登記とは、どのような場合において、何のために行う必要があるのでしょうか。生活をする中で私たちが経験する可能性のあるものの一つに「不動産登記」があります。不動産を購入したときや住宅ローンを完済したときに行わなければならないのが、不動産登記の申請です。本記事では、不動産登記にかかる費用のほか、不動産登記の手続きの流れや申請に必要な書類について解説します。
登記とは?
登記とは、言わば権利を明確にするために必要な行為です。たとえば不動産登記を行っておくことで、第三者に対して土地や建物の所有権や抵当権を主張できます。登記には不動産登記以外にも「商業登記」や「法人登記」、さらには「成年後見登記」などがあります。
不動産登記を行うと、不動産登記簿(登記記録)が作成されます。その内容は「表題部」と「権利部」に分けられ、「表題部」に記載されるのは土地や建物の情報です。「権利部」はさらに甲区と乙区に分けられ、甲区には所有権に関すること、乙区には所有権以外の権利に関することが記載されます。
ちなみに表題部の記載は必須ですが、権利部については任意となっている点を覚えておきましょう。
不動産登記はどんな場合に必要となる?
不動産登記が必要となる代表的なケースに、以下のものがあります。
・不動産を購入もしくは相続したことにより、不動産の所有者が変わったとき(所有権移転登記)
・不動産の所有者の住所、氏名が変わったとき(登記名義人住所・氏名変更登記)
・住宅ローンを完済したとき(抵当権抹消登記)
・離婚により、財産分与を行うとき(名義変更、所有権移転登記)
現在、表題部の登記の期限は所有権を取得した日もしくは変更があった日から1ヶ月以内とされおり、1ヶ月以内に行わなかった場合には10万円以下の過料が科せられます。権利部については、期限が設けられていません。
ただし、相続による所有権移転登記については、2024年4月1日から義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に行わなければならなくなります。3年以内に行わなかった場合には、10万円以下の過料が科されることになっています。
不動産登記の目的とは?
不動産登記簿には、財産である土地や建物がどこにあるか、また、その面積はどのくらいかという情報のほか、土地や建物の所有者の住所および氏名が記載されています。それらを誰でも閲覧できる状態にしておくことで、不動産の権利関係などを把握でき、取引の安全そして円滑化を図ることが不動産登記の目的です。
不動産登記の制度がなかったら、不動産の本当の所有者が不明なまま不動産取引を行うことになってしまい、取引の安全性が損なわれる恐れがあります。不動産登記が持つ「対抗力」、「権利推定力」、「形式的確定力」の三つの効力は、不動産取引を行う上で非常に重要な役割を果たしています。
もし不動産登記をしなかったらどうなる?
もし不動産登記をしなかった場合、その不動産の所有権が誰にあるのかわからなくなります。所有権を不動産登記簿の権利部に登記することによって初めて第三者に対して不動産が自分のものであると主張できるため、もし別の人が所有権登記をしてしまうと、自分はその不動産の所有権を主張することができません。
また、不動産登記をしていない状態で土地や建物を売却しようと思った際にも問題が発生します。現在の所有権者が不明な状態のままでは、所有権を買主の名義に変更することができないからです。
さらに、表題部については申請の義務があるため、登記をしていなかったことに対する10万円以下の過料が発生する可能性もあります。
所有者不明の不動産の管理問題を解決するための策として、2024年4月1日より、相続登記が義務づけられることになりました。相続によって不動産を取得した人は、それを知った日から3年以内に登記を行わなければなりません。もし3年以内に登記手続きを行わなかった場合は10万円以下の過料が科せられます。
不動産登記の流れ
不動産登記は、以下の流れで行われます。
1.必要書類を集める
(購入の場合:売買契約書、買主の住民票の写し、売主の印鑑証明書、売主の登記済証もしくは登記識別情報など)
2.申請書を作成する
不動産登記の申請書は法務局の公式サイトに掲示されています。記載例とともに掲示されていますので、必要な申請書様式と記載例をダウンロードし、記載例を基に申請書を作成しましょう。また、登録免許税の貼付台紙を用意し(A4用紙)、申請書に記載した登録免許税相当額の収入印紙を貼付することを忘れないようにしてください。
3.法務局に提出
必要書類と申請書の準備が整ったら、法務局に提出します。提出先の法務局は不動産の所在地によって管轄が決まっており、法務局の公式サイト(管轄のご案内)で確認できます。提出方法は持参のほか、郵送も可能です。郵送で提出する場合は、封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便で送付しましょう。
4.審査を受ける
法務局の中で、提出された申請書の記載内容に不備がないか、また、必要書類に漏れがないかを確認します。不備があった場合、申請書に記載した連絡先に電話がかかってきますので、必要に応じて訂正するようにしてください。
5.登記簿に記載される
法務局内の審査に通ったら、登記記録(登記簿)が作成されます。登記記録の作成が終了したら、法務局から登記簿が発行できるようになったと連絡がありますので、後日取得しましょう。
6.登記情報書類を受け取る
後日、法務局に赴き、登記識別情報通知書と登記完了証を受け取ります。
不動産登記に費用はいくらかかる?
