「待機児童」の問題が取りざたされるようになって久しい昨今。全国的に減ってきているとはいえ、地域によっては依然、「保活」が難しいところもあるようです。福岡県の待機児童の現状はどうなっているのでしょうか。2021年のデータをもとに、ひもといていきます。
全国的に減った待機児童、その理由は?
2021年4月1日の時点で、福岡県の待機児童数は625人。全国ワースト3位です。前年度はワースト4位で順位は上がっていますが、注目すべきは待機児童数の減少。昨年度の1,189人から564人も減少しています。厚生労働省によれば、2021年度は全国で8割超の市町村で待機時児童が減少しており、要因としては、「保育の受け皿拡大」に加え、「新型コロナウイルス感染症を背景とした利用控え」が考えられるとしています。
福岡県の待機児童は2015年度以降で最少
福岡県全体の待機児童数についても、前年度までの総数は増加傾向にありましたが、2021年度は「子ども・子育て支援新制度」が施行された2015年度以降で最少という結果でした。保育所等への入所を希望した申込児童数も12万5,454人で、こちらも初めて前年度から減少しています。福岡県の発表によると、19市町村が申込者減により待機児童が減少しているとのこと。またその背景について、「受け皿整備等による受入数の増加」「児童数の減少、新型コロナウイルス感染症の影響等による保育申込者の減少」と発表されており、全国的な傾向と同様であることがわかります。
福岡県内で待機児童が多い市町村は?
全国および福岡県いずれの待機児童も前年比で減少しているとはいえ、福岡県の待機児童はゼロに至っていないのが現状です。2021年度の市町村別待機児童数ワーストランキングを見てみると、ワースト10のうち8つの市町村で、待機児童の数が前年度より減少しています。
しかし、4位の宇美町は前年より14人増加の40人となっており、1位の筑紫野市は前年より12人増加の137人となっています。筑紫野市の2021年4月時点の待機児童数は全国の市町村でワースト3位を記録。福岡県内では3年連続でワースト3位内に入っています。 厚生労働省の見解によると、待機児童が増加した自治体の傾向として「人口増減率が高いほど待機児童数が多い」「保育の受け皿整備量が申込者数の増加数を下回っている傾向がみられる」といったことが考えられるとのことです。
筑紫野市は近年、大型商業施設や病院などが進出し、人口が大幅に増加しています。筑紫野市のサイトでは、市民の声への回答として「待機児童の解消については、その重要性を十分認識し、施設整備をはじめとする受け皿の確保および処遇改善などによる保育人材確保の両面から解消に努めます」(2021年3月17日更新)としており、今後の待機児童数の減少が期待されます。
前年度ワースト1位・福津市の待機児童は大幅減!
待機児童数が減少した市町村で注目したいのは、前年度ワースト1位だった福津市です。福津市には福間海岸をはじめとする自然と大型商業施設があり、近年若い世代に人気のエリアで、子育て世代が増加しています。福津市では保育所を2園整備して定員を増加。待機児童が前年度から121人減り、2021年度はワースト10圏外となりました。
福岡県内で待機児童ゼロの市町村はどこ?
福岡県全体での待機児童はゼロに至っていないのですが、待機児童ゼロを実現した市町村があります。
2021年度 福岡県 待機児童ゼロの主な市町村
●北九州市(11年連続待機児童ゼロ)
●行橋市(前年度1人)
●中間市(前年度5人)
●大野城市(前年度95人)
●八女市(前年度5人)
●飯塚市(前年度53人)
11年連続待機児童ゼロを記録! 北九州市
2011年度から11年連続で年度当初の待機児童0人を達成しているのが北九州市。保育士の確保や環境整備などを継続的に行い、待機児童解消に尽力しています。保育士の確保については、厚生労働省が主導する「潜在保育士の保育所再就職・復帰支援資金貸付事業」を実施。「保育士資格を持ち、かつ、現在保育士として勤務していない方」、「1年以上保育士として働いていない方」の、保育士としての再就職を支援する資金貸付事業を行っています。
また、保育サービスも充実しており、1歳児5人に対し保育士1人(国の基準以上)、保育サービスコンシェルジュが相談に乗ってくれるほか、病児保育も市内をカバーしています。
保育施設などの整備で待機児童ゼロを実現! 大野城市&飯塚市
さらに注目したいのは大野城市です。大野城市は保育所や分園、小規模保育施設の整備により定員を増加、前年度から95人減って2021年度は待機児童を解消。また飯塚市も、保育所、幼稚園の認定こども園化といった整備による定員増加で、前年度より53人減らし待機児童がゼロになりました。
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待機児童が少ない市町村でも要注意の「隠れ待機児童」
11年連続待機児童ゼロの北九州市に加え、福岡市も2021年度の待機児童が2人と健闘しています。しかし、こうした都市部の保育事情で注目しなければならないのは、待機児童の数だけではありません。いわゆる「隠れ待機児童」と言われる、「未入所児童」の数です。
これは、保育園の利用申込をしたものの、「入れる保育所は見つかったが、きょうだい別々の場所に通わせることになるため、入所を諦めた」「延長保育を希望しているが、通園可能なエリアの保育所に延長保育の対応がない」など、さまざまな理由で入所に至っていない子どもの数です。福岡市では2020年度まで毎年1,000人を超える未入所児童が発生しており、2021年度は減少したものの647人を数えています。
国が定義する待機児童の数字には「未入所児童」を加えないことになっています。そのため、このように統計上の待機児童数が少なくても、実際には都市部を中心に人気の保育所に申し込みが集中するなど、「保活」が激戦化しているケースがあります。
まとめ
保育所の増設といった受け皿の整備、新型コロナウイルス感染症の流行による利用控えなどで、待機児童そのものの数は大幅に減った福岡県。とはいえ、人口増加によって待機児童が増えた地域や「未入所児童」問題を抱える都市部などでは、依然として保活が難航しそうです。保活を始める前には、自治体が発表する資料をしっかり読み込むことはもちろん、気になる地域や保育所があれば、早めの下調べや見学をするなど余裕を持って情報収集することをおすすめします。
(最終更新日:2024.04.19)