失業手当を受け取れる人が早期に再就職した場合、失業手当をもらえなくなる代わりに「再就職手当」を受け取れる可能性があることをご存じでしょうか。
再就職手当はどのようなときにいくらもらえるのか、どうやって手続きするのかを詳しく解説します。
再就職手当とは
再就職手当とは、失業中の人が安定した再就職先を見つけたときに受け取れる手当のことです。
失業中は、一定の条件を満たせば「失業手当(雇用保険の基本手当)」が受け取れます。失業手当を受け取っている期間中に再就職すると、その先は失業手当が受け取れなくなってしまうから損だと思うかもしれません。
しかし、再就職によって失業手当を受け取れなくなる代わりに「再就職手当」を受け取れる可能性があります。再就職手当は、失業手当を受け取っている人が残りの受給期間や損得を考えずに、できるだけ早期に再就職先を見つけることを促進するために支給されるお金です。
失業手当を全額受け取ってから就職するよりも、早めに就職して再就職先の給与と再就職手当を受け取ったほうが、一般的に総収入は多くなります。全額失業手当を受け取ることにこだわらず、早期の再就職を目指しましょう。
雇用保険で受け取れるお金というと、一般的に「失業手当」と呼ばれている基本手当がよく知られていますが、そのほかにもさまざまな手当が存在します。
再就職手当は、雇用保険の「失業等給付」の中の「就職促進給付」、さらにその中の「就職促進手当」の一種です。就職促進手当には、再就職手当以外にも「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」といった種類があります。
また、60歳以後に再就職した場合は「高年齢雇用継続給付」の中の「高年齢再就職給付金」を受け取れる可能性があります。この給付金は再就職手当と同時に受け取ることができないので、どちらかを自分で選択して申請することになります。
再就職手当を受給するための条件とは
再就職手当を受け取るためには、以下の条件をすべてクリアしている必要があります。
●(原則)雇用保険の被保険者になっている
再就職手当を受け取るには、雇用保険の被保険者としての「就職」もしくは事業主として雇用保険の被保険者を雇用する「起業(事業の開始)」が原則となっています。
●失業手当の受給手続き後7日間を過ぎてから就職もしくは起業した
離職票を出して求職の申し込みを行った日から7日間は「待期期間」とされています。その期間を経過したあとの再就職でないと、手当の対象になりません。
●(自己都合退職などの場合、7日間の待期期間が終わってから1ヶ月以内は)ハローワークか職業紹介事業者の紹介で就職した
退職理由などによっては、7日間の待期期間とは別に、失業手当に給付制限(支給されない期間)があります。給付制限がある人は、待期期間満了から1ヶ月経つまでは、ハローワークまたは職業紹介事業者経由で再就職した場合しか対象になりません。
●失業手当の支給期間がまだ3分の1以上残っている
たとえば失業手当を90日受け取れる人が再就職手当を受け取るには、再就職日の前日までの失業の認定を受けたうえで、支給残日数(失業手当を受けられる残りの日数)が30日以上必要です。詳しくは後述しますが、再就職手当は早く再就職するほど(失業手当を受けられる残り期間が長いほど)受け取れる金額が多くなります。
●1年を超えて勤務することが確実
再就職手当は、継続して雇用が見込まれる「安定した職業」に就いたときに支給されます。臨時のアルバイトや1年契約の契約社員などは対象になりません。
●退職した会社と同じ会社や関連会社などへの再就職ではない
退職前の勤務先と「資本・資金・人事・取引面で密接な関係がある事業所」への再就職だと対象になりません。
●過去3年以内に、再就職手当も常用就職支度手当も受け取っていない
直近で同様の趣旨の手当を受け取っている場合は対象外になります。
●ハローワークで求職申し込みをしたあとに内定が決まった
失業手当を受け取るための手続き(求職申し込み)をする前から内定が決まっていた会社に再就職した場合も対象外です。
参考元:厚生労働省「再就職手当のご案内」
再就職手当の計算方法
再就職手当の対象になった場合にいくら受け取れるのか、それは人によって違います。再就職手当の額は、以下の式をもとに計算できます。
・失業手当の日額 × 失業手当を受け取れる残り日数 × 60%または70%
失業手当の残り期間が3分の2以上あれば70%、3分の1以上3分の2未満なら60%が適用されます。3分の1未満の場合は支給の対象になりません。再就職手当は早く就職するほど多く受け取れるしくみになっています。
再就職手当に係る失業手当の日額には上限があり、離職時の年齢が60歳未満なら6,120円、60歳以上65歳未満なら4,950円と設定されています(※2022年7月31日までの額)。
例として、1日あたり4,000円の失業手当を270日間にわたって受け取れる人が、給付日数を228日残して再就職した場合を見てみましょう。
・4,000円 × 228日 × 70% = 63万8,400円
この場合、63万8,400円を一括で受け取れます。
再就職手当の受け取り方
再就職手当を受け取るためには、以下のような手続きを済ませる必要があります。
1.「採用証明書」を再就職先に記入してもらう
…採用証明書はハローワークで受け取った「受給者のしおり」に入っています。
2.採用証明書、雇用保険受給資格者証、失業認定申告書をハローワークに提出する
…就職日の前日までにハローワークに行きましょう。
3.ハローワークで再就職手当支給申請書を受け取り、再就職先にも記入してもらう
…再就職手当支給申請書には、本人だけでなく再就職先が記入する欄もあります。
4.再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格者証をハローワークに提出
…ハローワークの判断によっては、その他の書類の提出を求められることもあります。
3,4の手続きは、原則として再就職から1ヶ月以内にすべて行うこととされています。転職したてで忙しくしていると後回しになってしまいがちですが、手早く進めていきましょう。ハローワークは郵送での手続きや電子申請にも対応しています。
再就職手当は手続き完了から1ヶ月程度で一括で受け取れます。
再就職しても再就職手当がもらえないケースとは
「再就職できた=再就職手当がもらえる」ではありませんので要注意です。
再就職手当を受け取るには、先述の条件をすべて満たしたうえで、手続きを完了させる必要があります。
再就職したとしても、たとえば短期雇用のアルバイトとして就職した場合などは条件を満たせず、再就職手当を受け取ることができません。
条件が細かくてわかりにくいのですが、困ったらハローワークに問い合わせるなどして、確実に受け取れるようにしましょう。
まとめ
再就職手当は、失業手当の対象になっている人が、早期に安定した職業に再就職できたときに受け取れるお金です。
失業手当の残り期間が長いほど(早く再就職するほど)受給額が多くなります。早々に再就職が決まったら、忘れずに手続きして受け取るようにしましょう。