テレビや雑誌などで「年商」という言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、年商とは何を意味するのか、また、年収や売上高と何が違うのかが気になっている人もいるかもしれません。そこで今回は、年商の意味、年収や売上高との違い、年商を事業に活用する方法などをわかりやすく解説します。
年商とは?
まず「年商とは何を意味するのか」を解説します。具体的な年商の意味だけではなく、年商という言葉がどのように使われているのかも説明しますので、内容をおさえましょう。
年商の意味
年商とは、企業や個人事業主が1年間に売り上げた金額のことをいいます。人件費や広告宣伝費のような経費を差し引く前の売上高を意味するため、実際に利益が出ているのかどうかは年商から判断できません。年商よりも経費のほうが少なければ黒字、年商よりも経費のほうが多ければ赤字となるでしょう。
また、高額な商品やサービスを扱っている事業ほど、年商は高くなる傾向があります。たとえば、販売単価が低い個人の輸入雑貨店よりも、1台で数百万円の売り上げになる自動車業界や、1戸で数千万円の売り上げが見込める不動産業界のほうが、年商が大きくなる可能性が高いということです。
年商の使い方
年商は主に事業規模を示す目安として使われます。メディアや広告でもよく用いられる言葉で、一般的に年商が多いほど事業規模が大きく、信用力も高いといえます。たとえば、「年商10億円の企業」「年商10億円が見込める新事業」「年商10億円の人気商品」などと使われます。
また、創業から1年が経過すると初めて年商が定まるため、創業からの成功度合いを計る目安として活用されるケースもあります。
年商と売上高の違いは?
年商が年間の売上高のすべてを指すのに対し、売上高は1年に限らず1日や1週間、1ヶ月などある一定期間の売り上げのことを意味します。上場企業の場合は、四半期決算での公表が義務付けられています。そのため、売上高を示す際には期間の明示が必要です。
また、売上高は営業目標や経営計画の指標としても使われます。短期的な売上高の目標を設定すれば、経営実績や営業活動の状況を容易に把握でき、モチベーションの維持につなげられます。ほかにも、外部の投資家や金融機関が投資や融資を行う際も、各期間の売上高をベースにするのが一般的です。
ただし、売上高も年商と同じく、実際にどのくらい利益が出たのかを知るには経費を考慮する必要があります。
年商と年収の違いは?
年収とは、個人が1年間に得た総収入のことを指します。会社員であれば税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額です。個人事業主の場合は、1年間の売上高から仕入代金、家賃や人件費などの経費を差し引いた金額になります。
「年商1億円=年収1億円」とはならず、実際には年収は年商よりも低くなるケースがほとんどです。ただし、株式投資やアパート経営など複数の副業収入がある場合は、年収が年商を上回ることがあります。
経費が多額に上れば、年商が大きくても年収は低いというケースもあるでしょう。たとえば、個人事業主の1年間の売上高が800万円あっても、仕入代金や人件費、広告宣伝費などで600万円の支出があれば、年収は200万円になるということです。
年商を事業に活かすには?
年商は事業にどのように活かせるのでしょうか。ここでは、具体的な活用方法について解説します。
外部に事業規模を示す
特に創業して間もない会社にとっては、年商が事業規模を示すための重要な指標となります。たとえば、採用説明会で年商を説明すれば、参加者に事業規模を把握してもらえるというメリットがあります。その結果、年商を基準に会社選びを考えている学生により強く訴求できる可能性があります。
事業拡大の場面でも、外部の企業などに年商を明示できれば、信頼を得やすいでしょう。また、商品やサービスがどのくらいの規模で売れているのかを、世間にPRすることもできます。
経営分析を行う
年商を細かく分析すれば、会社の健全な経営につなげられます。たとえば、自社の年商を顧客ごとに分析した結果、そのほとんどを1社が占めていて、その会社に偏った取引している場合、「リスクが高い状況」と判断できるでしょう。
万が一、その会社が倒産したり、取引が停止になったりした場合は、売り上げが大幅に減る可能性が高いため、取引先を分散するなどの対策が必要です。
年商を見る際の注意点
年商の意味を理解していないと、間違った認識をしてしまうおそれがあります。年商を見る際にはどのような点に注意すればいいのか解説します。
年商だけでは会社の経営状況はわからない
前述のとおり、年商は事業規模の指標にはなりますが、経費は考慮されないため、年商が大きくても会社の経営状況が良好とは限りません。他社と取引をする際は、年商だけで判断しないことが大切です。可能な限り、年商から経費を差し引いた利益を見る必要があります。
なお、メディアや広告で「年商○億円の会社」といった言葉を見かけたときも、「年商と利益は違う」という意識を持つことが大切です。
年商の金額は業種によって異なる
年商の金額は業種によっても大きく異なり、目標とする年商も変わってきます。不動産業や物品賃貸業、学術研究や技術サービス業など、利益率の高い業種では、年商は大きくなくても高い利益を得ている可能性があります。
逆に、小売業や卸売業、運送業など営業利益率の低い業種では、利益を確保するには大きな年商が必要となります。
このように、業界ごとの利益率を考慮したうえで、年商を判断することが重要です。
まとめ
年商とは、年間のすべての売上を指し、経費は考慮されません。年収は個人が年間で得た総収入のことで、年商と年収は異なるものです。個人事業主の場合は、年商から諸経費を引いたものが年収となります。一方、売上高は、1日や1週間、1ヶ月など一定期間の売り上げを意味します。
年商は外部に事業規模を示したり、経営分析を行ったりする際に活用できますが、年商だけで会社の経営状況は判断できないので注意が必要です。