1社単独で、自社の複数の商品をモデルハウスとして展示する「複合型住宅展示場」が増えています。予算やライフスタイルやライフステージに対応して、自分たちに合った住まいを探しやすいというメリットがあります。総合住宅展示場との違いや複合型住宅展示場のメリット・デメリットを紹介します。
ネット時代でも情報収集先としては住宅展示場
インターネットが浸透し、住まい探しにおいてもオンラインの比重が高まっていますが、戸建て住宅、それも注文住宅となると別物のようです。
図表1は、国土交通省が毎年住み替え・建て替え・リフォームを行った世帯を対象に調査している「住宅市場動向調査」から、注文住宅の施工者や物件に関する情報収集法を聞いた設問の回答をグラフ化したものです。
トップは「住宅展示場」の48.9%で、2位の「知人等の紹介で」の25.1%、3位の「インターネット」の23.6%に大きな差をつけています。同じ調査の建売住宅、分譲マンション、中古戸建てに関する情報収集法としては、「インターネットで」がトップで、中古マンションは「不動産業者で」が1位です。特に最近は、インターネットの役割が年々大きくなっていますが、注文住宅だけはやはり住宅展示場に足を運んで、自分で見て、触れた上で選択している人が断然多いわけです。
単独の展示場なら落ち着いてジックリ検討できる
住宅展示場といっても、大きくは複数の住宅メーカー、ビルダー、工務店などが出展している「総合住宅展示場」と、1社単独の住宅展示場があります。
1社単独の展示場は、モデルハウスが1棟というのがふつうですが、最近は1社単独の展示場ながら、自社のモデルハウスを複数展示している「複合型住宅展示場」が増えています。
総合住宅展示場には、全国ブランドの大手住宅メーカーから地元のビルダーや工務店まで出展しています。木造の在来工法の住宅から、プレハブ住宅、2×4住宅などさまざまな工法のモデルハウスがあり、土日などにはセミナーやさまざまなイベントが開催されているので、幅広く情報を収集するのに便利です。
対して、1社単独の複合型住宅展示場は、敷地内に事務棟などが建設されていることが多く、モデルハウスだけではなく、ハウスメーカー独自の工法の解説や技術の展示などがあったりして、より深い情報を取得できます。また、大規模な総合住宅展示場と違って、訪れるお客もさほど多くはないので、落ち着いてゆったりとした気分で相談できるなどのメリットがあります。
モデルハウス以外の見学施設も充実している
1社単独の複合型住宅展示場として有名なのは、積水ハウスの「Tomorrow’s Life Museum」です。かつては、「住まいの夢工場」と呼ばれていたのが、2021年8月にリニューアルされました。東北、関東、静岡、関西、山口の5ヶ所に設けられており、住まいのテーマパークといっていいような存在です。
実際に、積水ハウスの複数のモデルハウスを見学できるほか、同社の住宅の基本性能や最新技術を展示したスペースなどがあります。地震体験、火災実験、破壊・衝撃実験などの施設もあり、建ったあとでは見られない壁のなかの構造などの特徴や同社独自の工夫などをみることができます。
たとえば、関東エリアの「Tomorrow’s Life Museum」は茨城県古河市にあり、7棟のライフスタイル型モデルハウスをはじめ、10棟以上のモデルハウスが建っています。関西エリアの「Tomorrow’s Life Museum」は京都府木津川市にあり、こちらは4棟のライフスタイル型モデルハウスがあります。実際に、それぞれの住まいに入って、自分たちのスタイルに近い住まいを選ぶことができるわけです。
見学したい場合には、積水ハウスの営業所や住宅展示場などを通して申し込むことになります。
住宅展示場で土地探しの相談も可能になっている
埼玉県を中心に分譲住宅や注文住宅を手がけるポラスグループでは、同グループの注文住宅複数ブランドのモデルハウスを見学できる「体感すまいパーク」を展開しています。2018年9月に千葉県船橋市と柏市に、2021年1月に埼玉県さいたま市に、そして2022年1月に埼玉県越谷市に「体感すまいパーク越谷」がオープンしました。
最も新しい「体感すまいパーク越谷」には、「PO HAUS」(和美庵、ARZILLの2タイプ)、「北辰工務店」「HaS casa」の4棟の最新モデルハウスが建設され、ほかにセンター棟が配置されています。
センター棟には土地探しや不動産に関する相談に、ワンストップで対応できる「宅地建物課」が設置されています。特に、若い世代は土地探しから行うお客が多いので、即座に、タイムリーに情報を提供できるようにしています。それが建物の受注につながるという相乗効果を期待しているようです。
宿泊体験もできる「体感すまいパーク越谷」
ポラスグループは木造在来工法の住宅が中心ですが、「HaS casa」は高断熱・高耐震が特徴の2×6工法の住宅です。
「PO HAUS」が提供するモデルの1つ「和美庵」は、旅館でゆったりとしているような気分を味わえる「おうち旅館」がコンセプト。次いで、外装はスレート材ですが、焼いたような外観が、1枚1枚模様が異なり、重厚感のある住まいになっているのが、「ARZILL(アルジール)」です。さらに「北辰工務店」は比較的ローコストからミドルの価格帯を担い、それでいて品質の高い、納得感のある住まいを目指しています。価格帯も坪単価50万円ほどの「北辰工務店」から、70万円から80万円ほどの「和美庵」までさまざま揃い、選択の幅が広くなっています。
なお、「体感すまいパーク」とあるように、ポラスの住まいを体感してもらうために、「体感すまいパーク越谷」では4棟のうちアルジールを除いた3棟では宿泊体験ができるようになっています。関心のある方は、まずはWEBで見学を申し込んでください。
住宅展示場で土地探しの相談も可能になっている
全国に営業拠点を展開する住宅メーカーのアイ工務店も複合型住宅展示場の展開を進めています。
2019年には「アイパーク福岡」、2021年には「アイパーク金沢」がオープン。石川県金沢市の「アイパーク金沢」は、1,000坪の広い敷地を持つ複合展示場で、さまざまな年代別のライフステージにあわせた4棟が建設されています。また、「アイパーク福岡」は、福岡市のベッドタウンとして発展する大野城市にあります。約700坪の敷地に、平屋と2階建て2棟の3棟が建設されています。
2021年9月には、さいたま市緑区に「アイパークさいたま」がオープン。緑を多く取り込んだランドスケープに、環境と建物の調和を図った展示場で、3棟のテイストの異なるモデルハウスが建設されています。2階建てのA棟「Ees(イエス)」は寄棟屋根で和風テイストの外観デザインで、B棟「Ees」は水平ラインを強調したシンプルモダン、C棟「Wis(ウィズ)」は、平屋でも2階建てでもない都市型モダンスタイルの住まいです。緑のなかにこの3棟が並び、森のなかを散歩するように見学できます。
単独住宅展示場増加で情報源が広がるか
なお、アイ工務店では今後もこの複数のモデルハウスが並ぶ複合型住宅展示場の展開に力を入れる方針で、2022年4月には「アイパーク神戸北」「アイパーク高岡」「アイパーク愛知」をオープンさせる予定です。
先のポラスグループも、「来場されるお客さまは当社のファンが多く、成約率も高い」としており、今後も機会をみて増設していく意向のようです。
両社とも、従来の総合住宅展示場への出展を行いながら、並行して単独展示場に力を入れており、注文住宅の建設を考えている人にとっては情報源が増えて、選択の幅が広がりそうです。