東武東上線、東京メトロ有楽町線・副都心線が乗り入れ、東京メトロ2線の始発駅・終着駅として注目度が高まる埼玉県の和光市駅。ところが市内には大規模な公共施設、研究所などが多く、これまではその人気に住宅供給が追いついていませんでした。しかし、長年続けられてきた土地区画整理が進行、駅前での再開発計画も発表され、一気に状況が変わりそうです。
3路線利用可、始発・終電の多い和光市駅
和光市駅が脚光を浴びるようになったのは2013年に渋谷駅の地下化が完了、東京メトロ副都心線と東急東横線、みなとみらい線との相互直通運転が始まった頃から。副都心線は平日午前中なら毎時10本以上の始発があり、渋谷駅からの下り電車で見ても和光市駅止まりが毎時数本以上。それまで和光市の存在を知らなかった人も駅名をよく見るようになったことから、利便性の高さに気づいたというわけです。
実際にはそれに先立つ1987年に東京メトロ有楽町線が営団成増駅から和光市駅に延伸、東武東上線に加えて都心部直結の地下鉄路線が利用できるようになっており、和光市は段階を経て便利になってきたのです。
市のホームページでも3路線が利用できる便利さが紹介されています。それによると「和光市には、3つの鉄道路線が乗り入れています。東武東上線は、和光市駅~池袋駅間を最短13分(急行)で結び、東京メトロ有楽町線と副都心線は、それぞれ、有楽町・銀座、新宿・渋谷の東京都心・副都心と直結しています。通勤、通学、買い物、レジャーに、都心へのアクセスは非常に便利です」とあります。
単にアクセスが良いだけでなく、始発が多く、座って通勤できる、終電でも乗り過ごすことが少なくて済みそうな点は利用者にとってうれしいところ。これが可能になっているのは、和光市内に東京メトロの和光検車区があるため。駅から西、朝霞市との間にある広大な土地にはいろいろな車両が止まっており、鉄道好きとしては眺めて楽しい場所です。
市内には東京外かく環状道路(外環)の和光ICと和光北ICの2つのインターチェンジがあり、車の移動にも便利です。東京外かく環状道路は首都高速道路や、関越自動車道、東北自動車道、常磐自動車道などと接続しており、こちらも仕事に、遊びにいろいろ使えます。
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2020年には駅ビル開業、南口が大変貌
交通の利便性向上に伴い、街には変化が生まれ始めています。もっとも分かりやすいのは駅ビルの誕生。2019年12月には 駅ナカ商業施設「EQUiA PREMIE(エキア プレミエ)和光」の改札内エリアが部分的に開業。続けて2020年3月には駅ビルエリアも開業し、買い物、飲食などに便利な店が増えました。
複合施設わぴあ誕生で新たなにぎわいも
こうした動きとは別の変化もあります。それが和光市駅から約900メートル、歩いて12分ほどの場所に2021年12月に開業した、総合児童センター、保健センター、民間収益施設などを一体的に整備した複合施設「わぴあ」。元々は市の総合児童センターなどがあった場所ですが、2012年以降大規模な漏水事故で総合児童センターのプールが使えなくなり、加えて建物自体も老朽化が目立ち、長らく更新が検討されていました。
その解決のために和光市が取った手段は、隣接する国有地を購入、民間と連携して複合施設を造ること。どこの自治体でも将来に向けて維持管理費が必要な公共施設の総量を抑制、複合化・多機能化を進めていますが、わぴあはそうした方針に則ったものです。また、民間との連携、資金とノウハウを活用することで効率的で効果的な公共サービスの提供を図ろうというのも全国的な流れ。その点で和光市は先進的な取り組みをしているというわけです。
実際の施設は気持ちの良さそうな広場を挟んで建物が向かい合うような形で造られており、施設内にはARスポーツ「HADO(ハドー)」の設備や音楽スタジオ、コワーキングスペースなども入っており、大人も子どもも楽しめそう。市役所や公共施設の多い地域に、新たなにぎわいをもたらす期待もあります。
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駅の南側に土地がない歴史的経緯とは?
