、単身高齢者も可能。
・公営住宅
地方公共団体が建築し、地方住宅供給公社が管理代行する住宅です。基準以下の収入であること、同居親族あるいは同居予定親族がいる方。高齢者、障害者、子育て世帯には収入基準の緩和あり。
・特定優良賃貸住宅
中堅所得者世帯向けの民間の賃貸住宅です。地方公共団体が建築費用や家賃の一部を支援します。収入基準の範囲内に属する世帯は、収入に応じた家賃補助が受けられます。
・特定公共賃貸住宅
中堅所得者世帯のために地方公共団体が建築し直接賃貸を行う住宅です。一定の収入基準の範囲内に属する世帯が対象。一部に地方住宅供給公社が管理する住宅もあり。
・高齢者向け優良賃貸住宅
60歳以上の単身または夫婦世帯のための賃貸住宅です。バリアフリー、緊急事対応サービスなど高齢者向けの設備に特化した優良住宅。収入に応じて家賃補助があります。
・ケア付き高齢者住宅
地方住宅供給公社による看取りまで終身利用可能な介護サービス付きの住宅です。生活利便サービス、健康増進、介護などの生活全般をケアしてくれます。
・サービス付き高齢者向け住宅
高齢者向けの設備を持ち、介護と医療とが連携したサービスを提供する住宅です。自立あるいは軽度の要介護の高齢者が対象。都道府県が認可し、民間事業者が運営しています。
・UR賃貸住宅
都市再生機構が賃貸する住宅です。申込者の収入基準の下限を下回らないことが条件。
公営住宅のメリット・デメリット
割安の家賃で住めることが公営住宅の大きな魅力ですが、そのほかにもたくさんのメリットがあります。しかしその反面、デメリットと感じる点もいくつかありますので、以下に解説します。
公営住宅のメリット
周辺の家賃相場と比べると、面積や間取り、築年数などが同程度の民間の賃貸物件よりも、かなり安い家賃で住めるのが大きなメリットです。世帯数の多い大規模の公営住宅では、敷地内に庭園や公園などを整備したり、近隣にスーパーや医療施設、学校施設などが揃っていたりと、住環境に優れたところも多く見られます。また、民間の賃貸と異なり、入居に際して、礼金や更新料、仲介手数料、保証人が不要になっているところが多いのもメリットです。
公営住宅のデメリット
築年数の古い公営住宅の中には、5階建てでエレベーターが設置されていない建物も多く残っています。家族構成や年齢によっては、選ぶ階数も大きく影響してくるでしょう。
また、入居を希望しても、収入基準などの定められた条件を満たさないと入居申し込みができません。申し込み時には基準を満たして入居できたとしても、住んでいるうちに収入基準を超えた場合は明け渡しを求められ、引っ越さなければならない可能性があることもデメリットです。
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公営住宅の主な入居条件
公営住宅の主な入居条件として、現在同居している親族がいる、または同居しようとする親族がいることが大前提です。ただし、高齢者や身体に障害のある方、特別な事情のある方などで入居条件に当てはまる方は、単身での入居も可能です。
また、世帯の収入月額が基準以下であることも重要な条件です。収入月額は、「(世帯全員の所得の合計−各種控除の合計)÷12ヶ月」で算出します。入居の収入基準には、本来階層と裁量階層があります。本来階層は、一般世帯の原則階層などと呼ばれる世帯を指す言葉です。一方、裁量階層とは、高齢者世帯や障害者世帯、子育て世帯などを指す言葉で、本来階層よりも収入基準が緩和されています。
参考元:横浜市「市営住宅の入居者募集」
一例を挙げると、横浜市の市営住宅の入居を希望する横浜市在住または在勤の方は、一般世帯(本来階層)が15万8,000円以下、裁量階層が21万4,000円以下となっています。
公営住宅の家賃はいくら?
公営住宅の家賃は、立地条件や規模、築年数のほか、入居者の収入によって計算されます。計算方法は、政令で定められている次の計算式により算定します。
家賃=家賃算定基礎額×市町村立地係数×規模係数×経過年数係数×利便性係数
家賃算定基礎額は、入居者世帯の収入月額「(世帯全員の所得の合計−各種控除の合計)÷12ヶ月」ごとに基礎額が段階的に定められ、国民の所得水準を鑑み、毎年改正されています。2022年の横浜市の家賃算定基礎額は、3万4,400円~6万7,500円までの6段階です。そのほかに、立地の公示地価、住宅の床面積、築年数、住みやすさなどを勘案して適切な家賃を計算しています。
例えば、神奈川県の県営住宅に住む方は、世帯の収入が月額8万円以下の場合、障害者や高齢者、母子父子家庭等の場合は、申請すれば家賃の減免を受けられます。
参考元:横浜市「市営住宅の入居者募集」
公営住宅入居までの一般的な流れ
公営住宅入居までの一般的な流れを解説します。
1.希望の住宅を選ぶ
入居者を募集している公営住宅の中から、入居を希望する住宅を選びます。
2.申し込みをする
それぞれの地方公共団体の規定に沿って入居申し込みの必要事項を記入した書類を提出します。
3.書類審査を受ける
勤務先等に在籍確認の連絡をする場合があります。
4.入居案内→見学
内見が可能になった部屋の下見をして入居希望の有無を回答します。
5.入居決定
入居が決定したら、入居説明会の日程と契約書類を受け取ります。
6.入居説明会
入居時の重要事項説明を受けます。
7.契約
契約書類、必要書類を揃えて契約を締結します。
8.入居
手続きが済み入居可能となってから、一定期間のうちに入居します。
公営住宅に申し込む際の注意点
公営住宅は空きが出てもすぐに住めるとは限りません。募集時期が決められているところも多く、そのタイミングに合わせて申し込みの準備をする必要があります。申込者が多い場合は抽選になるため、抽選に外れれば入居できません。特に、新築や立地条件がいい住宅は倍率が高くなりがちです。公営住宅の入居を希望しても、実際に入居するまでに時間がかかることを覚悟したほうがよいでしょう。
ただし、何度も抽選に落ちた方や、被災など緊急性のある方などは、抽選の優遇措置が受けられる場合があります。
まとめ
公営住宅とは、都道府県や市町村が建築した住宅や、建築の補助をした住宅のことです。管理は地方住宅供給公社などに委託するものも公営住宅に含まれます。一般的には、民間の賃貸住宅の家賃相場よりも安価で借りられるものが多く、買い物や医療機関、公共施設などがそろっていて生活環境がよいため人気があります。
しかし、入居するには収入基準や各種の条件を満たす必要があります。少しでも安い家賃の賃貸を探したい方は、入居要件を満たしているかどうか調べてみてはいかがでしょうか。
(最終更新日:2024.04.19)