前回につづき、あらためて「ふるさと納税」の基本的な仕組みや寄附金控除を受ける方法を確認しつつ、住宅ローン控除(減税)と併用する場合の注意点について後半にまとめます。
ふるさと納税の仕組みについて
前回の記事「2021年分のふるさと納税、めんどうな“確定申告の手続き”がラクになる⁉」でも触れましたが、「ふるさと納税」の基本的な仕組みについておさらいしておきましょう。
「ふるさと納税」とは、自分の選んだ自治体に対して寄附(ふるさと納税)を行い、翌年に確定申告を行うことで、所得税・住民税から「寄附金控除」を受けることができる制度です。
具体的には、1年間に寄附を行った金額から2,000円を引いた額が、翌年の所得税・住民税から控除されます(下図)。
ただし、その人の総所得金額および家族構成によって、控除できる金額に上限があります。
ちなみに、「ふるさと納税」という名称ではありますが、寄附できる自治体は自分の生まれ育った故郷に限定されることはなく、お世話になった自治体や応援したい自治体など、好きな自治体を選んで寄附をすることが可能です。また、同じ年に複数の自治体に寄附をすることも可能です。
ふるさと納税で寄附金控除を受ける方法について
ふるさと納税を利用して寄附金控除を受ける方法には、以下の2つの方法があります。
方法その1:確定申告を行う
1つ目の方法は、ふるさと納税を行った翌年に確定申告を行う方法です。
具体的には、ふるさと納税を行った自治体が発行する「寄附金の受領書」を、確定申告書にすべて添付して税務署に提出します。確定申告を行うことで、その年の所得税が還付されるほか、翌年度の住民税の減額を受けることができます。
なお、令和3年分からは、「寄附金の受領書」に代えて、ふるさと納税を取り扱っている特定事業者(表2)が発行する「寄附金控除に関する証明書」を添付することが認められています。
ちなみに、6つ以上の自治体にふるさと納税を行った人や、年収が2,000万円超の人、給与所得以外の所得が20万円超の人などは、2つ目の方法である「ワンストップ特例制度」は利用できないので、必ず確定申告をしなければなりません。
方法その2:ワンストップ特例制度を利用する
2つ目の方法は、以下の要件をすべて満たすことで利用できる「ワンストップ特例制度」を利用する方法です。
この特例を利用することで、確定申告をすることなく寄附金控除を受けることができます。
なお、7.に記載した「期限」は、ふるさと納税を行った翌年の1月10日になります。
1. 給与所得者であること
2. 2か所以上から給与を受け取っていないこと
3. 年間の給与収入の合計額が2,000万円以下であること
4. 給与所得以外の所得が20万円以下であること
5. 1年間に、ふるさと納税を行った自治体の数が5つ以下であること
6. 確定申告をしないこと
7. 期限内に、ふるさと納税を行ったすべての自治体に、ワンストップ特例制度の申請書を送付すること
ワンストップ特例制度を利用することで、翌年度の住民税の減額を受けることができます。
なお、この特例を受けられる対象になっていても、原則どおり確定申告によって寄附金控除を受けることも可能です。
住宅ローン控除(減税)との併用は節税効果がフルに受けられない可能性も?
住宅ローン控除(減税)を受けている人にとっては、ふるさと納税において確定申告とワンストップ特例制度のどちらを使うかによって減税額が違ってくる可能性があることは知っておくべきでしょう。
ふるさと納税で確定申告をすると、まず所得税を計算する際の所得から控除されるので、所得税額が減ります。その減った所得税額から住宅ローン控除が差し引かれるので、減税額も小さくなる可能性があります。
もちろん、所得税から引ききれなかった減税額は、翌年度の住民税額から差し引かれるようになっていますが、住民税額からの控除は13.65万円という上限があるので、トータルの減税額も小さくなる可能性があるのです。
住宅ローン減税&ふるさと納税の控除の5ステップ(確定申告する場合)
一方、ふるさと納税でワンストップ特例制度を利用した場合は、所得税には影響がないので、住宅ローン控除の所得税額から差し引かれる分はそれまでどおりで、もし所得税から引ききれなかった分があれば、翌年度の住民税額から差し引かれます。そして、ふるさと納税の分も、全額が翌年度の住民税額から差し引かれるようになっています。
つまり、住宅ローン控除をそれまでどおりフルに受けたい場合は、ワンストップ特例制度を使ったほうが良いと言えるでしょう。ただし、初めて住宅ローン控除を受ける年(1年目)は、確定申告が必要なので、ワンストップ特例制度は利用できません。詳しくは、最寄りの税務署等にお問い合わせください。