子どもが小学校入学を控えているパパやママのなかには、放課後の子どもたちの預け先として「学童保育」を検討している人もいるのではないでしょうか? 今回は、学童保育での子どもたちの過ごし方をはじめ、役割や利用するメリット、保育料の内容や地域差などについて、全国学童保育連絡協議会の事務局次長・佐藤愛子さんに伺いました。
学童保育とは?
機能や役割について
共働きなどで日中保護者がいない家庭に育つ小学生を、放課後や休暇中に保育する「学童保育」。厚生労働省は「放課後児童クラブ」と表記していますが、自治体により、「児童クラブ」「子どもルーム」などさまざまな名称で呼ばれています。
学童保育の役割について、厚生労働省が策定した「放課後児童クラブ運営指針」には、「適切な遊び及び生活の場を与え、子どもの状況や発達段階を踏まえながら、その健全な育成を図る」と書かれています。
「学童保育の最も重要な役割は、子どもたちが放課後に安心して過ごせる生活の場を保障することです。『ただいま!』と言って施設に帰ってきて、手洗いをし、宿題をし、友だちと遊び、おやつを食べ…というように、学童保育に通う子が、学校が終わってすぐに自宅に帰る子となるべく変わらない過ごし方ができるように運営されています。ただ、学童保育は家庭とは違い、さまざまな学年の複数の子どもたちが一緒に過ごします。ですから、成長過程にある子どもたちが安心して生活の場を作っていけるように、指導員は友だちとの関係作りの橋渡しや、身の周りのことを自分でできるような声かけといった働きかけも行います。なお、立地環境によって遊びの範囲が違ったり、おやつを提供していないところもあったりと、施設により活動内容に違いはあります」(佐藤さん)
利用のメリット
佐藤さんは、学童保育に通うことで、子どもも保護者もさまざまな恩恵が得られると言います。
「子どもにとって大きいのは、指導員の存在です。日中保護者は家にいないけれど、学童保育に来れば、一緒に遊んだり、相談したりできる指導員がいます。さらに、異なる年齢の子と友だち関係も作れ、けん玉などで上級生の見事な技を目にすることで、“自分もあんなふうになりたい”というような憧れを抱いたり、遊びを通じて身に付けたことが学びを深める際の橋渡しになったりすることがあります。学童保育で濃密な人間関係を築いた経験によって、友だちとの関わり方や距離の取り方が分かるようになれば、中学や社会に出ていく時にも役立ちます。
保護者にとっても、信頼できる指導員に子どもを託すことができるだけでなく、お迎え時や学童保育での活動への参加などを通して、保護者同士や地域とのつながりも作れます。学童保育は、『働いている』という共通点を持つ親同士が知り合い、地域の中で心地よい大人社会を築いていくきっかけを作る場にもなり得ます」(佐藤さん)
保育料の内訳や、地域による差
保育料にはどんなものが含まれる?
佐藤さんによると、保育料には職員の人件費や、施設の家賃や維持費用、おやつ代、教材や消耗品の購入費用などが含まれ、施設により大きな差があるそうです。
「保育料の違いは、保育料の大部分を占める人件費が大きく影響しています。現在学童保育には、指導員の配置や資格などについて『従わなければならない全国的な基準』はありません。そのため、施設により指導員の人数や層の厚さはさまざまで、専門知識を持つ指導員がいなかったり、短時間勤務の指導員をシフト制で配置したりしている施設もあります。一方で、専門知識のある人材を揃えて手厚い指導体制を整えている施設もありますが、相応の人件費が必要となり、保育料も比較的高めに設定されています」(佐藤さん)
地域によって保育料に違いはある?
