年収200万円で豊かに暮らすことは本当に可能なのでしょうか。もちろん豊かさの基準は人によって異なりますが、可能かどうかは実際の手取り収入額や生活レベルを具体的に知ることで判断できます。実際には難しいだろうと思っても、工夫次第では豊かさを感じながら生活できる可能性は十分にあります。
本記事では、年収200万円の手取り収入額や、年収200万円で実現できる暮らしのイメージを具体的にお伝えします。
年収200万円の人はどのくらいいるのか?
2020年の「民間給与実態統計調査」によると、年間給与100万円超200万円以下の割合は男性で約214万人、男性全体の7%を占めているのに対し、女性の場合は約508万人で、割合も女性全体で一番多くの23.4%を占めていることがわかります。特に100万円超300万円以下でみると女性全体の44.7%と約半数を占め、男性の18.5%を大きく上回っています。
ちなみに男女合計で割合が最も大きいのは300万円超400万円以下で、全体の17.4%、次いで200万円超300万円以下が15.5%となっています。
年収200万円の手取り収入はいくら?
では、実際に年収200万円の人の手取り収入額を計算してみましょう。手取り収入額は、年収から社会保険料や所得税、住民税を差し引くことで求められます。
年収200万でボーナスなし、東京都勤務、単身、年齢40歳未満の人の場合は、月収が約16万7,000円、社会保険料が、約2万3,900円(年間約28万6,000円)となります。
所得控除が、社会保険料控除と基礎控除だけだと考えると、所得税を求めるには、給与所得者であればまず給与所得金額を求める必要があります。給与所得額は給与収入から給与所得控除額を差し引いた額なので、132万円です。132万円から社会保険料控除額(28万6,000円)と基礎控除額(48万円)を差し引くと、課税所得金額は55万4,000円となります。そして、この課税所得金額に応じた所得税率(5%)から、所得税額は2万7,700円になる計算です。
住民税額も、給与所得金額から社会保険料控除額および基礎控除額(住民税)を差し引いて求めます。住民税の基礎控除は、所得税の場合よりも5万円少ない43万円のため、課税所得額は、132万円-28万6,000円-43万円=60万4,000円と計算できます。住民税は所得割と均等割から成っており、所得割は課税所得額×10%の6万400円、均等割は一律5,000円なので、合計6万5,400円が住民税額になります。
この計算から、年収200万円の最終的な手取り収入額は、200万円-28万6,000円-2万7,700円-6万5,400円=162万900円で、月額にして約13万5,000円であることがわかります。
年収200万円で実現できる生活とは?
年収200万円の具体的な手取り収入額がわかったところで、理想的な支出割合をもとに、年収200万円で実現できる1人暮らしの生活の具体的な数値を見ていきたいと思います。
家賃は3万円前後が理想
家賃は手取り収入額の20~25%が理想といわれています。そうなると、家賃にあてられる額は2万7,000円~3万3,750円となり、都市部でこの金額の1人暮らしの物件を見つけるのはかなり難しいと想定されます。勤務場所にもよりますが、多少通勤時間がかかっても、都心から離れた場所で予算にあった物件を探すことになるでしょう。
食費は2万円まで
食費に関しては、手取り収入額の10~15%程度が理想といわれているので、1万3,500円~2万円程度に抑えましょう。外食はできるだけ控え、自炊で節約を心がけることが必須です。ただ、食費の節約ばかりを気にして、食事を抜いたりするとかえって健康を損ねてしまう危険が伴います。栄養バランスに配慮しながら食事メニューを考える必要があります。
水光熱費・通信費は合計1万円以下に抑えよう
ガス、電気、水道などの光熱費と携帯電話やインターネット通信費は手取り収入額の8%が理想といわれており、それから換算すると約1万円です。ガス代や電気代の節約を心がけるのはもちろん、通信費はプランの見直しやキャリアを切り替えるなどの工夫をして、節約していくことが欠かせません。
