所得税・住民税の控除を受けられる「ふるさと納税」ですが、控除額は無限ではありません。控除額は本人の年収などによって変わるため、どのくらいまで控除できるのか知らないと、控除額以上に寄付することになります。
この記事では、気になるふるさと納税の控除上限額について説明します。ふるさと納税の寄付額について検討している人は参考にしてください。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税とは好きな自治体を選んで寄付することにより、寄付額から2,000円を差し引いた額を、所得税・住民税から控除できるという制度です。
「納税」という名前が付いていますが、実際は自治体に対する寄付であり、寄付する人は自身の寄付金の使い道をある程度選べます。
また、寄付の返礼品として、自治体ごとの特産物などをもらえるのもふるさと納税の特徴です。つまり、実質自己負担2,000円で返礼品が手に入るということです。ただし、なかには自治体への寄付のみで返礼品なしというふるさと納税もあります。
ふるさと納税の制度について詳しく知りたい場合は、「ふるさと納税の新制度が2019年6月よりスタート。現行の制度と何が変わるの?」の記事をご覧ください。
ふるさと納税の控除上限を決める要素
ふるさと納税の控除額は所得金額に応じて決められます。ただし、そこからほかの控除がある場合、その分、課税所得金額が下がるようになっています。そのため、ふるさと納税の控除上限額は年収や、そのほかの控除によって決められます。
具体的にどのように影響するのか、それぞれ解説します。
自分や配偶者の年収
ふるさと納税の控除上限額には、納税者の年収が関係しています。年収が高くなるほど、控除上限額も高くなるという仕組みです。
また、結婚している場合には、本人だけでなく配偶者の年収も影響します。理由は、配偶者控除を受けている場合は、その分ふるさと納税の控除上限額も下がるからです。
配偶者の年収が201万円以下での場合、配偶者控除を受けることになります。しかし、配偶者の年収が201万円超で配偶者控除の対象外となる場合は、ふるさと納税の控除上限額に影響がありません。
つまり、基本的に夫婦片働きよりも、夫婦両働きの人のほうが控除上限額は高くなるということです。
家族構成
家族構成も、ふるさと納税の控除上限額に影響する要素の一つです。
ふるさと納税の控除額に関わるポイントは、配偶者と同じで、子どもが扶養控除の対象になっているかどうかです。16〜18歳の高校生などの子どもは扶養親族、19〜22歳の大学生などの子どもは特定扶養親族となり、扶養控除の対象となります。扶養親族の数が増えるほど、ふるさと納税の控除上限額は下がります。
ただし、中学生以下の子どもは扶養控除の対象とならないので、控除上限額には影響がありません。
社会保険料控除額
社会保険料控除も上限額に影響を与えます。特に注意したいのが、新たにiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)を始めた人です。
iDeCoは積み立てる金額の全額が所得控除の対象となるため、iDeCoを始めた人は社会保険料控除が増えることになります。結果として、ふるさと納税の控除上限額も下がります。
生命保険料・地震保険料の控除額
控除を受けられる代表的なものとして、ほかに生命保険や地震保険があります。
生命保険料・地震保険料の控除を受けている人も、その控除額によってふるさと納税の控除額に影響するからです。ほかの控除と同様、保険料控除を受けている分、ふるさと納税で受けられる控除上限額は減ります。
生命保険料控除について詳しく知りたい場合は、「生命保険料控除証明書とは? 使いみちと受取り方について解説」を参照ください。
医療費控除
医療費控除を受けている人も、その分ふるさと納税の控除上限額が下がります。
医療費控除を受ける条件は、納税者本人や生計をともにする配偶者、その他の家族や親族を含む医療費の合計が年間10万円以上(年収200万円未満の世帯では所得金額の5%)になることです。医療費控除は、扶養控除の対象とならない共働きの夫婦であっても適用可能です。
医療費控除については、「医療費控除で交通費が対象になるものとは?付き添い・電車・バスはOK!車は対象外」を参照ください。
住宅ローン減税制度の利用
住宅ローン減税制度を受けている場合も、それに応じてふるさと納税の控除上限額は下がります。
住宅ローン減税制度とは、住宅ローンの残高に応じて所得税(一部、翌年の住民税)が控除される仕組みです。新築住宅・中古住宅どちらの購入も対象となりますが、減税を受けようとする人自身の居住用であることや年間所得額が規定以下であることなど、控除を受けるためには条件があります。
これまで紹介してきた各種控除と比較しても住宅ローン減税の控除額は高額になるため、ふるさと納税による控除上限額への影響も大きいといえます。
ただし、ふるさと納税は節税ではなく、支払う所得税を寄付金として納付するというものです。そのため、住宅ローン減税制度を受けずに、ふるさと納税の控除上限額を上げるという行為は節税効果にはなりません。節税を目的とするのであれば、住宅ローン減税制度をはじめ各種控除制度を利用したほうがよいでしょう。
住宅ローン減税制度について詳しくは、「住宅ローン減税とは? 適用条件・仕組み・対象者などわかりやすく解説」を参照ください。
ふるさと納税の年収別控除上限額の目安
ふるさと納税の控除上限額を決める要素について解説してきましたが、自身がどれくらい控除を受けられるのか気になる人も多いのではないでしょうか。次の表は、年収別・家族構成別に控除上限額の目安を記したものです。
表中の「共働き」とは配偶者の年収が201万円を超えていて、ふるさと納税をする人が配偶者控除を受けていない世帯のことです。対して「夫婦」とは配偶者の年収が扶養の範囲内で、ふるさと納税をする人が配偶者控除を受けている場合を指します。
また、「高校生」とは16歳から18歳の扶養親族、「大学生」とは19歳から22歳の特定扶養親族を指しています。この表からも、配偶者控除や扶養控除の対象となる場合、ふるさと納税の控除上限額が低くなることがわかるでしょう。
なお、ここで示した上限額はあくまでも目安です。先ほど紹介した社会保険料控除、生命保険料・地震保険料控除、医療費控除、住宅ローン減税などを受けている人は、記載の金額よりも上限額が低い可能性があります。
自身の上限額を厳密に確認したい場合は、ふるさと納税に関するシミュレーションを利用することがおすすめです。シミュレーションシートは総務省の「ふるさと納税ポータルサイト」からもダウンロードできます。
年収からふるさと納税の上限額を計算する方法
ふるさと納税の上限額の計算方法は下記のとおりです。
【所得税の控除】
(ふるさと納税額-2,000円)×所得税率(5~45%)
【住民税からの控除(基本分)】
(ふるさと納税額-2,000円)×10%
【住民税からの控除(特例分)・特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合】
(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%(基本分)-所得税の税率)
【住民税からの控除(特例分)・特例分が住民税所得割額の2割を超える場合】
(住民税所得割額)×20%
ただし、それぞれ次のように控除上限額が定められています。
・所得税控除の上限額=総所得の40%
・住民税基本分からの控除上限額=総所得の30%
図で表すと下図のようになります。
この計算方法は一般的なものです。そのため、具体的な計算方法は住んでいる市区町村に問い合わせるようにしてください。
参考:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
まとめ
実質自己負担額2,000円で返礼品がもらえるふるさと納税ですが、控除を受けられる金額には上限があります。年収や家族構成などの要件に加え、配偶者控除・扶養控除といった各種控除を受けていると上限額に影響するため要注意です。
寄附金額から2,000円を引いた額が控除上限額を超えていると、自己負担額が増えてしまいます。ふるさと納税制度を活用する際は、シミュレーターなどで自身の控除上限額をあらかじめ確認しておきましょう。
(最終更新日:2022.01.21)