佐藤さんによると、保育料は、小学校の敷地内の施設や、小学校の余っている教室を使うといった公的な施設を利用する場合と、民間施設を利用する場合との施設利用料の差も影響するそうです。さらに、それぞれの自治体や保護者の学童保育に対する姿勢も、保育料の違いに関わっていると言います。
「学童保育の保育料は、市町村ごとで統一されていないケースも多く、保育園とは違い、基本的には保護者の収入に関わらず、『利用する施設』により一律で定められています。ただ、市町村によっては独自に減免制度を設けたり、過疎化が心配される自治体などで子育て世代への定住支援の一環として、保育料を無料に近い料金に設定したりしているところもあります。一方で、指導員の質を確保するために、保護者の合意を得て月額2万円近い保育料を設定している施設もあります。自治体の規模の大小ではなく、学童保育に対する自治体の考え方や補助金の額、それぞれの地域での『どんな学童保育が望ましいか』という合意形成がどのようになされているかということも、保育料に影響を及ぼします。また、学童保育自体を行っていない市町村もあり、事業展開の変更などにより保育料が改定されることも珍しくないため、学童保育を希望する人は、まずは詳細を自治体や運営者に確認しておくことをおすすめします」(佐藤さん)
学童保育に通う前に、確認しておきたいポイントとは
学童保育を選ぶ際には、どんな点に気を付ければよいのでしょうか?
事前に見学して雰囲気を知っておく
「学童保育は基本的に、子どもが小学校から自分の足で通う必要があるため、実際には『我が子が通える学童保育施設は1ヶ所しかない』という方が大半なんです」(佐藤さん)
ただ、通える学童保育施設に選択の余地がない場合でも、事前に確認したほうがよいことがあると言います。
「コロナ禍だと難しいかもしれませんが、ぜひ子どもが通うことになる学童保育施設を見学しておいてください。子どもと一緒に見学してもいいですし、時間や曜日を変えて何度か訪ねて指導員の顔ぶれが変わるかなどを確認するのもおすすめです。そして、子どもたちがどんな風に生活しているかを実際に見て、心構えをしておくとよいでしょう。その上で、指導員に、どんな風に我が子を見てほしいかを伝えておいてください。『うちの子は引っ込み事案で、思っていることをなかなか口にできないんです』とか、『言葉で上手く言えないと、手が出ることがあって』など、我が子が安心して過ごすために必要と思われる情報を伝えておくとよいですよ」(佐藤さん)
施設をどこが運営しているかも確認
その施設をどこが運営しているかを確認することも大切だそうです。
「学童保育施設の運営形態は、自治体が設置も運営も行う公設公営、自治体が設置して民間に運営を委託する公設民営、民間の団体が設置も運営も行う民設民営の3パターンがあります。責任の所在という面では、公設公営の場合は行政であることが明確ですが、公設民営の場合も行政に対応してもらいやすく、民営の場合は運営体が責任を負うのが一般的です。小学校や緊急時の行政との連携面は、公設の方がリアルタイムで情報が伝わってきやすい傾向があります。一方で、活動内容のバリエーションという点では、公設よりも民設民営のほうが幅広い傾向があります。公設と民設のどちらがよいということではなく、どんな運営体がどのような学童保育を展開しているかを確認しておくとよいでしょう」(佐藤さん)
「困ったときは何でも指導員に相談してOK」と子どもに伝える
そして佐藤さんは、最も保護者に心がけてほしいことは、「困ったことがあったら、指導員に何でも相談して大丈夫だよ」と子どもに伝えておくことだと言います。
「学童保育という初めての場所では、上手くおしゃべりや相談ができない子も多いと思いますが、指導員は、親が子どもと一緒にいられない時間に『親の代わりにあなたを見てくれる存在』。そのことを、ぜひお子さんに伝えてあげてください。そして、保護者自身も、そんな指導員の存在をよりどころにして、安心して我が子を預けてほしいと思います」(佐藤さん)
まとめ
学童保育の役割や保育料、活動内容の違いなどが分かりましたか? 親子そろって安心して学童保育をスタートできるように、今回紹介したアドバイスをぜひ参考にしてください。
<取材先紹介>
全国学童保育連絡協議会
「安心して働き続けたい」「子どもに豊かな放課後を過ごさせたい」という保護者の切実な願いから生まれた学童保育の、内容充実のための研究や、国や自治体の施策の充実、制度化の運動を推進することを目的に結成された、保護者と指導者で組織される民間団体。1967年の結成以来、半世紀以上にわたり活動を続けている。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~Gakudou/