日用品費・被服費・理美容費も合計1万円以下が理想
手取り収入額を考えると、日用品費や被服費、理美容費も合計1万円以下に抑える必要があります。そのためには、日用品や衣服はフリマアプリを利用して安く購入し、理美容もできるだけ安いところを探すほか、美容院などに行く頻度をできる限り少なくするなど節約を考えましょう。
娯楽費・小遣いは2万円以下
ここまで紹介した費用を切り詰めて生活したとしても、1人暮らしであれば、自由に使えるお金は2万円程度あればいいと考えましょう。そして、娯楽費は計画的に使うように心がけましょう。
年収200万円の1人暮らしは健康でなければ成り立たない
年収200万円で1人暮らしをしている場合、医療費や保険料に回せるお金の余裕がほとんどないケースも少なくありません。そのため、ちょっと体調が悪いなと思っても、病院に行くのをためらったり、薬を買うのをためらったりすることもあるでしょう。しかし、病院に行くのを我慢して、病気が悪化してしまっては元も子もありません。健康でなければ、働くのも難しくなってしまいますし、そうなると収入がますます少なくなるという悪循環を生んでしまいます。収入に限った話ではありませんが、年収200万円の生活ならば、特に健康には常に気をつけなければなりません。
月2万円程度の貯蓄を心掛けたい
できれば、手取り収入額の10~20%を毎月貯蓄する習慣を早いうちから身につけておきたいものです。手取り収入額が少ないから貯蓄はできないと考えるのではなく、収入のうちの一定割合を先取り貯蓄し、生活防衛資金として積み立てることを忘れないようにしてください。生活防衛資金の目安は、手取り収入の3ヶ月分といわれており、最低でもそのくらいの額を常に貯蓄しておくように心がけましょう。
年収200万円の人が将来受け取れる年金額はいくら?
年収200万円(生涯平均年収が200万円)の給与所得者が受け取れる年金額は月11万円程度です。それに対し、65歳以降の単身者が必要な生活費は毎月13万2,000円ほどといわれており、毎月2万円程度不足することになります。毎月2万円ということは年間24万円です。さらに、超高齢化社会になっている今、長生きリスクや今後予想されるインフレリスクも考えながら、老後資金としてどのくらい必要になるのかを早めに把握し、準備に取りかかる姿勢が大切です。
年収200万円で住宅ローンは組める?
フラット35で35年のローンを組むと考えた場合、借り入れられる金額は1,630万円です。もちろん、民間の金融機関でも住宅ローンは申しこめますが、なかには400万円以上などと年収基準を設けているところもあります。
年収基準がクリアできなければ、必然的に金利の高い金融機関を利用することになる可能性もあり、どのくらいの額を借りるのか、毎月の返済額はいくらになるのかをしっかりとシミュレーションする必要があります。仮にフラット35で1,600万円を35年(金利1.51%)で借りた場合、毎月の返済額は5万円です。しかも、住宅の購入となると、ローンの返済以外にも固定資産税の支払いや修繕費の積み立てなど、住宅を維持するための費用が新たに発生します。
そうなると、住宅費にあてる金額が高額になり、他の支出を圧迫してしまいます。住宅ローンにかかわらず、お金を借りるときには「借りられる額を借りる」のではなく、「無理なく返せる金額を借りる」ことを念頭に置いておかなければなりません。そのことを踏まえたうえで、どのくらいの金額と借入期間、金利なら無理なく返済できるかを慎重に検討しましょう。
まとめ
年収200万円の人の手取り収入額は、月額約13万5,000円です。理想的な支出割合に基づいて具体的な生活費をイメージすると、都市部で豊かに暮らすのはかなり厳しいといわざるを得ません。もちろん生活していくうえでは健康であることが大前提ですが、万が一に備えた貯蓄も忘れてはいけません。毎月の手取り収入の中から一定額を毎月先取り貯蓄し、緊急資金として備えておくほか、投資を取り入れた資産形成を考え、老後資金の準備についても早めに取り組むよう心がけましょう。