鳴ったら3つの動作を。「緊急地震速報」の仕組みと注意点を再確認

3月16日の夜に福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生しました。福島、宮城など、東日本各地で被害が広がっています。

今回の地震でテレビやスマートフォンから通知された緊急地震速報。緊急地震速報は、最大震度5弱以上の揺れが推定される地震の際に、いち早く警戒を呼びかける仕組みです。ただし、通知音が鳴ってから実際に地震の揺れを感じるまでわずかの時間しかありません。その時の状況によって取るべき行動は異なります。

緊急地震速報の仕組みと、いざという時の行動について専門家に取材しました。

精度が高くなった緊急地震速報

地震は、P波と呼ばれる小さな揺れのあと、S波と呼ばれる大きな揺れが来ます。緊急地震速報は、このP波をとらえ、地震の規模や震源地を予測し、大きな揺れのS波が来る数秒から数十秒前に発表するものです。気象庁は、最大震度5弱以上と予測された時に震度4以上の揺れが予想される地域に対して発表します。

実は、11年前の東日本大震災で緊急地震速報が出されたのは、東北地方に限られ、震度5強程度の強い揺れに襲われた首都圏などには出されませんでした。

地震は断層での急激な破壊運動ですが、巨大地震が発生したときには、震源断層の破壊は数分間に及びます。破壊の初期段階で地震の規模であるマグニチュードを算出しようとすると、実際よりも数値が小さく出てしまいます。これにより、当時気象庁は、未曾有の巨大地震のマグニチュードを過小評価してしまいました。

秒単位のスピードが必要な緊急地震速報の計算処理。一方で、計算スピードを上げれば巨大地震を過小評価しかねないというジレンマ。東日本大震災後、気象庁はこの問題の解決を探求してきました。地盤災害の専門家、だいち災害リスク研究所の横山芳春所長はこう話します。

「緊急地震速報の計算に使われる地震計は日本全国で約1700か所あり、ほぼ日本全国が網羅されています。地震が発生したのち、緊急地震速報が発表されるまでの時間も年を経るごとに短くなっています。気象庁の発表によると、震源で地震が発生してから平均20.9秒で速報が出されています。この4年間で平均4.0秒も早くなっています」

緊急地震速報が鳴ったら「命を守る3動作」

地震 親子 イラスト
大きな揺れでは「姿勢を低くする、頭・体を守る、揺れが収まるまでじっとしている」3つの行動を

一般に、緊急地震速報が鳴ってから揺れが到達するまでの時間は短いときは数秒から、長くても数十秒ほどと言われています。では、鳴ったときは具体的にどのように行動すればいいのでしょうか。

「地震があったとき、物は置いてある場所から、倒れてくる、落ちてくる、移動してくる、ことで人に被害を与えます。兵庫県南部地震では、負傷の原因のうち、家具の転倒や落下によるものが46%と半数近くに上っています。倒れやすいもの、落ちてきやすいものに近づかないことが重要です。また、手足の軽傷であれば命にかかわることは少ないですが、頭を強打すると行動に支障が出たり高度な医療を受ける必要があるなど、救急や医療体制も切迫する大地震のときには取り返しがつかないこともあるので、まずは頭を守ることを意識しましょう」(横山さん)

なお、だいたい2008年以降に取り付けられた比較的新しいガスコンロは、大きな揺れを感知すると自動で火が消える機能が備わっているので、揺れている最中に無理に火を消しに行くことは不要ということです。キッチン周りは、冷蔵庫や電子レンジなど重い器具や戸棚・食器棚などがあるうえに、食器など割れやすいものが多い場所なので、近づかないようにしましょう。

「2008年にアメリカで始まった地震防災訓練『シェイクアウト訓練』では、姿勢を低くする、頭・体を守る、揺れが収まるまでじっとしている、が命を守る3動作とされています。緊急地震速報を受けてから、屋外への避難ルートを確保する時間があればドアを開けるのが望まれますが、揺れが始まってから慌てて屋外に飛び出ると、窓ガラスや外壁タイル、瓦などが落下してくる可能性があるので危険があります」(横山さん)

自宅以外で緊急地震速報が鳴ったらどう行動?

外出時の揺れで多くなっているエレベーターの閉じ込め

地震に遭うのは自宅や屋内とは限りません。屋外を歩っている場合は、転倒の危険性があるブロック塀の倒壊や自動販売機のそばから離れましょう。また、ビルの壁や看板、割れたガラスの落下などに備え、ビルのそばからも離れることで、被害を最小限に抑えることができます。また、カバンなど、持っているもので頭を守るようにしましょう。

車を運転中に大きな揺れを感じた場合は、ハザードランプを点灯するなどして、周りの車に注意を促したあと、急ブレーキをかけずに緩やかにスピードを落とします。後続の車が情報を聞いていないおそれがあるからです。道路状況を確認して左側に停止させ、揺れがおさまるまで車内で様子をみましょう。

注意したいのは「エレベーター」に乗っているときです。東日本大震災のときは都内でもエレベーターの閉じ込め事故が84件発生しました。

「全部の階のボタンを連打して、速やかにエレベーターから出るようにと言われています。ただ、それでも間に合うかどうかわかりません。エレベーターの閉じ込めは本当に起きやすく、東日本大震災のときは、震源から770キロメートルも離れている大阪でも起きています」(横山さん)
大阪・南港の55階建て超高層ビル、大阪府咲洲庁舎では32基あるエレベーターすべてが停止し、このうち4基に乗っていた5人が閉じ込められました。発生から約5時間余りで全員が救出されました。

緊急地震速報で注意したいこと

日本で発生する地震は直下型と海溝型に大きく分けられますが、直下型だと緊急地震速報が鳴る前に大きな揺れが到達してしまう可能性が高くなります。地震の震源が内陸で、地下の浅い場所にあるからです。

直下型のように、震源と人の住む場所との距離が近いとP波とS波の到達時間に差ができず、P波到達後に自動計算して速報を発表するのが間に合いません。結果、S波による地震の揺れが起きてから緊急地震速報が鳴ることになってしまいます。

2016年4月に起きた熊本地震のような直下型では、緊急地震速報は十分な効果が発揮できませんが、それでも「身構えることができた」など、命を守ることに一定の効果があったと言われます。

地震だけではないスマートフォンの「緊急速報メール」

スマートフォンが知らせてくれるのは地震ばかりではありません。

緊急速報メールは、携帯電話事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)が無料で提供するサービスです。気象庁が配信する「緊急地震速報」「津波警報」および「特別警報」、国・地方公共団体が配信する「災害・避難情報」などを、対象エリア内のスマートフォン・携帯電話などに一斉配信するものです。

なお、地方公共団体が発信する災害・避難情報について、対象エリアにいる加入者が、緊急速報メールを受信できるかどうかは、地方公共団体が各携帯電話事業者と緊急速報メール提供の契約を結んでいることが必要です。

特別警報は、大雨、暴風、高潮、波浪、暴風雪、大雪について、数十年に一度程度の大雨や大雪が予想される場合、または、数十年に一度程度の台風等に伴い暴風等が予想される場合に、気象庁から発表されます。また、居住地域に重大な被害を及ぼす噴火が発生または予想される場合も特別警報が発表されます。

防災の基本として、自分のスマートフォン・携帯電話がどのような受信設定になっているのか確認してみましょう。

取材協力
だいち災害リスク研究所

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