一部共有型二世帯住宅とは、玄関や水回りなど住宅の一部を共有しつつ、ほかの生活空間をわけている二世帯住宅のことです。親と同居する予定がある場合、二世帯住宅の建築を考える人もいるでしょう。しかし、建築後に間取りや設備を変更することはなかなかできません。
この記事では、一部共有型二世帯住宅について詳しく解説します。一部共有型二世帯住宅の特徴やメリット・デメリットなどを把握し、それらを考慮したうえで二世帯住宅を建てるようにしてください。
一部共有型二世帯住宅(部分共有型)とは
一部共有型二世帯住宅とは、住居をわけつつも一部分だけ共有する形式の二世帯住宅です。共有する場所は、玄関、台所、風呂、トイレなどそれぞれの世帯により異なります。玄関だけ一緒で、あとはすべて分離しているような家も一部共有型二世帯住宅と呼びます。
設備を共有する分コストが下がり、かつプライベート空間も確保できるため、二世帯住宅を希望する人のなかで人気が高い形態といえるでしょう。
実際に、二世帯住宅建築者へのアンケートによると、一部共有型二世帯住宅を選んだ人は全体の43.4%で、これから解説する完全分離型二世帯住宅(25.2%)、完全同居型二世帯住宅(31.3%)よりも選んだ人が多いという結果でした。
※参考:エニワン株式会社『二世帯住宅に関するアンケート調査』
完全分離型二世帯住宅(独立型)
完全分離型二世帯住宅とは、玄関から水回りなどの各種設備まですべて分離しているタイプの二世帯住宅です。同じ敷地内に2棟の住居があるパターンや、テラスハウスのように戸建てが接着して建築されているパターンがあります。
どちらにしても、そばにいながら一日中顔を合わさずに過ごすことも可能で、かなりプライバシーに配慮した設計といえるでしょう。基本的には完全分離二世帯住宅であるけれど、家の中に扉をつけて行き来できる設計になっているものもあります。
完全同居型二世帯住宅(共有型)
完全同居型二世帯住宅とは、ほぼすべてのスペースを共有する二世帯住宅のことです。それぞれの個室は用意されている家もありますが、玄関、水回り、各種設備などは、すべて二世帯で共有します。親世帯と子世帯が同じ場所で生活するため、どうしてもプライバシー確保が難しい形態の住宅ですが、二世帯住宅のなかで建築費用が一番かかりません。
すでに住んでいる親世帯に子世帯があとから移り住む、逆に子世帯が住む家に親が同居するといったパターンで、完全同居型二世帯住宅となる場合もあります。
一部共有型二世帯住宅のメリット
一部共有型二世帯住宅のメリットにはどのようなものがあるか、ほかの形態の二世帯住宅と比べつつ解説します。
完全分離型よりもコストダウンになる
一部共有型二世帯住宅は共有部分の設備が一つでもよいため、すべて二世帯分用意しなければならない完全分離型二世帯住宅よりも建築費は安くなります。特に、お風呂やキッチンなどの水回りは費用がかかる部分です。そこを一つで済ませられれば、大きなコストダウンになるでしょう。
どうしても自分の世帯専用にしたい部分は二つ用意し、譲歩できる部分は一つで済ますことにより、プライバシーに配慮しつつ建築費用を安くできます。
完全分離型より光熱費を節約できる
共有部分をつくることにより、完全分離二世帯住宅よりも光熱費を節約できます。特に、お風呂やキッチンなど水やガスを多く使う場所を共有すると、光熱費は大きく変わるでしょう。リビングを共有場所にして、二世帯が一箇所に集まる状態にすれば、エアコンにかかる電気代も節約できます。
完全同居型と比べると距離感を保てる
一部共有型二世帯住宅は、共有する部分と分離する部分があるため、プライバシーに配慮した生活ができます。
二世帯どちらも料理にこだわりがあるという場合は、キッチンが一つだと調理器具や食材の使い方で揉めてしまう可能性がありますが、それぞれのキッチンがあれば、お互いのことを気にせず調理可能です。また、お風呂は衣類を脱ぐという極めてプライベートな空間であるため、分離したほうがお互い安心して入浴できます。
家の出入りについて把握されることに抵抗があるのであれば、玄関を別にすると距離感を保ちやすくなるでしょう。