こうした変化の一方で、長らく課題とされてきたのが住宅の供給。現状の和光市は駅を挟んで南側が早くから開発されてきた市街地になっていますが、南側には新たに住宅を供給できそうなまとまった土地があまりありません。
それは歴史的な経緯から。和光市(その当時は白子村、新倉村)が発展し始めるのは、戦前の1937(昭和12)年に陸軍が両村の面積のうちの約20%にも及ぶ土地を買収し、陸軍予科士官学校が移転してきて以降です。陸軍予科士官学校の移転に伴い、いくつもの軍需工場が駅南側に進出、人口も大きく増えています。
戦後は米軍への接収を経て土地は日本に返還されますが、かつての陸軍、軍需工場などに関係する土地は大きな区画ばかりです。それを利用して造られたのが理化学研究所や本田技研工業の複数の研究所、司法研修所、裁判所職員総合研修所、自衛隊官舎、西大和団地、諏訪原団地、南大和団地、和光樹林公園などといった、研究所、公共施設、公団住宅をはじめとする大規模施設など。地図で見ると市の南側にそうした施設等が集中しているのはこのような背景によるものです。
昭和から取り組んできた北口土地区画整理事業
そこで和光市では1970(昭和45)年から、駅北側の約142ヘクタールの土地を対象に土地区画整理事業を計画して取り組んできました。なかなか進展のなかった土地区画整理事業ですが、現在では駅に近い約11.3ヘクタールで工事が進行しており、新たな道路が姿を現すなどようやく完成が見えるようになってきました。清算期間も含めると2029年度の完成となっているので、まだしばらくはかかりますが、これによって今後は住宅の供給が増えていくと思われます。
北口ではタワーマンション建設予定
もうひとつ、北口側では駅前の再開発も計画されています。2021年12月には再開発準備組合が設立され、三菱地所、三菱地所レジデンス、大京が事業協力者に名を連ねています。
詳細は今後変わるかもしれませんが、現在の予定では駅と駅前広場をつなぐ、屋内の広場空間であるガレリアを備えた駅直結型の建物が造られ、低層階を商業施設などのにぎわい施設とし、高層階を住宅とすることで検討が進んでいます。それに合わせて新しい駅前広場を一体的に整備していくことも計画されており、一足先に整備された南口側に負けない、和光市の新しい顔が生まれることになりそうです。
準備組合としては2023年度の市街地再開発等の都市計画決定を目標に具体化を進めるとしており、手続き期間に約3年、工事期間に約3年を見込んでいます。姿を現すのは北口の土地区画整理事業とほぼ同じくらいというわけです。
新たな産業集積への取り組みも
もうひとつ進んでいるのは、和光北インター東部地区の土地区画整理事業です。こちらは直接住宅とは関係ありませんが、和光市の今後の発展を考えると重要なプロジェクトです。これは国道254号バイパス延伸を機に、沿道の区域約38.1ヘクタールを対象に製造業、運輸業の進出を呼び込もうと行われるもの。インターチェンジ周辺に新たな産業の集積を図ろうというのです。
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市内の交通利便性アップに繋がる和光版MaaS
また、それに合わせて新たな交通システムも模索されています。和光版MaaS(マース)と呼ばれるこのプロジェクトは、南北に細長い和光市の中央にある駅周辺、南側にある市役所・わぴあ周辺と、今後新たな拠点として整備が進む和光北インター東部地区の3ヶ所を繋いで移動をしやすくしようというもの。
具体的には駅から北側へ自動運転バスを走らせ、そのバスと路線バス、コミュニティバス、タクシー、シェアサイクル、マイクロモビリティなども含め、2点間を移動したいときにどれとどれを組み合わせて利用するのが効率的かの案内が出てきて、予約から決済までが可能なスマホ用アプリを提供するというものです。
高齢になっても住みやすい街を
これにより、高齢者でも車を利用せずに自由に移動できるようになり、将来の公共交通機関の運転手不足の問題もクリアできるなど、さまざまなメリットが見込まれるのだとか。市がまとめている和光市版スーパーシティ構想を見ると、非常に長期的な視野でさまざまな施策が検討されていることが分かります。長くこの場所に住み続けたいと考える人には、将来も安心な街と言えるかもしれません。
市内には緑も豊富、公園もあちこちに
こうした未来に向けての取り組み以外では、街に緑が多いことも魅力のひとつ。並木のある通りが多く、中には桜の季節にはピンクのトンネルになる通りなどもあります。
大小取り交ぜてさまざまな公園も点在しており。なかには湧水があったり、バーベキューができたり、川に親しめるなど特徴のある公園も。親子そろっていろいろ楽しめるでしょう。
中心部から離れると農家も多く、市役所で定期的に農産物が売られているほか、市は庭先販売マップを作ってもいます。ここに住めば新鮮でおいしく、生産者が分かって安心な野菜を安く手に入れられる可能性大というわけです。
おおむね平坦な土地なので、自転車移動がしやすいのも和光市駅周辺の特徴。コンパクトな街ですから、親子でのんびり、公園や公共施設をたずねてポタリング(散歩的なサイクリング)を楽しむにも向いています。利便性が取り上げられることの多い街ですが、実はそれ以外の顔もあります。駅周辺だけでなく、市内あちこちを見てみてほしいところです。
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