20年近くにわたり人口増加が続くさいたま市の中心、大宮。駅では東口、西口それぞれで大規模な開発が進められています。街の人気をさらに押し上げることになるのでしょうか。開発の内容を見て行きましょう。
50年以上かけて変化してきた西口で新たな開発
まずは大宮駅西口側です。かつては狭い道路に木造家屋が密集する地域でしたが、1969年に駅にもっとも近いエリアである大宮駅前西口地区で土地区画整理事業が認可され、以降50年以上にわたって開発が進んできました。
大きなきっかけとなったのは1971年に発表された東北・上越新幹線の計画でした。交通の利便性の向上に合わせて街を変えていこうという気運が盛り上がり、1982年の東北・上越新幹線開業、1985年の埼京線開業を経て、1990年度には大宮駅前西口地区、大宮駅西口第二地区で土地区画整理事業が完了。その後、2004年度に大宮鐘塚A地区での市街地再開発事業が完了しています。
現在、大宮駅西口に立つとソニックシティ、大宮スカイビル(そごう大宮)、大宮西口DOMショッピングセンター、アルシェ大宮、シーノ大宮などといったビルが建ち並んでいます。オフィスあり、商業施設あり、コンサートホールありとさまざまな施設が揃い、とても便利なエリアになっていますが、これはこの50年以上にわたる開発が作り上げてきたものなのです。
しかも、この開発はまだ続いています。大宮駅西口の再開発エリアは70.82haに及んでおり、現在も市街地再開発事業施行中が2か所、土地区画整理事業施行中が1か所、市街地再開発事業都市計画決定済が1か所あり、まだこれからという区画も3か所あります。大宮駅西口はまだまだ変わる場所なのです。
駅徒歩5分に誕生する、28階建てのタワーマンション
そこで現在行われている開発のうち、注目したいのは大宮駅西口第3-B地区という街区です。ここは市民に親しまれているコンサートホール・ソニックシティと道を挟んで北側にあり、駅からは歩いて5分ほど。
駅前といってよい場所ですが、以前は交通上、防災上にも懸念のある細街路に木造の古い建築物がめだつ地域でした。緑地等も少なく、土地が有効活用されているとはいいがたい状態でもありました。
そうした地域の課題を解決しようと地元権利者による市街地再開発準備組合が設立されたのは2011年のこと。以来、市も2013年に「大宮駅西口第三地区まちづくり方針」を策定するなどして、街づくりをリード。2026年の施設建築物新築工事竣工を目指して新築工事が進行しています。
事業タウンの名称は大宮サクラスクエア。桜木町という地名にちなんだものです。計画は約8,200平方メートルの土地に地上13階建てのA棟、地上28階、地下2階のB棟を建設するというもの。A棟は1階が商業施設となり、2階以上が住宅。B棟は1~3階が商業・業務施設となり、4階以上が住宅。2棟合わせて580戸ほどの住宅が供給される予定です。商業施設の詳細は決まっていませんが、デベロッパーの物件ホームページからは1階にスーパーが入ることは分かっており、地元の人からは利便性に期待する声を聞きました。
2022年4月時点では価格その他の詳細は決まっていませんが、約40平方メートル~約123平方メートルまでの間取りが揃う、選択肢の豊富な物件になるようで、すでに物件エントリーもかなりの数になっています。ターミナル駅から歩いて5分の住宅は多くの人にとって魅力なのでしょう。
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東口では市民ホールの入った複合施設が完成
もうひとつの、東口側の開発では建物はすでに完成、2022年4月から徐々に開業が予定されている大宮門街(オオミヤカドマチ。大宮駅東口大門町2丁目中地区第一種市街地再開発事業)です。こちらは地下3階、地上18 階と言う規模で、比較的低層の建物が多い東口エリアでは非常にめだつ建物です。
建物は1~3階と4階~6階の一部に銀行も含めて商業施設が入り、4~8階に大・小合わせて1,700席超となる市民ホール、10~18階にオフィスが入る複合施設。
市民ホールは以前は駅から徒歩15分ほどの距離にあったさいたま市民会館おおみやが移転してきたもので、愛称はRaiBoC Hall。大宮地区を象徴する3つの文化、「Railway」(鉄道)、「Bonsai」(盆栽)、「Cartoon」(漫画)からの造語だそうで、地域の文化を盛り上げたいという気持ちが込められたものです。かつての場所よりずっと駅に近くなったことで市民には使いやすくなるのではないでしょうか。
また、1階には門街広場と名付けられた吹き抜けの空間があり、今後はイベントなどで活用されていくはず。建物前面の歩道もゆったり広く作られており、人の集まる空間になりそうです。
東口発展の起爆剤となるか
大宮門街では開発そのものもそうですが、西口に比べて更新が遅れてきた東口での大きな変化という点も注目を集めています。
街の歴史を見ると最初に繁華街となり、栄えていたのは百貨店、武蔵一宮氷川神社があることからわかる通り、東口側。ところが、古い街では区画整理や再開発への合意を得ることに時間がかかることも多く、大宮駅東口では非常に長い時間がかかりました。実際、周囲を見ると古い建物も多く、公共施設なども同様です。
しかし、今回、開発がひとつ行われたことで、これが呼び水となり、次の変化が期待されます。実際、公共施設では再編が進んでいます。大宮駅周辺のように早くから市街地化が進んだ街では新たに公共施設を建てるような土地は空いていませんが、ひとつが移転した跡地に玉突き状に次の施設を移転していけば、時間はかかるものの、空き地がない地域でも街を更新できます。さいたま市はこれを公共施設再編による連鎖型まちづくりと名付け、老朽化して耐震性に問題を抱える公共施設を集約・複合化することで生み出された用地をまちづくりに活用、東口側を変えようとしています。
前述の市民会館おおみやの移転以外にも大宮区役所が移転し、大宮図書館と一体になった新庁舎の整備が完成していますし、旧大宮図書館を創業や起業、大宮ブランドの発信地とするための建物のリノベーションが終了するなど少しずつ変化は現れてきています。
また、施設の更新以外にも氷川参道の一部を歩行者専用道路にしようとする動きなども出てきています。
こうした駅東西それぞれの変化に合わせ、さいたま市では駅の東西を結ぶ通路を設置、乗り換え時間の大幅な短縮を図ることも目指しているとか。街の回遊性が高まることで、この町がより便利で暮らしやすくなることを期待したいものです。
(最終更新日:2024.04.19)