夏に欠かせないのが、虫による害への対策です。食物に付いたり、人を刺したりとさまざまな被害がありますが、なかでも危険度が高いのがスズメバチ。攻撃性が強く体も大きいスズメバチは、しばしば人を襲うことでも知られています。巣を作り活発に活動する季節には、「家や庭木などにスズメバチの巣を見つけて困った」というケースも少なくありません。
この記事では、スズメバチの特徴や巣の見分け方、対処法などについて解説します。
スズメバチの特徴
スズメバチに適切に対処するためには、見た目や習性などの特徴をしっかりおさえておくことが大切です。
スズメバチとは
スズメバチはハチ目スズメバチ科に属する昆虫のうち、スズメバチ亜科に属するものの総称です。日本には3属17種が生息しており、全国に広く分布しています。
一般的に春先から女王バチが巣作りをはじめ、6~7月ごろからは働きバチが孵化して巣が拡大。7~8月に最盛期を迎えます。9~10月の繁殖期を過ぎると、新たに生まれた女王バチだけが生き残り、巣から離れて越冬します。
また、幼虫のときは働きバチが狩って肉団子状にした昆虫を食べ、成虫になると花の蜜や樹液、幼虫の分泌物などを栄養源とします。
体長・色
スズメバチの体長は、一般的に18mm~28mmと大型。特に大きいオオスズメバチになると、40mm~50mmの個体も存在します。アシナガバチなどと比べて胴体はずんぐりと太く、茶褐色やオレンジ色といった目立つ体色です。
スズメバチは強いアゴと、毒性の強い毒針を持つことで知られています。また、まっすぐ速く飛び、活発に飛び回ってエサを運んだり、敵を攻撃したりします。
攻撃性が強い
スズメバチは、攻撃性の強さで危険視されている虫の一つです。
特に、オオスズメバチ、キイロスズメバチ、モンスズメバチの3種は攻撃的で縄張り意識が強いため、巣から数メートル離れた場所を通った人や動物が襲われるケースもあります。
また、スズメバチの針は、毒液がある限り何度でも刺せる攻撃力の高い武器です。一度刺されて体内に抗体が作られると、再度刺されたときに過敏に反応する「アナフィラキシーショック」が起こることもあります。
スズメバチは益虫でもある
危険なイメージのあるスズメバチですが、実は益虫としての側面も持っています。
まずは、農作物についた害虫を捕食する点。働きバチは幼虫に食べさせるために芋虫などを多く狩るため、農家にとっては利益をもたらす存在です。また、花の蜜を飲む際に体に花粉を付けて、植物の受粉を助けることもあります。
このため、地域によってはスズメバチの仲間を保護し、敬う習慣を持つところもあるのです。
スズメバチの巣の特徴 アシナガバチ・ミツバチの巣との違い
日本で身近なハチの巣として知られるのは、ミツバチ、アシナガバチ、スズメバチの3種類。特に、スズメバチは刺されると危険が大きいため、正確に巣を見分けて対処する必要があります。
巣穴
スズメバチの巣を見分けるポイントとなるのが巣穴の数です。
ミツバチやアシナガバチといったほかのハチの巣には巣穴がたくさんありますが、スズメバチの巣穴は1ヶ所しかありません。
巣穴を確認する際には、周りにスズメバチが飛んでいないかどうか確認し、ゆっくりと巣に近付きましょう。無理のない範囲で、身の安全を確保しつつ行うことが大切です。
形状
スズメバチの巣の形状は、時期によって異なります。
まず、初期(4~5月頃)の巣は、化学の実験で使う丸形フラスコを逆さまにしたような形状です。フラスコ型(とっくり型)と呼ばれ、この時期の巣は比較的撤去が容易だとされています。
巣作りが進んだ7~9月には、フラスコ型からボールのような球体型へと変化します。初期には数cm程度だった巣も、完成する頃には約60cmと巨大に。内部には1,000匹前後のスズメバチが潜んでいることもあり、一度刺激すれば大群に襲われる可能性もある危険な状態です。
色
スズメバチの巣は色や柄も特徴的です。さまざまな木の繊維と唾液を混ぜ合わせて作られるため、黄色・茶色の独特なマーブル模様に仕上がります。
なお、ミツバチは白色、アシナガバチはグレーの巣なので、スズメバチの巣との違いは比較的分かりやすいとされています。
スズメバチの巣が作られやすい場所
スズメバチの巣は木々や人家など、さまざまな場所に作られます。人目に付きづらい、閉鎖的な場所にあるのが特徴です。
自然界
スズメバチの巣は、自然の中では木の枝や幹の空洞、根元などによく作られます。山や森、林や公園、人の手があまり入らない畑や空き地、放置されている剪定後の枝や木材の中などが代表的な巣の場所です。
また、土の中に巣が作られることもあります。人が気づかずに近づいたり踏んだりして、スズメバチに刺されてしまうケースもあるので注意が必要です。
家の外部
スズメバチの巣は、人家の周りや外壁部分にもよく作られます。人間の生活領域にスズメバチの巣が作られてしまうと、ハチに遭遇したり家に侵入されたりする可能性が上がってしまいます。
代表的なのは軒下やエアコンの室外機、物置やガレージなど。庭の植木や生垣などもチェックしておきたい場所です。
家の内部
ときには、家の内部に巣を作られてしまうこともあります。直射日光や風雨、天敵から巣を守れるため、屋内もまた、巣作りに適した場所といえます。
代表的なのは、家の屋根裏や床下、換気扇のダクト、雨戸の戸袋や壁の隙間など。ダクトや窓、壁の隙間などから家に侵入したハチに巣を作られることが多いようです。
スズメバチの巣を駆除するには
スズメバチの巣を見つけてしまったら、巣の状態を観察して正しく対処をしなければなりません。
4~5月頃は冬眠から目覚めたばかりの女王バチが巣作りをしている段階なので、まだ巣が小さく10cm以下がほとんど。この段階では、まだ働きバチはいません。
働きバチが活発に活動する夏ごろになると、大きなもので50~60cmのサイズになります。この時期の巣は、たとえ小さく見えても襲われるリスクが高いため、自力での駆除は避けましょう。スズメバチの巣の駆除は危険性が高いといえますので、どの段階でも専門業者にまかせましょう。スズメバチの種類、巣の大きさなどで差がありますが、料金は1~5万円程度が相場です。
なお、行政は一般的にスズメバチの巣の駆除を行っていません。ただし、自治体によっては、一定の要件を満たすことで補助金が出たり、無料になったりすることもあるのでチェックしてみましょう。
まとめ
人を襲う害虫、農作物を守る益虫としての両面を持つスズメバチ。できれば遭遇したくないですが、生活圏に巣を見つけてしまった場合には適切な対処が必要です。
スズメバチに刺されると、アナフィラキシーショックなど深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。駆除の際には決して無理をせず、専門業者に依頼しましょう。