宝くじの当せん金には原則として税金がかからないといわれています。それはいったいなぜなのでしょうか。また、例外的に税金がかかることがあるならば、それはどのような場合なのでしょうか。ここでは、そのような素朴な疑問にお答えします。
宝くじの当せん金には税金がかかるのか?
宝くじの当せん金には、所得税はかかりません。一般に「懸賞や福引きの賞金品」を受け取った際には、一時所得の対象となりますが、宝くじの当せん金の場合、当せん金付証票法第13条により、「所得税を課さない」ことになっています。したがって、いくら高額な当せん金であっても、所得税を納める必要はありません。また、住民税の課税対象にもなりません。
課税対象とならないことから、確定申告も不要です。
ちなみに、一時所得の対象となるものには、ほかにも「競馬や競輪の払戻金」や「生命保険の給付金」などがあります。これらは所得税の課税対象となり、所定の計算式を用いて算出された一時所得金額に対して課税されることも覚えておきましょう。
宝くじの当せん金はなぜ原則非課税なのか?
では、なぜ宝くじの当せん金は、他の一時所得と違って、所得税や住民税を納める必要がないのでしょうか。それを知るには、宝くじの仕組みを理解する必要があります。
宝くじは、上で紹介した当せん金付証票法によって定められた都道府県および20の都市が発行元となり、その販売を金融機関に委託します。委託された金融機関は発行元の都道府県および20の指定都市の販売計画に沿って、宝くじの販売における諸々の業務を行います。そして、抽選が終了した後にその収益金を発行元である都道府県および20の指定都市へ納め、地方自治体は納められた収益金を基に公共事業などを行うという仕組みです。収益金の主な使い道としては、その地域の少子高齢化対策や防災対策のほか、教育環境や福祉制度の向上などがあります。
このように宝くじは、購入時にすでに地域振興のための税金を納めている形となるため、当せん金に対しては課税されないことになっているのです。
ちなみに宝くじ公式サイト「収益金の使い道と社会貢献広報」によると2020年度の宝くじの販売実績額は8,160億円で、そのうちの約37%である2,982億円が発行元の都道府県および20の指定都市に納められ、公共事業のために役立てられています。
宝くじの当せん金に税金がかかる場合もある
ここまで説明したとおり、宝くじの当せん金には所得税や住民税はかかりません。しかし、他の税金がかかるケースがあります。それは相続税や贈与税です。
たとえば宝くじに当せんした人がその当せん金を使わずに亡くなった場合、その当せん金は相続財産として課税対象となります。また、当せんした際にまとまった金額を贈与した場合は、受け取った側にはその額に応じた贈与税が発生します。特に気をつけたいのは、家族間の贈与です。購入した宝くじの当せん金を家族で分けた場合、受け取った家族に対して贈与税が発生することを忘れないようにしましょう。
宝くじの当せん金に贈与税がかかるケースとは?
宝くじの当せん金に贈与税がかかるのは、上で述べたように当せんした人から、その当せん金一部の贈与を受けた場合です。生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」という2つの制度があり、併用することはできません。暦年課税を選択すると、年間の贈与額が110万円以下なら非課税扱いとなります。ただしそれ以上になると、贈与者と受贈者との関係や課税対象となる金額に応じた贈与税がかかります。相続時精算課税を選んだ場合は、総額2,500万円超の贈与を受けると、超えた部分に20%の贈与税がかかります。
また、職場でお金を出し合って購入した宝くじが当せんした場合も要注意です。当せん金を1人で受け取り、それを出資割合で分配した場合でも贈与税の対象とみなされます。なぜなら、代表して1人が当せん金を受け取った場合、その時点で当せん金全額がその人の財産として扱われるからです。
宝くじの当せん金に相続税がかかるケースとは?
高額な当せん金を受け取った場合、それを使いきれずに亡くなることは十分に予想されます。そのような場合、亡くなった人が残した財産は、宝くじの当せん金といった非課税収入であっても、相続財産として相続税の課税対象となります。
たとえば1億円の当せん金を受け取った人が、その半分の5,000万円を遺して亡くなったとしましょう。そして、相続人が配偶者と子ども2人で、ほかに相続財産がない場合は、その5,000万円のうち基礎控除額(3,000万円+600万円×3)を差し引いた200万円に対して相続税が課されることになります。
相続の際には、宝くじの当せん金以外にも不動産や亡くなった人の有価証券などさまざまな財産が課税対象となります。その額が大きいほど相続税額も大きくなることを覚えておきましょう。
当せん金に贈与税や相続税がかからないようにする方法
せっかく非課税で受け取れる当せん金が、その後に贈与税や相続税の課税対象となるのはできるだけ避けたいものです。そのためにも、気をつけておきたいポイントを紹介します。
まず、宝くじを共同出資して購入した際に発生する贈与税については、当せん金を出資者全員で受け取りに行き、受け取りの際に金融機関にて「当せん証明書」を出資者ごと、出資者の受け取り分ごとに発行してもらいましょう。全員で受け取りに行くことが難しい場合でも、委任状を持参することで、当せん者全員の名前が入った当せん証明書を作成してもらうことが可能です。そうすれば、受け取る当せん金を非課税扱いにできます。
宝くじ売り場で購入した宝くじで、比較的少額な当せん金であれば宝くじ売り場で受け取れます。ただし当せん金が50万円以上だと、みずほ銀行の店舗窓口に本人確認書類を持参なければなりません。当せん金が100万円を超える場合は、本人確認書類に加えて印鑑が必要です。また、みずほ銀行ATMやインターネットで購入した場合は、購入時に利用もしくは登録した口座に振り込まれます。
当せん金の贈与については、暦年課税の制度を活用するとともに、贈与する相手が子どもや孫であれば、教育資金や子育て資金といった贈与税の非課税制度の利用もあわせて考えることをおすすめします。
高額当せんすると税務調査を受けるって本当?
高額な当せん金を受け取ることによって税務調査の対象となるのでは? と不安になる人もいるでしょう。税務調査の対象となる可能性は誰にでもあることで、宝くじに高額当せんしたからといって全員が対象となる訳ではありません。
ただし、当せん金の流れに不自然な点がないかどうかをチェックされる可能性は否めません。本来であれば贈与税の課税対象になるお金の流れがないか、また相続税の課税対象から漏れていないかなどを、税務署が確認することは十分に考えられます。申告漏れや所得隠しが見つかると、延滞税や加算税などのペナルティが課されます。
したがって、課税対象となる贈与や相続が発生した場合は、隠さずありのままを申告するようにしましょう。
まとめ
宝くじの当せん金には、所得税や住民税はかかりません。しかし、贈与税や相続税の課税対象となる可能性はあります。課税対象となっているにもかかわらず申告しなかった場合は、延滞税や加算税などが加算されることになりますので、忘れずに期限までに申告するようにしましょう。ちなみに、贈与税は贈与を受けた翌年の確定申告時期に、相続税については亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に申告および納税することになっています。また、受け取り方によっては贈与税の対象外となるので、その内容についてもしっかりと理解しておきましょう。
(最終更新日:2022.04.04)