北区は東京の北部に位置し、荒川を挟んで埼玉県と接する行政区。南北に長く面積は、東京23区では11番目の広さとなる20.61平方キロメートルです。赤羽駅や田端駅を通るJR京浜東北線が区内を南北に走るなど交通のアクセスが良好で、豊かな自然環境と通勤利便性の高さから居住エリアとしても注目されています。今回は、交通アクセスと自然環境、商店街のにぎわいが魅力の北区の住宅事情を紹介します。
北区の魅力は「豊かな自然」「交通アクセス」「商店街」
東京都北区は、西側の山の手台地と東側の荒川沿いの低地から構成されています。台地には、石神井川や滝野川などが流れ、いくつかの谷があります。
JR京浜東北線・東京メトロ南北線王子駅のそばにある「音無親水公園」は、江戸時代に歌川広重が名所江戸百景で描いた景勝地で、「かつての渓流」を取り戻すべく東京都が整備。「日本の都市公園100選」にも選ばれています。
同じく王子駅が最寄りの「飛鳥山公園」は、約300年前に徳川吉宗公が享保の改革の一つとして桜の名所にしたのが始まりとされ、今でもお花見スポットとしても知られる北区を代表する公園です。
北区内にはほかにも特徴ある自然豊かな公園が豊富にあります。身近にある子どもたちの遊び場や大人の憩いの場は、魅力的な生活環境につながっています。
また、軽快な交通アクセスも北区の魅力です。JR京浜東北線が南北に通るほか、東京メトロ南北線やJR埼京線、JR高崎線・宇都宮線なども利用できて都心へのアクセスが良好。南北を各線が通ることで、駅から徒歩圏の便利な立地が多いのも北区の特徴です。
良好な交通アクセスは北区に住むメリットと言えるでしょう。2021年「北区民意識・意向調査」によれば、通勤時間・通学時間(自宅以外)が45分以内の割合は47.6%。30分以内の割合も27.8%で、通勤しやすい環境にあるようです。
同調査による定住意向に関しては、「ずっと住み続けたい」が41.4%、「当分は住み続けたい」が46.8%と定住意向も高くなっています。
北区は、UR赤羽台団地や都営桐ヶ丘団地などの整備に伴い、多くの商店街が誕生しました。赤羽スズラン通り商店街や十条銀座商店街などにぎわいのある商店街も多く、北区で暮らす大きな魅力になっています。
さらに北区では、「子育てするなら北区が一番!」を合言葉にさまざまな子育て支援に取り組んでいます。また、「地域のきずなづくり」や「子育てファミリー層・若年層の定住化」を重要課題として、保育所・学童クラブの待機児童解消に向けた定員拡大を進めています。東京都による2021年4月1日時点の北区の待機児童数は18人。保育サービス利用率が荒川区の60.6%、豊島区の60.1%に次ぐ、23区内で3位の59.0%と高いことを踏まえると、区の取組みの成果が出ていると言えるでしょう。
【北区のデータ】
区制施行日…1947年3月15日
総面積…20.61平方キロメートル
人口…35万1,278(2022年1月1日現在)
世帯数…19万8,967(2022年1月1日現在)
中古マンション価格が大幅に上昇 もはや穴場ではない
北区の住まい探しですが、荒川に近い東側と台地のある西側とで大きく事情が異なります。東側では昭和の初めに荒川放水路が完成し、荒川沿いに多くの工場がつくられました。工場の移転に伴う跡地に大規模なマンションが誕生しています。
一方で台地の多い西側は、第一種中高層住居専用地域など住居系のエリアが広がっています。旧古河庭園のある西ケ原などの高台のエリアは、住宅街としても人気があります。しかし、まとまった敷地を確保するのは容易ではなく、戸建て・マンションともに東側エリアの供給が中心となっています。
交通利便性の高さから地価が上昇したこともあり、北区の住宅価格は大きく値上がりしています。2021年1月1日のJR赤羽駅前である「赤羽1-8-3」(商業地)の公示地価は、1平方メートルあたり338万円。2016年の公示地価224万円と比べて、5年間で約1.5倍に上昇しています。
交通利便性の高さや充実した商店街で人気の赤羽駅の新築マンションは、2LDKタイプで5,000万円台から。3LDKタイプなら7,000万円程度の予算が必要になってきています。好立地の中古マンション価格も上昇しており、もはや穴場とは言えない価格水準です。
比較的予算が抑えられるのが王子神谷駅や志茂駅などの東京メトロ南北線沿線と、北赤羽駅や浮間船渡駅などのJR埼京線沿線です。こうしたエリアは荒川に近く一定の水害リスクがあるため、京浜東北線沿線や西側の高台エリアに比べ価格が抑えられています。中古マンションのストックも一定数あるので、予算重視で考えるならこうしたエリアを選択肢に加えるのも良いでしょう。
次に、筆者おすすめの北区の街を紹介します。
飛鳥山公園や音無川親水公園、北区役所もあるターミナル「王子」
交通利便性の高さと豊かな自然でおすすめなのが王子駅です。JR京浜東北線と東京メトロ南北線に加え、東京さくらトラム(都電荒川線)も利用可能。バス路線も充実しており、池袋方面へ向かうバスもあります。東京メトロ南北線王子駅から2駅で駒込駅。JR京浜東北線利用により2駅で田端駅と、山手線にもスムーズにアクセスできます。
さらに魅力なのが豊かな自然。前述した「飛鳥山公園」「音無川親水公園」に加え、「北区立名主の滝公園」などもあり、レジャースポットが豊富にあります。また、王子神社は徳川家康が朱印地を寄進し、飛鳥山とともに江戸の名所に。現在も正月の初詣や熊手市など、地域の人に親しまれています。飛鳥山公園内の旧渋沢庭園には「青淵文庫」などの渋沢栄一ゆかりの建物が残されています。
