ふるさと納税で寄付金控除を受けるには、住所地を管轄する税務署で確定申告を行う必要があります。そのため、ふるさと納税における控除を受けるためには、住所は重要な情報です。
今回は、ふるさと納税をしたあとに住所変更した場合の手続き方法や注意点などを解説します。正しく控除を受けるためにぜひ役立ててください。
ふるさと納税で控除されるのは所得税と住民税
ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体など自分が選んだ自治体に寄付ができる制度です。
確定申告を行えば、寄付金のうち上限額内の2,000円を超える部分について、支払った所得税や住民税にあてられます。以前は確定申告が必須でしたが、2015年4月からワンストップ特例制度が導入され、要件を満たす場合は確定申告をしなくても控除が受けられるようになりました。
なお、ワンストップ特例では、翌年の住民税減額という形で控除が行われます。
住民税は、住民票がある自治体に納める税金です。そのため、市町村(自治体)をまたいで引っ越した場合は新しい住所での住民登録が必要になります。また、ふるさと納税を行っている場合は、登録しているふるさと納税サイトや寄付先自治体へ連絡するなどの手続きが発生します。
ふるさと納税の返礼品が届く前に住所変更した場合
会社から急な転勤の辞令があった場合など、ふるさと納税の返礼品や書類などが届く前に住所が変更することもあるでしょう。その際は、転居先と転居日が決まり次第、寄付先の自治体に直接連絡をしてください。
ふるさと納税サイトで住所変更しても、寄付先の自治体では把握できません。そのままにしていると返礼品は旧住所に届いてしまいます。急な引っ越しは慌ただしいものですが、せっかくの返礼品を確実に受け取るために、忘れずに手続きを行うようにしましょう。
ふるさと納税申請時と翌年1月1日の住民票に住所変更があった場合
住民税は、1月1日時点で住民票がある自治体に納めます。ふるさと納税での住民税控除が受けられるのは納税をした翌年度分のものです。そのため、納税した翌年1月1日時点で住民登録をしている自治体に支払う住民税に影響します。
では、ふるさと納税の申請時と翌年1月1日時点で住民登録している自治体が異なる場合はどうなるでしょうか。こうしたケースでの手続きの流れを、確定申告とワンストップ特例制度に分けて解説します。
確定申告するとき
寄付金控除を受けるには、確定申告書に寄付先の自治体から送られてきた寄付金受領証明書を添付して、居住地を管轄する税務署に提出します。確定申告書には1月1日時点の住所を記入してください。
次に、寄付金受領証明書を確認します。多くの自治体では証明書に住所を記載しませんが、記載されている場合は再発行が必要になるかもしれません。住所が記載してある場合、税務署によっては、旧住所が記載された証明書では受理されないこともあります。
寄付金受領証明書の住所が翌1月1日時点と異なる場合、税務署に住所変更が必要かどうかを確認し、寄付先の自治体に再発行してもらいましょう。再発行手続きには時間がかかるかもしれないため、確定申告に間に合うよう早めに連絡するようにしてください。
ワンストップ特例を利用するとき
確定申告の手間を省いて寄付金控除を受けるには、ワンストップ特例制度を利用しましょう。ワンストップ特例制度を利用する場合、申請書類に必要事項を記入して、寄付先の自治体へ郵送すれば手続き完了です。適用が認められると、翌年の6月以降に支払う住民税から自動的に対象額が控除されます。
ただし、ワンストップ特例制度の利用には条件と申し込み期限があることに注意してください。なお、下記の条件を満たさない人や申し込みが間に合わなかった場合は、確定申告で寄付金控除が受けられます。
【申し込み期限】
・ふるさと納税を行った翌年の1月10日必着
・申請書およびその他必要書類は寄付するたびに自治体へ郵送する
【利用条件】
・もともと確定申告の必要がない給与所得者であること
(医療費控除や住宅ローン控除などで確定申告を行う場合は、ワンストップ特例制度は利用できない)
・1年間の寄付先が5自治体以内であること
(同じ自治体に複数の寄付を行った場合は、1自治体としてカウント)