不動産登記には登録免許税がかかります。さらに証明書などの取得が必要な場合はその費用も考慮しておかなければなりません。また、不動産登記を自分で行うか、司法書士に依頼するかでも費用が異なります。司法書士に依頼する場合は別途報酬が必要ですので、最終的にかかる費用は、「登録免許税+司法書士報酬+証明書の取得費用などの実費」の合計額になります。
所有権移転登記にかかる費用
所有権移転登記とは、土地および建物の所有権がほかの人に移った際に行うものです。具体的には、不動産の売買取引をして売主から買主へ所有権が移るときや、贈与によって所有権が贈与者から受贈者に移るとき、相続によって被相続人から相続人に所有権が移るときに行われます。
所有権移転登記にかかる登録免許税は、その事由によって異なります。
1.売買
土地の所有権移転登記:不動産価額×2%(ただし2023年5月31日までに登記を受ける場合は1.5%)
建物の所有権移転登記:不動産価額×2%(ただし2024年3月31日までに個人が売買によって自己の居住用住宅の家屋を取得した場合は0.3%)
2.贈与
土地の所有権移転登記:不動産価額×2%
建物の所有権移転登記:不動産価額×2%
3.相続
土地の所有権移転登記:不動産価格×0.4%
建物の所有権移転登記:不動産価格×0.4%
所有権保存登記にかかる費用
所有権保存登記とは、その不動産の権利部の登記を最初に行うことを言います。具体的には、土地の上に建物を新築した場合には、建物に対する所有権保存登記が必要です。
所有権保存登記にかかる費用は、新築住宅の購入および建築時の不動産評価額×0.4%です。ただし2024年3月31日までに個人が自己の居住用の新築住宅を購入および建築した場合は0.15%に軽減されます。
抵当権設定登記にかかる費用
抵当権設定登記は、住宅ローンを利用し、不動産を購入した際に必要となる登記です。住宅ローンを提供している金融機関は、担保とする住宅(不動産)に抵当権を設定します。万が一返済不能の状態になったときには抵当権を実行して住宅(不動産)を売却し、金銭に換えて融資金額の回収にあてます。
抵当権設定登記にかかる登録免許税は、金融機関から融資を受けた金額×0.4%です。ただし、2024年3月31日までに個人が自己の居住用住宅の家屋を購入した場合は0.1%に軽減されます。
抵当権抹消登記にかかる費用
住宅ローンを完済した際には、抵当権を抹消する必要があります。抵当権設定登記は金融機関が指定する司法書士が行うケースがほとんどですが、完済した場合の抵当権抹消登記は自分で行わなければなりません。
また、住宅ローンを借り換える際にも、元々借りていた金融機関の抵当権を抹消する手続きが必要です。借り換えの場合は、抵当権抹消登記および抵当権設定登記を金融機関側で行うのが通例となっています。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、抵当権が設定されている土地および建物それぞれ一つにつき1,000円です。
司法書士に依頼する費用の相場は?
不動産登記を司法書士に依頼する際の報酬額の相場は、不動産1個あたり数万円程度ですが、相続登記などで相続人が多い場合は10万円程度に上ることもあります。
報酬額は司法書士によって異なりますので、高いと感じるならば複数の司法書士に見積もりを取ってみることをおすすめします
不動産登記に必要な書類
不動産登記に必要な書類は、不動産登記の種類によっても異なります。ここでは売買による所有権移転登記に必要な書類について解説します。
(買主側が準備する書類)
・不動産登記申請書:登記申請の際に必要
・身分証明書:運転免許証、マイナンバーカード
・住民票の写し:新たに所有者となる側の住所を証明するもの
(売主側が準備する書類)
・登記済証もしくは登記識別情報:現在の所有権を確認するため
・固定資産評価証明書
・身分証明書
・印鑑証明書および実印
その他、登記手続きを司法書士に依頼する場合は委任状や売買契約書が必要になります。
まとめ
不動産登記は、不動産を購入するときだけでなく、相続時や、不動産所有時に名前や住所が変わったとき、住宅ローンを組むとき、住宅ローンを完済したときなどにも必要になります。取引や相続の際のトラブルを防ぐためにも、内容に変更があった際にはその事実をきちんと申請し、正しい内容のものにしておきましょう。