2021年12月10日に発表された税制改正大綱(自民党・公明党)で、住宅ローン減税の4年間延長が決まりました。2022年度の減税率は1%から0.7%に縮小されますが、一方で減税期間は原則13年間に延長されます。2022年度以降の住宅ローン減税がどう変わるのか見ておきましょう。
2022年以降は省エネ性能に応じた減税額に
2021年度の住宅ローン減税は、原則として年末のローン残高の1%が10年間にわたり所得税の額から控除され、所得税から控除しきれない場合は、住民税からも13.65万円を上限に控除を受けられました。
しかし、低金利が続く中、住宅ローンの金利が1%未満で住宅ローンを借りている人の割合は約8割近くなっています。そのため、減税額がローンの支払い利息を上回って、高所得で高額なローンを組める人ほど減税効果が大きくなることが問題視されていました。
こうした流れを受けて2022年度からの住宅ローン減税は、減税率が1%から0.7%に引き下げられる予定です。
一方で2023年末までに入居する新築住宅の減税期間は、原則が10年から13年に延長され、省エネなど住宅の環境性能に応じて減税額は大きくなります。なお、中古住宅は10年のまま変わりません。
新築住宅を購入または建築して、2023年末までに入居する場合の具体的な減税内容は以下の通りです。
2021年には、認定長期優良住宅など一定の高性能住宅で5,000万円、それ以外の住宅で4,000万円と2段階だった住宅ローンの限度額が、2022年からは省エネ性能に応じて3,000万円~5,000万円の4段階となります。2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを達成するためには、高性能な省エネ住宅の普及が必須となっているためです。
年間の減税額は、一般の新築住宅で最大21万円ですが、省エネ基準適合住宅で最大28万円、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEHゼッチ)で最大31.5万円、認定住宅では最大35万円の減税となります。13年間の最大減税額を合計すると273万円~455万円と住宅性能によって182万円もの差があります。また、住民税からの減税額は2021年度の最大13.65万円から2022年度は最大9.75万円となります。
たとえば認定住宅を購入した人は、最大35万円のローン減税を受けられますが、住民税から減税できる9.75万円を差し引いた25.25万円以上の所得税を支払っている人は、もっと高所得でローン残高が多くても減税額は35万円で頭打ちとなります。
家族構成などにもよりますが、所得税を25.25万円以上支払っているのは、年収600万円台後半から700万円を越える層です。
2022年度からの住宅ローン減税は、減税目的で高額な住宅ローンを組むことを防ぎ、なおかつ中間所得層はしっかり減税メリットが受けられる内容となっています。2022年度以降に住宅ローンを借りて住宅購入を考えている人は、源泉徴収票で自分が払っている所得税を確認してみるとよいでしょう。
2024年からの住宅ローン減税の概要
2024年以降2025年末までに入居となる場合は、減税対象となる借入限度額はさらに下がります。
借入限度額の上限は一般住宅で最大2,000万円、認定住宅では4,500万円となり、年間の最大減税額も省エネ性能に応じて14万円~31.5万円となります。また、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅については省エネ基準が要件化され、今後の新築住宅は分譲住宅、新築にかかわらず、脱炭素住宅が義務化の方向になりそうです。
中古住宅や一定のリフォームの住宅ローン減税については、2022年から2025年入居まで一律の内容となります。借入限度額は一般の住宅で2,000万円、認定住宅等の省エネ住宅で3,000万円となり、減税期間は一律10年です。年間の最大限税額は14万円または21万円で、10年間では140万円と210万円になります。
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年収600万円台など中間所得層で減税額アップも!
減税率は0.7%になっても、減税期間が長くなることで年収600万円台など中間所得層にとっては、2021年より減税額が増える場合があります。
2021年に一般住宅を建てた場合、年間の最大減税額は40万円でした。しかし、配偶者を扶養している年収600万円の人が払っている所得税は約16.85万円です。住民税からの減税額とあわせても最大減税額の40万円には届かず、年間の減税額は約30.5万円で、10年間では約305万円です。
一方で、2022年に同じ人が一定の省エネ住宅を建て4,500万円のローンを組んだ場合、所得税16.85万円と住民税の最大控除額9.75万円をあわせた年間の最大減税額は、約26.6万円となります。13年間の減税額は約325万円となり、2021年のケースと比べて約20万円増えます。
勝手に減税額が減ると思い込まず、ローンの借入額と自分が払っている所得税、購入する住宅の性能から、自分が受けられるローン減税額を試算してみることが大切です。
そして何よりも大切なのは、住宅は減税額にあわせて購入するものではないということです。ライフプランからなぜ家を買いたいのかを家族で話し合い、後悔のない住宅購入計画を立てましょう。
※今記事は2021年12月10日発表の税制改正大綱(自民党・公明党)をもとにしています。実際の制度内容については今後確定する情報をご確認ください。
参考サイト
・令和4年度税制改正大綱(令和3年12月10日 自由民主党・公明党)
・会計検査院「租税特別措置(住宅ローン控除特例及び譲渡特例)の適用状況、検証状況等について」
所得税等の試算条件
・国税庁「給与所得控除」
・所得税の税率
基礎控除48万円配偶者控除:38万円
社会保険料:年収の14%で試算
所得税計算式:課税所得×税率-控除額
課税所得:年収-(給与所得控除+社会保険料+基礎控除+配偶者控除)
(最終更新日:2022.05.17)