10年前に新築マンションとして分譲された物件が、今中古マンションとしていくらで取り引きされているかを調べてリセールバリューを算出したところ、首都圏平均では119.8%と、2割近く上昇していることが分かりました。なかには、10年間で2倍以上の価格になった駅もあり、中古マンションの資産価値が急速に高まっていますが、物件によって上がり方は異なります。新築マンションを購入する際、将来的にいくらで売れるか気になる人も少なくないでしょう。どんな物件ならリセールバリューが高まるのか、知っておきたいところです。
10年前の新築マンションが今いくらで売れるか
不動産に関する民間調査機関の東京カンテイでは、毎年中古マンションのリセールバリュー(価格維持率)に関する調査を行っています。竣工から10年が経過した分譲マンションのうち、現在中古マンションとして流通している物件を抽出、分譲当時の価格と現在の価格からリセールバリューを算出しています。計算式は以下のようになります。
リセールバリュー(%)=中古流通時の価格÷新築分譲時の価格×100
たとえば、10年前に5,000万円で分譲されたマンションが、現在中古市場で6,000万円で取り引きされていれば、6,000万円÷5,000万円×100で、リセールバリューは120%になります。反対に4,000万円に下がっていれば、4,000万円÷5,000万円×100で80%ということです。リセールバリューの数値が大きいほうが値上がり率が高く、100%を切って小さい数字になると、値下がりしていることになります。
中部圏でもリセールバリュー100%超えに
東京カンテイによると、首都圏で2021年にリセールバリューの算出が可能だった駅は345駅で、その平均値は119.8%でした。つまり、平均でも分譲時の価格よりもおよそ2割高くなっているということです。
図表1を見れば分かりますが、中古マンション価格が急速に上がり始める前の2018年のリセールバリューの首都圏平均は91.4%でした。10年間で平均1割ほど価値が下がるわけで、これがこれまでの通常の動きだったと言っていいでしょうか。10年も住めば価値が低下するのは当然のことですが、それが2020年には101.9%とわずかながらも100%を超え、2021年にはついに2割近い上昇になったのです。
これは首都圏に限った話ではありません。近畿圏は112.2%でやはり1割以上のアップですし、中部圏も104.0%と100%を超えました。
もともと中部圏はマンションより戸建ての強いエリアであり、2018年の中古マンションリセールバリューは84.9%と、かなり低い水準だったのですが、それが2020年には90%を超え、2021年には100%を超えたわけです。
首都圏のリセールバリュー、上昇した駅は9割近く
首都圏の駅別のリセールバリューを見ると、調査対象345駅のうち、100%以上になった駅が302駅と87.5%を占めました。9割近い駅が分譲時価格より高くなっています。
1年前までは100%を超える駅は山手線の内側と沿線の外周部分、そして横浜市や川崎市、さいたま市などの周辺などに集中していたのですが、今は首都圏のほとんどのエリアで100%以上になっているのです。
逆に100%を切る駅は90%以上100%未満が30駅で、80%以上90%未満が9駅、70%以上80%未満が1駅、70%未満が3駅となっています。10年間で1割以上価値が下がった駅は合計13駅にとどまっているのです。
首都圏であれば、ほとんどの駅でリセールバリューが上がっているわけですが、その上がり方には大きな違いがあります。
築後10年でも坪単価1,000万円以上の資産価値
図表2は首都圏の駅別のリセールバリューランキングの上位10駅を一覧表にしたものです。
トップの東京メトロ南北線の六本木一丁目駅のリセールバリューは、なんと211.1%でした。10年間で分譲時価格の2倍以上に値上がりしているわけです。平均でこれですから、なかにはそれ以上に高くなっているマンションがあるはずです。
調査に当たった東京カンテイではリリースにおいて、要約すると次のように評価しています。
「六本木一丁目駅の新築分譲時のマンション価格の3.3平方メートル当たりの坪単価は483.6万円で、六本木駅、麻布十番駅などと同等のかなりの高額だったが、都心の一等地の駅勢圏かつ駅近の大規模タワーマンションという好条件から非常に高い希少性を有しているため、築後10年を経ていながらも坪1,000万円を超える資産価値を誇っている」
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六本木一丁目駅/赤羽橋駅/御成門駅/浅草橋駅/大崎駅/芝公園駅/麻布十番駅/飯田橋駅
リセールバリューの上位30位までにランクされる駅は、小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅、JR根岸線の桜木町駅以外はすべて東京23区内の駅でした。なかでも最も多いのが麻布、赤坂、青山の「3Aエリア」などの高級住宅地を多く抱える港区で、30駅中の9駅を占めました。次いで駅前再開発が続く渋谷駅などを有する渋谷区が4駅で、そのほか山手線エリアやその周辺のターミナル駅などが多数入っています。
近畿圏のリセールバリューは平均112.2%
近畿圏でも中古マンション価格の上昇に伴って、リセールバリューが上昇しています。先の図表1でも分かるように、2021年の中古マンションリセールバリューは112.2%でした。10年前の新築分譲価格に比べて、平均でも1割以上高くなっているわけです。
近畿圏で調査対象となったのは154駅で、うち100%以上の上昇を記録したのが117駅、76.0%でした。近畿圏の駅のうち4駅に3駅以上で分譲時価格を上回る値段で取引されていることになります。
もともと住宅地として人気の高い阪神間にリセールバリューの高い駅が多いのですが、最近では国内外の旺盛なセカンドニーズを集めている京都市中心部、大規模再開発によって職住近接型マンションが増加している大阪市中心部エリアにもリセールバリューの高いエリアが増えています。
反対に、京阪神の中心部への所要時間が長い郊外には、リセールバリューが低下している駅が点在します。
大阪市の中心部では10年間で5割以上アップ
近畿圏でリセールバリューの高かった駅のベスト10は図表3のようになっています。
最も高かったのはJR大阪環状線の天王寺駅の152.5%で、2位の大阪メトロ御堂筋線の梅田駅、3位のJR東西線の新福島駅までが150%台でした。3駅ともに、大阪市の中心部にあり、積極的な再開発などによって職住近接型の大規模マンションが増加。ビジネス街、ショッピング街だけでなく、住宅地としても注目されるようになっています。この3駅を含めて6駅が大阪市で、そのほか、京都市でも中心部の3駅がベスト10に入っています。
とはいえ、リセールバリューの高い駅は中古マンション価格が急騰しているからこそリセールバリューが高いわけで、購入には多額の予算が必要になるのが普通です。しかし、なかには中古流通時の価格が比較的安い駅もないわけではありません。そうした駅を選べば、将来の値上がりを期待できるかもしれません。
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