待機児童が多い関西地方の中で、圧倒的にその数が少ない京都府。ここ2年間で6人まで待機児童数が減少しています。その理由は一体どこにあるのでしょうか? 京都府の待機児童の状況について調べてみました。
京都府における待機児童数の推移
京都府における待機児童数を見てみると、過去5年間で227人から6人まで激減しています。2017年は厚生労働省が待機児童の定義を改めたため、全国的に待機児童数が増加傾向にあった年です。それを考慮しても、2018年に75人、2019年に86人いた待機児童が2020年にほぼ半減し、2021年には6人まで減っています。
2019年に「京都府子育て環境日本一推進戦略」を策定
順調に待機児童数が減少している背景には、自治体の積極的な取り組みがあるようです。京都府では、2019年9月に「京都府子育て環境日本一推進戦略」が策定されました。これは出産や子育てはもちろん、教育、保護者の就労環境まで、一貫してサポートする施策です。
具体的には、企業の意識改革を行うための「ワークチェンジ塾」の開催、「子育て企業サポートチーム」の企業訪問、子育てにやさしい公営住宅の整備、居住者同士が生活の相互サポートすることで負担軽減を叶える「コレクティブハウス」の推進などが進められています。
京都府内で待機児童数が多い市町村は?
京都府内で、2021年4月1日時点に待機児童数が確認された市町村は次の3つです。
わずかな待機児童は存在するものの、いずれも前年より人数は減少しています。特に舞鶴市では12人減と改善がみられました。ただし、こうした調査からは取りこぼされた「隠れ待機児童」が潜んでいるケースもあるので注意が必要です。
舞鶴市の「隠れ待機児童」は増加傾向
「隠れ待機児童」とは、保育所に入所できていないにも言いますかかわらず、自治体の基準では待機児童としてカウントされない児童のことを言います。たとえば、特定の園のみを希望して空いているほかの園へ入所しなかったり、保護者が育児休業中もしくは求職活動の休止中だったりする場合は、自治体の調査では待機児童として認められないのです。
舞鶴市では、そうした「隠れ待機児童」が2020年は69人、2021年は79人と前年より10人増えています。内訳を見ると、特定の園を希望している人が最も多いようです。これらの人は、送り迎えがしやすい職場や自宅近くの園を希望したり、複数の子どもを同じ園に預けたりしたいと考えているのではないかと推測できます。
こうした「隠れ待機児童」が多ければ、たとえ待機児童数がゼロでも希望する園に入れない可能性が高いので、注意が必要です。
待機児童数減少の背景には利用児童数の減少もある!?
新型コロナウイルスの感染が拡大し、園での集団感染が懸念されるなか、その不安から保育所等の利用を控える保護者が増えていると言われています。厚生労働省の「保育所等関連状況取りまとめ(令和3年4月1日)」を見ると、京都府の利用児童数についても大幅に減っている様子が分かります。
10の市区町村で計96人の利用児童が増えている一方で、15の市区町村で計614人が減少しています。つまり、京都府全体では518人の利用児童が減っているのです。もし、この減少が新型コロナウイルスによる影響だとしたら、社会状況が落ち着いた後に再び子どもを預ける人が増え、待機児童数が増加することも考えられるでしょう。
特に子育てしやすいエリアは?
最後に、京都府で子育てしやすいと考えられるエリアを2つ紹介します。
京都市
歴史的な街並みや観光名所の多い京都市。人出や交通量も多いイメージですが、その分バスなどの公共交通機関も発達しています。市バスの均一運賃区間はどこまで乗っても大人230円で移動できます。
待機児童数については8年連続ゼロを維持しており、学童クラブ事業待機児童も10年連続ゼロを達成。子育て支援についても、妊娠中の健診が公費で受けられる「妊産婦健康診査の受診」や子育て家庭の親とその子どもが気軽に集える「つどいの広場」の開設など、さまざまな取り組みが行われています。
隠れ待機児童(潜在的待機児童)については、2021年4月時点で398人存在します。その内訳を見ると、育児休業中の人が最も多いようです。特定の保育所等を希望する人については、前年の276人から190人へと大幅に減少していますが、今後の動向にも注意したいところです。
また、隠れ待機児童(潜在的待機児童)の数は区によっても差があるので、移住する際にチェックしておくと良いでしょう。
長岡京市
長岡京市には阪急とJRの駅が3駅あり、京都市内だけでなく大阪へもアクセスしやすいのが魅力です。通勤はもちろん、子どもが大きくなってからの通学の選択肢も広がるでしょう。西山連峰も有する自然豊かなエリアで、のびのびと子育てしたい人にも適しています。
中央公民館には「子育てふれあいルーム」が設けられているほか、市内4ヶ所に「地域子育て支援センター」も設置。保育所等に入所していない子どもや保護者の交流・居場所づくりに力を入れています。また、保健師や助産師、栄養士等専門職がチームとなって妊娠・出産・子育てをサポートする「長岡京子育てコンシェルジュ」も開設されています。
長岡京市は、国基準の待機児童はゼロを達成していますが、入所が保留になっている児童数から育休延長希望者数を差し引いた市独自の基準に基づく待機児童(隠れ待機児童)は2018年に72人、2019年に69人、2020年に35人存在しました。ゼロとはいかないものの、徐々に減少傾向にはあるようです。長岡京市子育て支援ナビ「ながすく!」で施設の年齢ごとの空き情報が確認できるので、チェックしてみるのもおすすめです。
まとめ
「子育て環境日本一」を目指す京都府では、府全体で子育て支援に力を入れ、待機児童ゼロに向けた取り組みが進められているようです。その結果、着実に待機児童は減っていますが、現状はコロナ禍による保育所等の利用控えが影響している可能性も考えられます。今後の動向に注目したいところですね。また、待機児童数が少ない自治体でも「隠れ待機児童」が隠れているケースがあるので、転居を検討する際には各市町村の情報もしっかりチェックしてください。