リフォームやリノベーションを行う際、利用できる補助金としてはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、これからリフォーム・リノベーションを考えている方に向けて、2022年3時点で募集または募集開始が決まっている補助金制度について解説します。各制度を申請するにあたっての条件のほか、お得にリフォームやリノベーションを行うために検討したいことについても紹介していきますので、参考にしてください。
リフォームとリノベーションの違いとは?
まず、前提としてリフォームとリノベーションの違いについて確認しておきましょう。同じような意味合いで使われることの多い2つの言葉ですが、次のように使い分けるのが一般的です。
●リフォーム
経年劣化などにより従来の機能を果たさなくなった箇所について、原状回復するために行う部分的な修繕・改修
●リノベーション
機能を回復するとともに、新たな付加価値をつける包括的な修繕・改修
機能面で傷みが目立つところや不便が生じる状態(マイナスの状態)になっている箇所を元の状態(ゼロ)に戻すのがリフォームであり、ゼロに戻すだけでなくプラスアルファの価値を付与するのがリノベーションといえるでしょう。
リフォーム・リノベーション時に活用できる補助金とは?
リフォームやリノベーションの際に活用できる補助金には、どのようなものがあるのでしょうか。具体的な制度についてはこの後詳しく紹介していきますが、全体的な傾向として、次のようなリフォーム・リノベーションを対象としている補助金制度が多いといえます。
●省エネ性を高めるリフォーム・リノベーション
● 耐震性や耐久性を高めるリフォーム・リノベーション
● バリアフリー改修など介護や高齢化に対応するリフォーム・リノベーション
● 子育てしやすい環境を実現するリフォーム・リノベーション
補助金制度の大半はリフォームの着工前に申請が必要であり、年度ごとに全体の予算が決められています。予算上限に達すると、期限内であっても締め切られる場合が多いため、制度の利用を検討するのであれば事前の確認が欠かせません。
リフォーム・リノベーション時に活用できる補助金一覧
ここからは、リフォーム・リノベーションの際に活用できる補助金を具体的に紹介していきます。2022年3月時点で募集中または募集開始が決まっている補助金制度は次の4種類です。
このほか、2021年度に利用可能だったグリーン住宅ポイント制度、次世代省エネ建材の実証支援事業などは、2022年3月上旬時点で募集はありません。
長期優良住宅化リフォーム推進事業とは?
続いて、3種類の補助金制度について詳しく解説します。長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、長期間にわたって住み続けられる優良な住宅の増やすことを目的に、中古住宅の長寿命化・省エネ化などにつながるリフォームや、子育て世帯向けリフォームなどを支援するというものです。
次の要件にあてはまるリフォーム工事が補助対象とされています。
● リフォーム工事の前にインスペクション(住宅診断)を実施、維持保全計画とリフォームの履歴を作成していること
● リフォーム工事後の住宅において、一定基準を満たす耐震性と劣化対策、省エネ性が確保されること補助率は1/3で、基準を満たす長期優良住宅認定を取得する場合の1戸あたりの補助上限額は200万円です。ただし、次のいずれかの条件を満たすケースにおいては限度額が250万円まで引き上げられます。
● 三世代同居向けのリフォームを併せて実施するケース
● 若者・子育て世帯がリフォームを行うケース
● 中古住宅を新たに購入してリフォームを行う場合
こどもみらい住宅支援事業とは?
こどもみらい住宅支援事業は、2022年に新たにスタートした補助金制度です。当事業は、子育て支援と2050年カーボンニュートラルの実現の観点から、子育て世帯や若者夫婦世帯が高い省エネ性能を持つ新築住宅を取得したり、省エネ化リフォームなどを行ったりする場合に対して支援する目的で創設されました。
この事業をリフォームで活用するにあたっては、次に挙げる3つの要件のうちいずれかを満たす必要があります。また、同時に子育て対応改修・バリアフリー改修などを行う際も補助対象です。
● 開口部の断熱改修を含むリフォーム工事
● 外壁、屋根・天井または床の断熱改修を含むリフォーム工事
● エコ住宅設備の設置
リフォームにおける対象者の年齢・属性による制限はありませんが、事前に事業登録をした「こどもみらい住宅事業者」と工事請負契約等を締結していなければなりません。
補助額はリフォーム内容や設置する機器によって決められており、補助額合計が5万円以上となる工事が補助対象。補助上限額は一戸あたり次のとおり定められています。
戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業とは?
ZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、高い断熱性能の実現、高効率な設備やシステムによる省エネ化、再生可能エネルギーの導入を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量合計が実質ゼロになる住宅を指します。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、ZEHのさらなる普及と高断熱化の推進を目的として実施されているのが、戸建住宅ZEH化等支援事業です。
この事業における補助対象のうち、リフォーム工事で利用できる項目の要件および補助上限額は次のとおりです。
自治体独自の補助・助成制度も
これまで紹介してきた国の制度のほか、自治体が独自で補助・助成制度を設けている場合もあります。国の制度とは異なる内容の制度を設けている自治体もあるため、お得にリフォームしたいと考えているなら、住んでいる自治体の情報を調べてみるとよいでしょう。
自治体の制度では、地元の業者を使うことなど一定の要件が設けられていたり、年度予算に達した時点で募集終了となったりするものが多いので注意が必要です。また、国の補助・助成制度と併用可能かどうかも併せて確認しておきましょう。
ここでは、東京都における事例を2つ紹介します。いずれも2022年3月時点で2022年度の詳細が公表されていないため、2021年度の内容を記載しています。
目黒区「住宅用新エネルギー及び省エネルギー設備設置費助成」
目黒区では、区民が区内に所有している個人住宅に対象設備を設置する場合、費用の一部を助成する制度を設けています。対象設備と助成率(一戸あたりの上限額)は次のとおりです。
● 目黒区「住宅用新エネルギー及び省エネルギー設備設置費助成」
練馬区「住宅の耐震改修工事等の助成」
練馬区では、区内にある1981年5月以前に建築された新耐震基準を満たさない住宅について、耐震診断や耐震改修工事に関する費用の一部を助成する制度を設けています。
減税制度もあわせて検討しよう
リフォームの際、補助・助成制度と併せて活用したいのが減税制度。補助・助成制度と減税制度は性質が異なるため、同じ工事のなかで併用できるのが一般的です。リフォームで使える減税制度としては、住宅ローン減税(住宅ローン控除)とリフォーム減税が挙げられます。
中古住宅を購入してリフォームする際に利用可能だった「すまい給付金」は、2021年12月31日で一部を除いて制度が終了。一定の期間内に契約が完了している住宅について、2022年12月31日までに引き渡しを受け入居する場合のみ、給付を受けることが可能です。
住宅ローン減税(住宅ローン控除)
リフォームするにあたって、借入期間10年以上の住宅ローンやリフォームローンを借り入れる場合には、住宅ローン減税が利用できます。
2022年税制改正により内容が見直され、所得要件が3,000万円から2,000万円と厳しくなり、控除率も1.0%から0.7%に引き下げられました。住宅ローン減税では「年末時点でのローン残高×控除率」分の税金控除を受けられるため、住宅の種類により借入限度額は異なりますが、2022年以降はZEH等でない中古住宅の場合、「2,000万円×0.7%×10年間」で最大140万円分の減税効果があります。なお、新築住宅の場合は住宅ローン減税の期間が13年に延長されていますが、既存住宅の場合は原則10年です。間違いやすいポイントかつ、制度は度々変更になるので、事前に必ず確認しておくようにしましょう。
リフォーム減税
耐震リフォーム、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、三世代同居リフォームなど特定のリフォームを行う場合にも、所得税の減税を受けられます。いずれも控除率は10%、控除対象の工事限度額は200万円〜最大600万円(工事内容によって異なる)です。なお、住宅ローン減税とリフォーム減税は併用できないため注意が必要です。
まとめ
今回紹介したとおり、リフォーム・リノベーション時に活用できる補助金・助成金は複数あります。リフォームの着工前に申請が必要なものが多く、予算上限に達すると期限前であっても締め切られてしまうため、利用を検討する際には事前の下調べが欠かせません。また、年度によって活用できる制度や内容が変化するので、随時最新情報をチェックするようにしましょう。