マンションや戸建てを購入する時には、減税や補助金、優遇制度等さまざまな支援策があります。しかし、実際にメリットを享受するためには対象となる住宅性能や期間、手続きなど様々なことをクリアしなくてはなりません。
ここではマンションや戸建てを購入する時に知っておきたい優遇制度について、省エネ性能、長期優良住宅2つの視点から解説します。
省エネ住宅で受けられる減税
国は地球温暖化防止等の観点から、2050年までに二酸化炭素など温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しています。こうした背景から経済産業省では、住宅についても以下のような目標を掲げています。
• 2025年度までに省エネ基準への適合義務化
• 遅くとも2030年までにZEH・ZEB基準への適合義務化
• 設置義務化の選択肢として太陽光発電設備の設置促進の取組を進める
出典:経済産業省
2025年度までに一定の断熱性能や二酸化炭素等のエネルギー消費量の基準を満たした省エネ適合住宅を義務化し、2030年までには、住宅が創り出すエネルギーと消費するエネルギーがおおむねゼロとなるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を義務化する方向です。
こうした背景から、年末の住宅ローン残高の一定割合が払った税金から戻ってくる住宅ローン減税も、2022年以降は省エネ性能が高い住宅は減税額が大きくなります。住宅事業者が買い取り、リフォーム後に販売する買取再販住宅についても、リフォームにより省エネ基準を満たせば、新築住宅と同額の減税が受けられます。
2024年以降に建築確認を受け、2025年中に入居する新築住宅等については、省エネ基準に適合しない住宅は、住宅ローン減税は受けられなくなります。
省エネ性能については、すでに建築士からの説明が義務化されています。自分が購入する住宅がいくらの減税が受けられるのかを確認するために、契約前に説明をしっかり聞いておきましょう。
省エネ性能が高い住宅では、ほかにも税金の優遇を受けられる場合があります。
たとえば、親や祖父母などから住宅資金の援助を受けた場合、一定額まで贈与税が非課税になる制度があります。一般の住宅では贈与を受ける人ごとに500万円が非課税の上限ですが、省エネ基準適合住宅以上の性能であれば1,000万円まで非課税で贈与を受けられます。
また、住宅ローンを利用せずにZEH水準省エネ住宅を取得した場合、性能を上げるためにかかった費用の10%を上限に、最大65万円の減税を受けられます。
こうした減税の制度を利用するためには、翌年に贈与税や所得税の申告が必要です。減税を受けられると思っていたのに、期限や住宅、所得等の要件が当てはまらず受けられなかった、ということになると大きく予算が変わってしまいます。減税ありきで予算を立てるのではなく、対象となるかどうかを事前に税理士や税務署に確認しておきましょう。
なお、住宅ローン減税については、初年度は確定申告が必要ですが、会社員の場合は2年目から年末調整で手続きできます。
省エネ住宅で受けられる補助金制度
省エネ適合住宅やZEH等では、他にも補助金等複数の優遇制度があります。
(1)こども未来住宅支援事業
2003年4月2日生まれ以降の子どもがいる世帯、または夫婦いずれかが1981年4月2日生まれ以降で新築住宅を建築・購入する場合、住宅性能により60万円から100万円の補助金を受けられます。契約期限や申請期限等に注意する必要がありますが、申請自体は登録事業者が行います。建築・購入の相談をスタートする時点で、建築業者や不動産会社が登録事業者かどうかを確認しましょう。
(2)ZEH(ゼッチ)等支援事業
SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)に登録されたZEHビルダーおよびプランナーが設計、建築、販売を行う住宅を新築または建売住宅を購入する人は、省エネ性能により定額55万円から140万円の補助金を受けられます。中小工務店などによる木造住宅のZEHも140万円を上限とした補助金の対象となります。
また都道府県や市区町村の補助金の制度もあり、国の制度と併用できる場合もあるので、各ホームページで確認してみましょう。
下図は新築戸建ての購入や建築時の補助金制度ですが、ZEHの基準を満たしたマンションについても環境庁、経済産業省、国土交通省が連携した補助金制度があります。希望するマンションの資料や現地の見学時などで、ゼッチマンションかどうかを確認しておきましょう。
(3)住宅ローン金利の優遇
2022年10月から全期間固定金利の【フラット35】の金利が優遇される【フラット35】S(ZEH)が始まります。
融資の実行が2022年10月以降で【フラット35】S(ZEH)の基準(戸建てとマンションそれぞれの基準があり)を満たすと当初5年間は【フラット35】の借入金利から0.5%引き下げ、6年目から10年目は0.25%の引き下げとなります。
また、後述する長期優良住宅等との併用で、当初10年間0.5%の引き下げとなります。
長期優良住宅で受けられる減税
長期優良住宅とは、戸建てでは一定の「劣化対策」「耐震性」「省エネルギー性」「維持管理・更新の容易性」等を満たした住宅、マンションについてはこれらに加え将来的な間取り等の「可変性」や「バリアフリー性」を兼ね備えた住宅のことです。
長期優良住宅の認定を受けることで、減税や補助金等の優遇を受けられます。
1.税金の優遇
2.地震保険料の割引
長期優良住宅の認定基準に耐震性が求められています。「住宅の品質確保の促進に関する法律」に基づいた耐震等級を有している、または免震建築物であることが証明できる書類を提出することで、地震保険の割引を受けられます。
3.住宅ローン【フラット35】の金利引き下げ等
長期優良住宅の認定を受けると当初10年間0.25%金利引き下げとなる【フラット35】S(金利Aプラン)の対象となります。2022年4月以降融資実行分については、「維持保全型」の併用で金利から当初5年間は0.5%、6年目から10年目は0.25%の引き下げとなります。
さらに、長期優良住宅は高性能な住宅で定期的な点検や修繕の計画が策定されていることから、返済期間が最長50年となる【フラット50】を利用できます。35年超の住宅ローンが借りられ、返済中に住宅を売却する場合は、購入者にローンを引き継げるメリットもあります。
(4)地域型住宅グリーン化事業
地域の工務店が、建築士や不動産会社等とともに事業の採択を受け、建築した長期優良住宅について、最大110万円の補助金が受けられます。認定長期優良住宅や、ZEH水準を満たした住宅は、補助額が最大140万円となります。
以上、省エネ性能の高い住宅、長期優良住宅の2つの視点で利用できる住宅購入時の優遇制度について見てきました。
「二酸化炭素排出量を減らす」、「維持管理がしやすく次世代まで利用できる住宅」、「地方活性化」や「子育て世代応援」といった視点から減税や補助金を受けられることが分かりました。ZEHについては戸建てだけでなく、マンションも大手デベロッパーを中心にZEHマンション(ZEH-M)の建築を進めています。
住宅購入は立地や価格はもちろん重要ですが、今後は省エネ性能や長期的な維持管理の差も、将来の住宅の価値を左右する重要な要素となりそうです。
【出典・参考元一覧】
国交省「認定住宅」
経済産業省「認定住宅」
【フラット35】「2022年4月版パンフレット」
国交省「カーボンニュートラル総合事業」
【フラット35】地域連携型
地方創生移住支援金
「令和4年度3省連携事業」