また、駅周辺には王子銀座商店街をはじめ複数の商店街が立地し、飲食店や物販店などのお店がそろっています。王子には北区役所もあり、自然、商業、行政といった暮らしを支えるスポットが充実している点は、この地で暮らす大きなメリットでしょう。
このエリアは近年、新築分譲マンションが安定的に供給されており、中には総戸数100戸を超える大規模マンションも。3LDKタイプが6,000万円台から購入可能な物件もあります。また、中古マンションなら築20年以内の3LDKタイプが5,000万円台の売り出し事例も見られます。東西で立地環境が大きく異なり、住環境の良い西ケ原などのアドレスは価格も高くなる傾向です。立地環境を重視するなら西側エリア、利便性と価格を重視するなら東側エリアという選択になるでしょう。
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商店街が広がる下町情緒あふれる街 駅前再開発がスタートした「十条」
次に注目したい街がJR埼京線十条駅です。十条と言えば、真っ先に思い浮かぶのが駅前から続くアーケードのある十条銀座商店街。160を超える多彩なお店が並び(2022年1月時点)、多くの買い物客が行き交います。さらにその先の十条富士見商店街へと続き、環状7号線までお店が並びます。
十条銀座商店街は、商店街の多い北区でも最大規模の商店街です。明治後半から商店が並び始め、1978年にアーケードを整備。多くの人の流れが生まれ、発展を続けています。
JR埼京線十条駅とJR京浜東北線東十条駅は直線距離で600メートル圏内と相互に往来できる近さです。東十条駅周辺にも160店舗が並ぶ東十条商店街など商店街が点在します。また、赤羽駅までも1駅で、買い物が便利なだけでなく交通利便性の高さも「十条」駅界隈に暮らす魅力です。
現在、十条の駅前では大規模な再開発「十条駅西口地区第一種市街地再開発事業」が進められています(2024年度事業完了予定)。超高層タワーが建設され、店舗や商業施設、北区公益施設などがつくられます。5階~39階は住宅となり、2022年9月頃に分譲がスタートする予定。こちらも注目を集めそうです。
十条駅周辺は道路幅の狭い住宅の密集地域が多く、マンション供給は限られています。一方で東十条駅やその先の王子神谷駅などは、大規模な工場跡地がマンションとして開発されるケースも。中古マンション・新築マンションとも東十条駅や王子神谷含めて検討したほうが選択肢は増えるでしょう。価格は十条エリアも上昇しており、中古マンションでも3LDKタイプは、5,000万円台から6,000万円台の予算は必要です。
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地価上昇でマンション供給も活発化 商業・自然・交通アクセス充実の「赤羽」
最後におすすめする街は、赤羽駅です。JR埼京線、JR京浜東北線、JR湘南新宿ライン、JR東北本線、JR高崎線・宇都宮線が利用できるマルチなアクセス。さらに、東京メトロ南北線赤羽岩淵駅も利用可能で、東京都心エリアへスムーズにアクセスできます。
さらに、駅前の商業施設も充実しています。赤羽スズラン通り商店街や飲食店が豊富な赤羽一番街商店街に加え、駅前にはイトーヨーカドー、ビビオ、アピレといった商業施設が充実。エキナカにはエキュート赤羽もあり、さらに高架下にビバホームなども入る専門店街・ビーンズ赤羽があります。これだけさまざまな買い物施設が駅前に集まっている場所には、早々出合えないでしょう。
さらに、自然環境の充実も赤羽の魅力。街なかには赤羽公園があり、桜並木の美しい赤羽緑道公園や湧水池のある赤羽自然観察公園など憩いのスポットのほか、赤羽スポーツの森公園などの運動ができる場所も点在しています。
赤羽駅周辺は地価が大きく上昇しているためか新築マンションの供給も多く、北区の中ではラインアップが揃っています。単身層の住拠点としても注目されており、40平方メートル前後のコンパクトマンションの供給も活発です。中古マンションストックが豊富なエリアですが、人気もあるので選択肢が限られています。赤羽駅でマンションを探すなら、新築からチェックするほうが良いかもしれません。
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荒川などの水害リスクに留意を
交通アクセスや商業利便性、自然環境が充実した北区ですが、水害リスクは留意したいポイントです。
JR京浜東北線から見て主に西側のエリアは高台に位置しており水害に強い場所ですが、東側は低地となっています。国土交通省がシミュレーションにより予測した、荒川が氾濫した場合の浸水想定(最大規模)によれば、一定の期間水につかる可能性があるエリアも広範囲にわたります(出典:北区ホームページ 東京都北区洪水ハザードマップ)。北区では、こうした荒川の氾濫に備え、高台水害対応避難場所を想定しています。
風光明媚な北区の景色は、歌川広重による名所江戸百景にも数多く描かれています。区内に点在する商店街と豊かな自然、便利な交通アクセスが魅力の北区での情緒あふれる暮らし。まずは、気になる商店街を訪ねてみてはいかがでしょうか。
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