都心へのアクセスが良い埼玉県は、東京で働く人からも人気を集めています。その分人口も多く、待機児童数は1,000人を上回る状態が続いていました。しかし、2021年には前年の約3分の1まで待機児童数が激減。この大きな変化の理由と待機児童数が多い市区町村ランキングを紹介します。
待機児童数が約3分の1に減少。その理由は?
人口が全国で5番目に多い埼玉県は、ここ数年待機児童数が大きな問題となってきました。全国各地で待機児童ゼロに向けた取り組みが進むなか、埼玉県では2017年、2018年と連続して待機児童数が増加。2019年に減少へ転じるも、なかなか1,000人を下回れない状況が続いていました。しかし、2021年に前年比の約3分の1となる388人まで一気に激減したのです。
認可保育施設の整備などで受け入れ枠を拡充
埼玉県の認可保育所等への入所申込者数は年々増加しており、2021年の申込者数は前年比730人増の13万6,463人でした。申込者が増えるなかで待機児童が減少した理由は、県と市町村が連携して進めた認可保育所等の受け入れ枠の拡大にあるようです。具体的には、特に待機児童が多かったさいたま市を中心に、県全体の受け入れ枠が5,672人分も拡大されました。
「隠れ待機児童」も減少傾向
そもそも待機児童とは、保育施設に入所申請をしているにもかかわらず入所できていない児童のことをいいます。しかし自治体の調査では、入所できていないのにもかかわらず待機児童としてカウントされないケースが存在します。たとえば、特定の保育所のみを希望していて空いている保育所に入らない場合や、保護者が育児休業・求職活動の休止をしている場合などは、待機児童としてカウントされません。そうした潜在的な待機児童は、「隠れ待機児童」とも呼ばれています。
上記の調査結果を見ると、埼玉県には例年数千人の隠れ待機児童が存在していると考えられます。2021年時点で保育所等に入所を希望し入所できていない児童は5,784人。この数が大きく減らない要因は、「育児休業中」の保護者が大幅に増加しているからのようです。コロナ禍で社会の感染状況や子どもの体調に合わせて生活できるように、すぐに職場へ復帰せず育児休業を選択する人が増えているのかもしれません。
埼玉県内で待機児童数が多いのはどこ?
それでは、市町村ごとの待機児童数には、どのような傾向があるのでしょうか? 待機児童数が多い市町村ランキングを見てみましょう。
ランキング全体を見ると、富士見市以外は減少しており、待機児童数が改善されている様子がうかがえます。ワースト1位になったのは、待機児童数43人の朝霞市。人口は14万3,585人(2022年1月1日現在)で、東武東上線とJR武蔵野線が通るエリアです。通勤などの利便性の良さから、子育て世代も多く集まっている可能性が考えられます。続く2位の和光市は、待機児童数こそ朝霞市より少ない39人でしたが、人口も8万3,737人(2022年2月1日現在)と朝霞市より少ないため、軽視はできない状況です。
前年ワースト1位だったさいたま市はランク外に…
前年387人でワースト1位だったさいたま市は、2021年のワースト10には入りませんでした。待機児童数は前年比376人減の11人まで激減しています。さいたま市では保育施設の受け入れ枠を3,000人規模で拡大したことによって、待機児童の減少を実現したようです。
アクセスが良い人気エリアの待機児童も軒並み減少
車で移動しやすい大道路沿いや、通勤に便利な路線が通るエリアは、子育て世帯から人気です。実際に、埼玉県でも前年まではJR京浜東北線・埼京線・高崎線・武蔵野線が通るさいたま市や、つくばエクスプレスとJR武蔵野線が利用できる三郷市が、待機児童数ワーストランキングの上位にランクインしていました。そうした地域に保育施設が増やされた結果、2021年には待機児童が減ったようです。
ただし、最近では新型コロナウイルスの感染状況を危惧して保育施設の利用を控える人も出ていると言われています。本来なら利用したいけど入所していない人がいるとすれば、感染拡大が落ち着いたら状況が変わる可能性もありそうです。
子育てしやすいエリアは?
待機児童が少ない、または減少傾向にある自治体の中で、子育て世帯に注目のエリアを紹介します。
待機児童が激減した「さいたま市」
埼玉県の県庁所在地で、政令指定都市でもあるさいたま市は、都心へのアクセスが良好な人気エリアです。JR埼京線・武蔵野線が通る武蔵浦和駅から池袋駅までは約18分、新宿駅や渋谷駅までも1本で行き来できるため、都心への通勤に便利。2020年までは待機児童数の多さがネックでしたが、今回の調査でそれも解消傾向にあることがわかりました。
子育て支援も充実しており、0歳から中学校卒業前までの子どもの医療費が助成される「子育て支援医療費助成制度」が存在します。これは、保険診療の一部負担金(保険診療分)が全額助成される制度で、簡単な登録を行うだけで利用できます。
さらに、3人乗りの電動アシスト付き自転車の購入資金を補助する「パパ・ママ自転車安全推進サポーター事業」制度も利用可能。この制度を使えば、子どもの通園に欠かせない自転車もお得に購入できるでしょう。
また、各区役所の支援課には「保育コンシェルジュ」が配置されており、保育に関する情報提供を受けることも可能です。
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待機児童が少なく都心への利便性の良い「草加市」「所沢市」
東京に隣接する市の一つである草加市は、2021年4月1日時点の待機児童数は1人。東京方面の路線は東武伊勢崎線のみなので、通勤ラッシュの混雑度合いは厳しくなりますが、駅周辺に大型ショッピングモールなどが充実していて、生活しやすいのが魅力です。
また、所沢市も待機児童は3人と少ないのが特徴です。都心まで少し距離はあるものの、西武池袋線や西武新宿線、JR武蔵野線が通っているので、利便性が良いエリアです。
埼玉県地域子育て応援タウンである「戸田市」
戸田市は、埼玉県で初めて「埼玉県地域子育て応援タウン」に認定された自治体で、子育てを応援する取り組みが進んでいます。たとえば、産前・産後の家事や育児を手伝うヘルパーを格安料金で派遣する「産前産後支援ヘルプサービス」が利用可能。掃除や洗濯、買い物をはじめ、授乳、おむつ交換、もく浴などを依頼できます。また、子どもが成長してきたら、ショートステイやトワイライトステイといった年齢に合わせた預かり事業も利用できます。
ただし、待機児童については、前年の0人から8人へと増加しています。ほかの自治体と比較するとそこまで多い数字ではありませんが、今後の動向が注目されます。
まとめ
埼玉県には子育て支援が充実している地域が多くあります。都心より不動産価格が手頃で、車を持ちやすいエリアも多いでしょう。これまで都心へのアクセスの良いエリアは待機児童が多いのがネックでしたが、それも大幅に改善されつつあるようです。都内で働く子育て世帯も、家族で暮らす場所として検討してみると良いかもしれません。
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(最終更新日:2022.02.28)