・申し込みのたびに申請書を送付していること
(同じ自治体への寄付でも、そのたびに申請書の送付が必要)
ワンストップ特例制度の申請書を郵送する前後に住所変更があった場合は、寄付先の自治体に連絡して下記の書類を取り寄せ、必要事項を記入して返送してください。
・申請前:寄附金税額控除に係る申告特例申請書
・申請後:寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書
ちなみに、いずれの書類もふるさと納税サイトや各自治体の公式ホームページなどでダウンロードできます。急ぎの際には検索してみてください。
住民票の住所変更が翌年1月2日以降になるとき
住民票の住所変更がふるさと納税を行った翌年の1月2日以降になる場合は、税額控除に必要な手続きはありません。住民税は1月1日時点の住所地で課税されるためです。
ただし、返礼品や書類などが届いていない場合は、早めに寄付先自治体に住所変更の連絡を行うようにしてください。また、忘れないうちに登録しているふるさと納税サイトの会員情報も更新しておきましょう。
居住住所と住民票の住所が異なるときのふるさと納税
寄付先の自治体によっては、ふるさと納税の返礼品を住んでいる場所とは別のところへ送付できます。その際には、受取人の氏名が寄付者と異なっていても問題ありません。ただし、住民税が関係するため、申し込み自体は住民票に記載された住所で行う必要があります。
別住所への送付を希望する場合は、寄付先の自治体にその旨を申し出てください。別住所への送付を行っていない自治体もあるため、申し込み前にきちんと確認するようにしましょう。
海外へ引っ越した場合のふるさと納税
海外へ引っ越した場合は日本の非居住者となるため、住民税が発生しません。つまり、ふるさと納税による住民税控除は受けられないということです。ただし、出国のタイミングにもよります。
ふるさと納税を行った年内に出国する場合は、翌年1月1日に日本国内に居住していないため、住民税の課税対象外です。一方、出国がふるさと納税を行った翌年1月1日以降の場合は、1月1日時点では日本に居住していることになり住民税が課税されます。
寄付金控除を受けるために、海外赴任の可能性がある場合には時期を確認してからふるさと納税を行うことをおすすめします。
しかし、海外へ引っ越す場合でも所得税を支払っていれば、その分の還付は受けられます。そのため、住民税を支払わない人でもふるさと納税を行うメリットはあるでしょう。
住所変更予定があるときのふるさと納税
自治体をまたいだ転出予定がある場合は、ふるさと納税を申し込むタイミングに注意しましょう。
転居先が決まっていて、翌年の1月1日以前に引っ越す場合は、新しく住民登録をする転居先の住所を申告してふるさと納税をしたほうがスムーズです。
引っ越しが翌年1月2日以降になるのなら、現住所で申し込んでも問題ありません。ただし、返礼品の発送時期が引っ越しのあとになるときは、送り先は新住所に指定するようにしましょう。
住所変更後にふるさと納税へ申し込みをすることがおすすめ
ふるさと納税を申し込んでからの住所変更は、寄付先の自治体に書類を提出するなど手続きに手間がかかります。そのため、すでに年内の引っ越しが決まっている場合は、住民票を異動してからふるさと納税を申し込んだほうが手間はかかりません。
引っ越し後の住所でふるさと納税を行えば、返礼品が前住所に届けられてしまうといったトラブルも防げます。会社からの転勤命令や家族の都合など必要に迫られて急に引っ越すケースもありますが、そうでなければ転居後に落ち着いてからふるさと納税の申し込みを行ったほうが無難です。
まとめ
ふるさと納税を行うと、寄付金控除として所得税の還付や住民税の控除が受けられます。住民税は住民票のある自治体で課税されるため、ふるさと納税での控除を受けるには申請時の住所に注意しなくてはなりません。
また、ワンストップ特例制度を利用するには、所定の書類を寄付先の自治体に提出する必要があります。引っ越しをするとさまざまな手続きが必要になりますが、住民税の控除を受けるために、ふるさと納税でも忘れずに住所変更を行いましょう。
(最終更新日:2022.01.21)