約140年ぶりに成人年齢が見直され、2022年4月から「成人年齢」が引き下げられます。成人年齢は、これまでの20歳から18歳に変わります。18歳、19歳の人たちは、これまでとはいろいろと状況が変わってきます。「住宅関連」に限定すると、どういった変化があるのでしょうか? 詳しく説明していきましょう。
18歳以上が成人になると単独で契約ができるようになる
まず、いつから成人になるのかを具体的に見ていきましょう。
成人に達すると、単独で契約ができるようになります。住宅関連でいうと、「賃貸借契約」や「売買契約」などが大きな契約になりますから、親の同意を得なくても、賃貸住宅を借りたり、住宅を買ったりできるようになるわけです。
未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は「未成年者取消権」があるので、親がその契約を取り消すことができます。しかし、成人に達してからの契約の場合は、それができなくなります。
ただし、住宅を貸す側や住宅ローンを貸す側は、支払い能力(返済能力)などの審査をしますので、希望すれば契約できるというわけではありません。
親や祖父母からの贈与を受けやすくなる
通常、贈与を受けると贈与税がかかります。誰からの贈与であっても1年間に110万円を超えた場合に贈与税が課税されますが、課税されない110万円を基礎控除といいます。贈与税は累進課税なので、贈与の額が大きいほど課税額も増える仕組みになっています。
ただし、親や祖父母からの贈与については、それ以外の人からの贈与よりも税率が低く設定されています。この特例が適用される年齢が、成人年齢の引き下げによって2022年4月からは、「贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上」になります。
410万円までの贈与を受けた場合、贈与税額は変わりませんが、それを超える贈与になると親や祖父母からの贈与税の額が低くなります。例えば、500万円の贈与を受けると、親や祖父母からの場合は48.5万円、そのほかの場合は53万円で、その差は4.5万円になります。これが1,000万円になると、親や祖父母からの場合は177万円、そのほかの場合は231万円で、その差は54万円に広がります。
住宅取得資金の贈与ならもっと効果が大きい
親や祖父母からの贈与が、住宅取得資金の贈与の場合であれば、もっと効果を発揮します。
仮に孫が祖父母から2,000万円の贈与を受けたとしましょう。この場合に贈与税は、次のような計算で585.5万円の納税額になります。2,000万円のうち実に約3割が税金に回るわけです。
贈与額2,000万円 - 基礎控除110万円 =課税額1,890万円
課税額1,890万円 × 税率45% – 控除額265万円 = 贈与税額585.5万円
ところが、「直系尊属からの住宅取得等資金の贈与の非課税制度」を使えば、1,000万円または500万円までが非課税になります。非課税枠が1,000万円の場合、2,000万円の贈与なら1,000万円を贈与したことと同じになり、贈与税額は177万円まで下がります。その差額は、408.5万円とかなりの開きに。
基礎控除と併用できるのもメリットで、最大で非課税枠1,000万円+基礎控除110万円=1,110万円までの贈与を贈与税0円で行えるので、節税効果は大きいと言えるでしょう。これは適用対象となる子や孫の年齢が20歳から18歳に引き下がったことで、適用されるようになる効果です。
「住宅取得等資金の贈与の非課税制度」とは?
親や祖父母から成人の子や孫に、住宅取得資金として贈与をした場合の非課税制度です。住宅取得等資金というのは、具体的には、子や孫が居住するための住宅の建築費用や購入費用、100万円以上のリフォーム費用などです。
この非課税制度が利用できるのは、2022年1月~2023年12月までに贈与を受けた場合。非課税枠は、省エネや耐震、バリアフリーなどの性能が一定以上の良質な住宅の場合に1,000万円、それ以外は500万円になります。
新築に限らず、中古住宅を購入する場合も対象になりますが、登記簿の建築日が1982年1月1日以降に限定されます。これより前の住宅は耐震基準を満たさないと考えられますが、耐震リフォームによって耐震基準を満たしてから入居する場合は、適用対象になります。
このほかにも、贈与を受ける人の所得が2,000万円以下であるとか、住宅の面積や入居期限など、さまざまな要件がありますので、実際に利用する際には詳細を確認しましょう。
「相続時精算課税制度」も対象
贈与する額が大きい場合は、「相続時精算課税制度」を利用する方法もあります。この制度は、親や祖父母から生前贈与を受けた場合、実際に相続が発生した際に、生前贈与分と相続財産を合わせて相続税を計算して精算を行うというものです。
非課税枠は贈与者1人につき2,500万円まで。この額を超えた部分には一律20%の贈与税が課税されます。こちらも通常の贈与税よりは納税額がかなり少なくなりますが、同じ贈与者からの贈与は相続時精算課税制度がすべて適用されることになります。この制度を利用するかどうかは、相続税のことも考慮して、トータルに考える必要があるでしょう。
この制度を利用するには、親や祖父母の年齢が60歳以上という要件があります。ただし、「住宅取得等の資金」であれば、「親や祖父母の年齢に制限がなくなる」という特例が使えます。この特例を使う場合も、贈与を受ける子や孫の年齢要件が成人年齢なので、2022年4月からは18歳以上となります。
18歳成人に求められる大人の自覚
18歳成人には、特例の適用が広がるというメリットもありますが、自己責任でさまざまな契約もできるようになります。成人としての自覚を持って、契約を結ぶ場合は、どういった契約内容で、どういった場合に契約の解除ができるのか、どういった費用が発生するのかなど、その影響をしっかりと把握することが求められます。
同じように特例を受ける場合も、単に得をするからということでだけでなく、どういった特例で将来的にどういった影響があるのかなど、しっかり確認してほしいと思います。また、なにより、周囲にいる親などのベテランの大人たちが、なりたての成人をサポートする体制も必要だと思います。
頑張れ、新成人たち!
執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)