不動産のインスペクションとは?メリット・デメリット、費用相場をわかりやすく解説

2018年4月の改正宅地建物取引業法の施行により、中古住宅の売買におけるインスペクション(住宅診断)の重要性が高まっています。

近年注目を集めるインスペクションとはどのようなもので、目的はどこにあるのでしょうか。インスペクションを行うメリット・デメリットや、一般的な費用相場についても解説していきます。

インスペクションとは?

インスペクション(inspection)とは、「点検」や「検査」を意味する言葉です。今回解説していくインスペクションは「ホームインスペクション」とも呼ばれ、中古住宅の売買などに際して行う住宅診断のことです。ホームインスペクターといわれるプロが、住宅の劣化や欠陥がないかどうかを調査します。

欧米では広く浸透しているインスペクションですが、日本でも普及を図るため、国土交通省が2013年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定しました。また、2018年4月には改正宅地建物取引業法が施行され、中古住宅売買時には売主・買主双方へ、インスペクションに関する説明をすることが義務化されました。

インスペクションの目的とは?

インスペクションで中古住宅の劣化状況や欠陥の有無をチェックすることにより、その住宅の現況を客観的に把握できます。これは中古住宅の販売価格を決めるにあたっての根拠になるほか、品質の証明にもつながります。

よくインスペクションは、「住まいの健康診断」とたとえられます。健康診断における医師であるところのホームインスペクターが住まいの健康状態をチェックし、取引上問題のないことを証明するというのが、大きな目的といえるでしょう。

インスペクションの主な検査項目とは?

インスペクションの主な検査項目としては、どのようなものがあるのでしょうか。戸建て住宅を例に見ると、次のような項目が挙げられます。

●柱や基礎など
建物の構造上、耐力に大きな影響を及ぼす可能性のある箇所
●屋根や軒裏など
内部への雨水の侵入防止にかかわる箇所
●給排水管路
水漏れや排水不良がないかどうかをチェック
●シロアリ検査

これらの検査は、いずれも目視・動作確認・計測によるものが中心です。屋根や床下といった箇所は目視で確認できる範囲での検査となります。インスペクションで行われるのは非破壊検査であり、壁に穴を開けて内部を直接確認するような検査ではありません。

インスペクションを行うメリットとは?

国として普及を図っているインスペクションですが、実施することでどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリット3点について見ていきましょう。

買主の安心や信頼につながる
インスペクションの結果、特に問題のない住宅であると証明されれば、買主にとっての安心材料となります。それによって、より早期に高値で売却できる可能性が高まるというのは大きなメリットです。

また、インスペクションの説明が義務化されているとはいえ、未実施の物件もまだ多いのが実情です。インスペクションを実施することで物件に対する信頼感が生まれ、未実施の物件との差別化ができるという効果も期待できます。

クレームやトラブルを回避できる
インスペクションを実施していれば、欠陥や老朽化している箇所などについて、買主へ事前に説明できるというのもメリットです。

買主は事前説明の内容に納得したうえで住宅を購入することになるため、後から欠陥が見つかってクレームやトラブルにつながるリスクを軽減できるでしょう。

税制優遇が受けられる
インスペクションを行い、既存住宅売買瑕疵保険(瑕疵保険)に加入すれば税制優遇を受けられる場合があります。

既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の売買にあたり、保険対象となる部分に隠れた瑕疵(対象物件における何らかの欠陥)があった場合の損害を補償する保険です。既存住宅売買瑕疵保険に加入するために必要な検査項目は、インスペクションでおおむねカバーできます。

インスペクションを実施し、既存住宅瑕疵保証保険に加入すると「保険付保証明書」が発行されます。この証明書を取得することにより、登録免許税や不動産取得税の減税、住宅ローン減税といった税制優遇が受けられるのです。

インスペクションを行うデメリットとは?

売主・買主双方に多くのメリットがあるインスペクションですが、実施にあたって留意すべきデメリットもあります。次に挙げる2つのデメリットを理解したうえで、実施を検討するとよいでしょう。

費用がかかる
インスペクションではプロに住宅の検査を依頼するため、当然のことながら一定の費用がかかります。詳細な費用相場は後ほど紹介しますが、一般的なコストは4~7万円程度です。

検査項目の章で挙げたもののうち、給排水管路やシロアリ検査などは検査会社によってオプション対応となるケースもあり、検査内容によっては10万円を超える費用が必要になることもあります。住宅の売却を検討する際には、インスペクション費用も予算に見込んでおくのがよいでしょう。

追加工事が必要になる場合も
インスペクションで問題が見つからなければ品質保証として有用ですが、仮に欠陥が見つかった場合、その修理にコストや時間がかかる可能性があります。特に重大な欠陥があると修繕に多大なコスト・時間がかかるだけでなく、最悪の場合、価格が付かず売却できなくなるリスクもあるでしょう。

ただ、インスペクションをしなかった結果、売却後に欠陥が発覚すると、買主との間で大きなトラブルに発展しかねません。こうしたリスクとのバランスをよく考えて、インスペクションを実施するかどうかを判断する必要があるでしょう。

インスペクションの費用相場は

インスペクションにかかる費用は、一般的に5万〜15万円程度が目安です。

依頼する会社によって検査メニューや費用は異なりますが、建物の外側や点検口からの目視による検査を中心とした基本料金であれば、5万円程度で収まるケースがほとんどでしょう。ホームインスペクターが建物内に入って詳細な点検・計測などを行う場合、オプション料金が発生する会社もあり、10万円以上かかる可能性があります。

多少コストがかかってもインスペクションで事前に問題を把握し、必要に応じた対処をしておくというやり方は、トラブルを避けるためにも検討の価値があるといえるでしょう。

まとめ

インスペクションとは、ホームインスペクターと呼ばれるプロが行う住宅診断のことです。取引前にインスペクションを実施しておくと、買主の安心や信頼につながり、購入後のトラブルの予防にも効果が期待できます。

インスペクションには一般的に5万〜15万円程度の費用がかかりますが、将来のリスクヘッジにつながるのは大きなメリット。今後住宅の売却を検討しているのであれば、インスペクションの実施を検討してみてはいかがでしょうか。

(最終更新日:2022.10.06)
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