中古住宅市場は時々刻々と変化します。特に価格が最も高い首都圏、それも東京23区になると、数%の変化でも価格にすると何百万円もの違いになってきます。間違いのない選択をするためには、常に市場の動向をキャッチしておく必要があります。そこで、不動産情報を提供するアットホームの3月時点のデータをもとに、市場動向をリポート。今回は東京23区の中古マンション―について解説していきます。
市場の動きはエリアによって大きく異なっている
東京都の2022年3月の中古マンション平均価格は5,335万円でした。
相変わらず東京のマンション価格は上がり続けているのですが、上がり方は一様ではありません。エリアによって大きく上がっているところがあれば、比較的落ち着いた動きのところもありますし、一部ですが、前年同月比ではマイナスになっているところもあります。
これから東京でマンションを購入しようとするのなら、日々刻々と変化する市場動向を的確にキャッチして、間違いのない選択を行えるようにしておきたいものです。
港区と千代田区のマンションは平均でも1億円超え
2022年3月の東京23区の区別の平均価格は図表1にある通りです。
23区のなかでも最も平均価格が高いのは港区の1億917万円で、2位が千代田区の1億392万円でした。平均価格が1億円を超えたのはこの2区だけで、3位の渋谷区は8,525万円になっています。
反対に23区で一番平均価格が安いのは足立区の3,266万円です。2021年3月は2,000万円台だったのですが、3,000万円台に上昇しています。次に安い葛飾区は3,396万円で、続く板橋区が3,707万円になっています。
最も高い港区と最も安い足立区を比べると実に3.3倍以上の格差があります。都心の利便性の高いエリアにあり、高級住宅地として環境が整っている港区と、山手線の外側で都心へのアクセスがやや不利になる城北エリアの足立区、同じ23区でもこんなに大きな違いがあるのには改めて驚かされます。
港区でもワンルームなら3,000万円台で手に入る
平均価格が1億円を超えるようなエリアでマンションを購入するのは簡単なことではありませんが、港区などの都心部では、シングルやディンクスなどを意識した比較的コンパクトなタイプのマンションも少なくありません。
2022年3月の港区の登録マンションは1,976件ですが、そのうち1R~1Kが369件、1DK~2DKが634件とコンパクトタイプが全体の半数以上を占めています。
その1R~1Kの平均価格は3,434万円で、1DK~2DKは7,108万円です。もちろん、広さがまったく異なるとはいえ、ワンルームなどの比較的小さな部屋であれば城北・城東エリアの平均並みの価格で手に入れることができます。都心エリアのほうが購入後の資産価値の上昇が期待できますから、まずはこうしたコンパクトタイプのマンションを取得して、機会をみてステップアップしていくといった考え方もありかもしれません。
千代田区は1年間で5割以上も上がっている
実際、2021年3月と2022年3月の価格を比較した年間上昇率をみると、図表2にあるように、上昇率が最も高かったのは大田区の32.2%で、2位が千代田区の19.9%です。比較的価格水準の高い都心や城南エリアは、新築マンションの用地取得が難しくなっていて、新規分譲が限られ、希少性が高まっているため、中古マンションの価格も上がっています。
ただ同じ都心といっても渋谷区は1.7%のマイナスで、中央区は1.3%の上昇にとどまっています。都心だからといって、どこでも上昇が期待できるわけではありません。利便性の高い都心にあっても、これまで急速に価格が上がってきたエリアでは伸び率が鈍化したり、なかには下がっているエリアもあるわけです。エリア選びに当たっては十分に注意しておきたい点です。
城東・城北エリアで価格上昇率の高い区もある
都心のマンションは高くなりすぎていて、自己資金や年収不足からとても買えそうにないという人でも、将来的な資産価値の上昇を期待できるエリアでマンションを取得しておくのが現実的です。
たとえば、図表2にあるように、比較的価格水準の低い城東・城北エリアの各区でも年間の上昇率が高いエリアがあります。2022年3月の平均価格が3,266万円と最も安い足立区では、年間の上昇率が16.9%と上昇率ベスト5の4位に入っています。また平均価格4.406万円の墨田区も上昇率16.7%で5位になっています。
しかも、足立区であれば1R~1Kの平均価格は1,062万円で、1DK~2DKは2,098万円です。まずはコンパクトタイプのマンションに住んで、資産価値の上昇を期待しながら、ライフステージに合わせてステップアップしていくという手もありでしょう。
築浅マンションなら新築相場より高い値付けも
中古マンションは築年数によっても価格が異なってきます。通常の状態であれば、竣工からの経過年数が長くなるほど売出し価格が下がり、成約価格も低下していくのですが、最近は都心部の希少性の高いエリアを中心に、新築と中古の逆転現象が起こっています。人気が高く、購入希望者の多いエリアで、新築マンションがなかなか出てこない場所があります。そこでは、築浅の中古マンションの人気が高まって、新築の相場より高い価格で売り出され、それで契約が成立するケースが少なくないといわれているのです。
そこまでいかなくても、中古マンションの売出し件数が減少し、全体的に希少性が高まっているので、ある程度の築年数が長くなっても、さほど取引価格が下がらない傾向が強まっています。
図表3は、価格水準が最も高い港区、一番安い足立区とちょうど中間の大田区の築年数帯別の平均価格の変化をグラフにしたものです。
人気エリアでは築年数が長くなっても下がりにくい
港区と大田区では、築3年以内より築5年以内の価格水準が高くなっています。新築の物件数が少なくなっているのに対して、購入希望者は減っていないので、なかでも人気の高い築浅物件は価格が高い状態が続いるのです。その後、経過年数が長くなっても、価格は下がりにくくなっています。
築3年以内と築30年以内を比較すると、大田区では築30年以内のほうがむしろ高くなっていますし、港区では1割ほどしか下がっていません。20年以上前に分譲されたマンションのほうが駅前立地や生活利便施設に恵まれた場所に建設されているケースが多く、築浅物件並みに評価されるか、それ以上に評価される物件があるということでしょう。
それに対して、足立区では築30年内は築3年以内に比べて2割近く安くなります。築年数が長くなるほど価格は安くなるのがふつうですから、これが正常な価格差といってもいいかもしれません。
こうしたエリア別、物件の条件別の価格動向などをリアルタイムに把握して、これからのマンション選びに生かしていただきたいものです。