お違い助け合って生活できる
一部共有型二世帯住宅は、分離している部分があるものの共有部分もあるため、完全分離型二世帯住宅や別居状態の家よりも、お互いのことを把握しやすい状況にあります。
高齢の親がいる人の場合、急な体調不良や怪我などが心配なこともあるでしょう。一部共有型二世帯住宅に同居していれば、突然倒れるようなことがあってもすぐに発見し、助けられます。また、小さい子どもがいる世帯であれば、親世帯に孫の面倒を頼めるという利点もあります。
このように、一部共有型二世帯住宅は介護や育児の助け合いをしながら生活しやすい環境といえるでしょう。
一部共有型二世帯住宅のデメリット
一部共有型二世帯住宅の建築前には、デメリットも把握しておくことが大切です。どのようなデメリットがあるのか紹介します。
共同部分の使い方ですれ違いが起きやすい
一部共有型二世帯住宅で起きがちな問題は共有部分の使い方です。掃除の方法やタイミング、使用方法、使用時間など、お互いに譲歩しないと喧嘩になる可能性もあります。
特に、水回りの共有は難しいといわれています。水回り部分を共有すると建築コストを下げられるものの、日々の掃除が大変な部分です。いつも片方しか掃除しない、どちらかの世帯ばかり使っている、といったことで口論になると、お互いストレスになってしまいます。
完全分離型より両世帯の音が聞こえやすい
完全分離型二世帯住宅は、お互いが生活する部屋の間に壁がある状態です。そのため、両世帯の音が聞こえにくいというメリットがあります。同じ敷地内に完全に別の家屋を建てるのであれば、音が気になるようなことはほぼないでしょう。
しかし、一部共有型二世帯住宅は共有部分があるため、どうしても生活音は聞こえてしまいます。世帯同士の生活のサイクルが違うと、うるさくて寝られない、といった問題が起こるかもしれません。
一部共有型二世帯住宅での生活を成功させるポイント
一部共有型二世帯住宅は共有スペースがあるため、お互い気を使って譲歩しながら生活しなければ問題が勃発します。ここからは、一部共有型二世帯住宅で快適に暮らすために必要なポイントについて解説します。
どこを共有するのか両世帯でよく考える
どの設備を共有するのかは、建築前に両世帯で意見を出し合い十分に検討するようにしましょう。コストだけを考えて共有部分を決めると、結果としてお互い長く住めなくなってしまい、建築費用をムダ遣いすることになります。
また、どちらか片方だけの意見ではなく、一部共有型二世帯住宅に住む全員の意見を参考にすると問題が起きにくくなります。子どもの意見まできちんと聞き取り考慮するようにしましょう。
コストはかかりますが、水回りは完全に別にし、玄関だけ共有したほうが揉めにくくなります。
遮音性に考慮して建築する
いくら家族とはいえ、騒音問題は大きなストレスになります。騒音問題の発生を防ぐためにも、壁などにはなるべく遮音性が高い素材を選びたいところです。ただ、そうなるとコストがかかり二世帯住宅にするメリットが減ってしまいます。
そこで、寝室とリビングを離すようにする、水回りはお互い近いところにするなど、間取りを工夫して騒音問題を起こらないようにすることもおすすめです。
事前にルールを決めておく
問題なく両世帯が暮らすためには、設備面だけではなく共有部分の使い方も重要になります。入居後に問題なく過ごすためには、家の使い方、住宅ローンや光熱費の支払い方法、客人を呼ぶ頻度など、事前に細かくルールを決めておくとよいでしょう。
ルールを決めるときには、どちらかの世帯だけに負担をかけるのではなく、両世帯が過ごしやすいように気をつける必要があります。
まとめ
一部共有型二世帯住宅は、共有部分がありつつも基本的な居住空間分離している二世帯住宅のことをいいます。共有部分があることにより光熱費や施工費を節約できるというメリットがありますが、共有部分の使い方や騒音問題などで揉め事が起きやすいという性質もあります。
コスト面だけに注目するのではなく、両世帯の関係性やライフスタイルなどを総合的に考えつつ一部共有型二世帯住宅を建てるかどうかを決めてください。